誤作動
部屋を追い出されたレオン達は、カノンを捕らえようとしていた装置を見に来ていた。
本当ならばレオンは見たくもなかったのだが、
「それでどうなんだ、レンヤ」
「ええ、これで多分、誤作動するはずです」
誤作動はどう考えても悪い事なのだがそれには理由がある。
「しかし、これがそのまま残っていて、誤作動でレンヤとルカが飛ばされたとは思わなかった」
「そうですね。まさかルカがバナナの皮に引っかかって、こんな事になるとは思いませんでした」
「でもこの時代の何処かに飛ばされて、その割りに随分馴染んでいるな」
「……経験がありますから」
「うむ、それくらいでないとルカは任せられないしな」
その言葉に、レンヤがぴたりと動きを止めた。
「……ルカから何か?」
「……俺の子孫だって聞いた」
「……もう少し後のほうが良かったけれど、仕方がないか」
「何か言ったか?」
そう答えてから、作業に集中するレンヤ。
イオとトランは二人揃って、途中で会ったレオンの母となにやらやっているらしい。
すでに抵抗する事を諦めたレオンが暇をもてあましてここに来たわけだが、そこにいるレンヤを見て、カノンに会わせる為に連れて行った時に、ルカが言っていた事を思い出す。
「……ルカの方がさりげなく一枚上手だよな」
つい口に出してしまったレオンの言葉にレンヤが振り返ることなく、
「……だから、俺は不安なんです」
「……悪い、声に出していってた」
「いえ、一見ルカは弱そうに見えるのですが、ああ見えて色々考えているし……強いから、俺はいつも捕まえていないと不安なんです」
「……大変だな」
「……これも俺がまだ若いから、青いからなのだと自覚をしているのですが……だからといって諦め切れなくて。でも、ルカは待ってくれているから、それに俺は甘えているのです」
「……甘えさせてくれるのもルカがレンヤを好きだからだろう?」
「……そうですね」
少し嬉しそうにレンヤは笑う。
年の差とか、そういった悩みはレオンにも覚えがある。
カノン自身が可愛いいのであまり感じない部分はあるが。
なんにせよ魔王に惚れてしまった人間の宿命のようなものだから仕方がないといえば仕方がないのだが。
大体魔族の場合、逆に同い年ならば……とそこまで考えてレオンが呟いた。
「……魔族の寿命に対しての比率で考えれば、同い年くらいにならないか?」
レオンとレンヤが顔を見合わせて、そしてにやりと笑ったのだった。
カノンはルカと二人っきりになっていた。
「あの、お話とは」
「……ルカ、首飾りは解けたのでは?」
「レンヤに強化されてしまったので、我一人では外せなくなってしまい……」
「どうやら、少しレンヤと僕はお話しする必要があるみたいだな」
にこっと笑ったカノンからどす黒い怒りの気配が見える。
なのでルカは慌てて、
「ま、待ってください。我も困ってはいませんし……」
「……こんな風に力を封じられて困っていないだと? ルカ、恋人といってもして良い事と悪い事が……」
「レンヤは人間なのです。それ故に年の差とか、昔はもっと弱かったので力の差をとても気にしているのです」
「だからって……」
「レンヤだってその程度の事は分っています。それでも、我を守る事で引き止めたいと思っているのでしょう。……我がレンヤを放す筈が無いのに」
「そう……か」
レオンもそういう感情をカノンに対して抱いているのだろうかと、ふとカノンは思ってしまう。
人事ではない話に、カノンは一方的に否定できない。
そんなカノンにルカが続ける。
「それに、レンヤは分っているから、満足すれば外してくれると我は思っています。それまで、レンヤが思うままにさせてあげたいなって……見守っていようかなと」
「ルカは、本当にレンヤが好きなんだな」
「はい! とても……あの、カノンさ……お祖父様?」
そのカノンの様子に違和感を覚える。
何処か羨ましそうな、けれど達観したようなカノンの表情。
そこでカノンが口を開いた。
「ルカ、聞きたい事は他でもない。ルカは、僕と……レオンの末裔か」
「はい」
「そうか……」
「あの、お祖父様?」
カノンは答えてすぐにルカに抱きついた。
その今までに無い様子にルカは不思議そうにカノンを呼ぶも、それには答えない。
そんなルカ達の前に、再びレオンの母親というモンスターが現れるのはもう少し後の事だった。
お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。
次回の更新は近日中に。よろしくお願いします。