時間潰し
「うう、寒気がするよぅ」
「カノンさん、風邪ですか?」
「ううん、違うと思うけれど、なんだかとんでもない目にあいそうな気がする」
ルカはこの状況だと、カノンがレオンにとんでもない目に会わされる可能性がとても高いんじゃないかと思いもしたが、ルカは賢いので黙っていた。
その時が来れば自然に分る事でもあるので。
そこで、カノンの父、トリューカースが恋人のレイルを連れて現れた。
ルカがカノンの後ろに条件反射で隠れた。
そしておそるおそる様子を見たルカは、トリューカースとレイルの瞳のおかしさに気づいて、
「カノンさん、あの、トリューカース、曾お祖父様達、おかしくありませんか?」
「? いつも通り仲良く手を繋いでいて憎らしいが何か?」
「いえ……何でもないです」
そう答えて、ルカはカノンの後ろからひょっこりと姿を現した。
そこで、トリューカースの瞳が怪しく光った。
「ふふふ、やっぱり可愛いなルカは! すりすりすりすり」
「ふぎゃぁぁぁぁぁ」
油断したルカは、トリューカースに捕まえられて弄ばれた。
暫くルカを堪能したトリュカースは晴れ晴れした顔で、カノンにルカを渡した。
「相変わらず可愛い」
「父様もそう思いますよね! 本当にルカは可愛い!」
一方そのルカは、カノンに支えられて顔を真っ青にしてぐったりしていた。
そんなトリューカースにレイルが後ろから抱きしめて、
「そんなにルカを可愛がっていると、嫉妬してしまいそうだ」
「……ふふ、レイルも可愛いですよ。それでは、また後で」
「ええ、父様、また後で」
そう会話を交わして、カノンは父であるトリューカースと別れて歩いていく。
そしてお互い完全に姿が見えなくなった所で、ルカが復活した。
「うう……酷い。しかも、支配より欲望が勝つなんて、これはない」
「ルカ、何をぶつぶつ言っているんだ?」
「……何故あれほど激しいスキンシップをされるのでしょう」
「え? 昔からあんな感じだよ?」
「そうなのですか?」
そうだよと答えるとルカは、全てを諦めたような顔をした。
そこで、カノンは話を変える。
「所で部屋は決まったけれど、どうしようか。時間潰し」
「うーん、確かすぐ外に花畑がありますので、花冠でも作りますか? 我の時代ではちょうどこの時期に満開でしたが」
「今もそうだし、その花畑は有るよ! 行こうか!」
そう、うきうきとルカとカノンはその花畑に行って花を摘んで作っていたのだが、気がつくとルカが消えている。
慌ててカノンが探すと、大きな狼のような魔物に、親猫が子猫を連れて行くように服の襟首を加えられた涙目のルカがいた。
「……助けてください、カノンさん」
「……そこの魔物。今すぐ下ろせ」
そうカノンが命ずるも、しばしその魔物は考えてから、ルカを連れたまま猛ダッシュで逃げ出した。
「ま! お前、僕に逆らうな! 待てぇぇぇ!」
結局、その魔物にカノンはお仕置きをしてルカを取り戻し、魔王城へと帰ってくる。
「……ルカ、外に出るのは止めよう」
「……はい」
そんなこんなでカノン達は城の中を歩き始めたのだった。
「……魔王カノンカース様と、どんな顔をして会えばいいんだろう」
次代の水の四天王、ネルがサイコロを転がして人形を三つ進める。
「……現状では、四天王と魔王の関係は、問題は有るものの改善はされた。これからは、どんな感情を我々が持とうとも魔王カノンカース様と顔を合わせる時間は多くなるだろう」
次代の地の四天王、ユウトがサイコロを転がして人形を五つ進める。
「それに人間への攻撃も徐々に昔の形式に戻す必要がある。少なすぎても人間の力が逆に強くなって困るが、あまり増えすぎても我々の領域へと流れてくる」
次代の炎の四天王クラウはサイコロを振って人形を一つ進めた。
「どの道人間は我々に勝てない。だが、カノンカース様の場合人間と親しすぎる。厳しい対応はおそらく出来ないだろう。出来れば次の代は、暇つぶしもかねて侵略できるような魔王でいて欲しいものだ」
次代の風の四天王のリンツはサイコロを振って人形を六つ進めた。
そこで、ドアが開く音がした。
そこには、不機嫌そうなカノンと、にこやかに微笑むルカが立っていたのだった。
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