次を探せ、次を
話しかけてきたミランに、先ほどのカノンへの受け答えとは違い、レオンは少し怒ったように、
「ミラン、そろそろ俺も本気で怒るぞ? カノンをこんな目にあわせたし」
それにいつもは仮面をかぶったように笑うだけだったのに、今回は何か思うところがあるようだった。
気づいたレオンが黙っていると、ミランがいつものように、
「だが私は、レオンの事も愛しているぞ?」
と言った。
だからレオンはいつものように言い返す。
「……俺は嫌いだ。というかそれに応えられない。次を探せ、次を」
「まったく見込みもないのか?」
「ない。そしてカノンも渡さない」
「……レオンも、魔王カノンカースも、本当にお互いを想いあっている。……レオンは、お前は、私と違うか」
「? 何言っているんだ? 当たり前だろう?」
変な事を言うミランに、レオンは変な顔をした。
けれどミランは色々悟ったように、
「……全然違っていて、だからこそ……私の見ている魔王カノンカースの姿とお前の見ているカノンカースの姿は違っていて、私には……人の手に落ちてこないものだと思えたのか」
「……ミラン?」
独白のように呟くミランに、怪訝に思いレオンは名前を呼ぶもミランは聞いていないように続ける。
「ずっと私はレオン、お前が羨ましかった。私に姿が似て、"予知能力"を持たなくて、けれど優しいお前が。そして今まで同じだと思っていた。次の王とも見てもらえず、それなのに表面上はそう扱われる、自分を見てもらえないお前が」
「……ミラン、お前が次の王だって皆言っていたからな、影で。俺は……俺の持っていないものを全部持っているミランが羨ましかったよ」
レオンがミランとは違い、自分と同じだと思っていなかった事に、ミランは笑い出したい気持ちに駆られた。
「はは……そうか。だが、レオンは私と同じではないと今回の事で、とても良く分ったよ」
「ようやくか」
「ようやくだ。私がレオンに抱いていたのは……悔しいが、自分と同じだから信じられるという、信頼であったようだ。……ルカの言うような」
話を振られたルカはにこりと微笑むだけで、何も言わない。
ミランは少し晴れ晴れした表情で、
「所で、それを差引いても私はレオンの事が好きなようだが……」
「さっきの話は何処行った!」
「いや、実は私は自分の見た目が好きでね」
「知ってるわっ! ああもう、俺は好きじゃない!」
もう止めてくれというかのようにレオンは疲れたようにミランに告げると、ミランは面白そうに笑って、
「そうか、レオンに振られてしまったのか、私は」
「……昔から言っているだろう」
「区切りを付けたいのだよ。ここで」
勝手にしろとレオンはミランに告げて歩き出す。
それ以上ミランは何も言ってこなかった。
「……我もそろそろレンヤの様子が気になるので失礼する」
そう、ルカも消えて、後にはミランとホーリィロウが取り残される。
「……次を探せ、か」
振られたというのに、何処か嬉しそうにミランが呟くのを聞いて、それまで黙って聞いていたホーリィロウが、
「ミラン様は、見た目だけは特に人気がありますから、大丈夫ですよ」
フォローにならないフォローを入れた。が、
「……私は見た目だけか?」
「……レオン様へのアプローチの仕方には所々疑問を覚えますので、一番ポイントが高い点を重視してみました」
「……面白いから黙っていたのか?」
「……いえ、仕える人間の悲しい性なだけです」
そう冗談のように言うホーリィロウに、ミランは少し言うのを戸惑ってから、
「……ホーリィロウには悪い事をした。希望を持たせてしまった」
「……未練がましい僕にも、問題があります。そしてその手助けをしてしまったのも……考えの足らない僕にも、責任の一旦はありますから。結果として全員無事でしたから」
そう笑うホーリィロウにミランは安堵する。
嫌われていなかった。
そしてそこでミランは真剣な表情で、ホーリィロウに問いかける。
「……一つだけ、ホーリィロウ、お前の意見を聞きたい」
「何でしょう」
「もし、闇の神を光の神が手に入れたなら、光の神にとって人間の存在価値はどうなるのか」
「それは……」
「……今回の事で私も、"光の神"に逆らったとみなされるかもしれない」
「……それを言うならば僕もです」
「……けれどこの状態は人間の存続を考えるならば、最良であったかもしれない」
黙ってしまう、ミランとホーリィロウ。
不幸中の幸いというべきか、ある意味で人の存続は約束されたのだ。
かといってこれからの事を考えるといろいろな意味で、頭が痛いが。
と、そこで、ミランが思い切って言うことにした。
レオンに言った時と比べ物にならないくらい緊張している自分にミランは気づいて、心の中で苦笑しながらも、
「所で私はレオンの次を探す事にしたのだが、ホーリィロウ、君はなってもらえないか?」
短い告白だった。けれどミランにはとても勇気がいる言葉であったのだが、
「あ、僕、年上が好みですので」
「……(#^ω^)」
ルカが、部屋に戻るとレンヤが起きていた。
「……ルカ、大丈夫だったか?」
「うむ。しかしレンヤに魔力が取られないと、まだ我の方が強いという事が分った!」
「……そうか」
そう受け答えをして、ルカがレンヤに抱きついた。
それに小さく笑いながらレンヤが抱きしめ返す。
「……やっぱり何も言わないレンヤよりも、こうやって抱きしめ返してくれるレンヤが、我は好き」
「……ルカは甘えん坊だな」
「レンヤだからだ。全部レンヤだから我は……大好き」
そう言ってルカは、ぎゅうとレンヤに抱きつく。
それを抱きしめ返してから、レンヤは優しい口調でルカに問いかける。
「所で、あの首飾りはどうしたんだ?」
「うむ、これか。実は金具が簡単に取り外れるようになっていたのだ。やっぱり、レンヤにそう酷い事は……」
そこでルカから受け取った首飾りにレンヤは魔法をかけた。
そして、ひょいっと再びルカの首にそれをかける。
首飾りは強化されて、ルカだけでは外せなくなってしまった。
何が起こったか分らず、二回ほど、ルカは首飾りとレンヤを見比べてから涙目で、
「……酷い」
「……一生俺が守るから、別にいいだろう?」
ルカはその言葉に少し頬を膨らませてから、レンヤの胸に顔を埋めて、少しだけ嬉しそうに微笑んだのだった。
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本当は昨日更新したこの辺りの話はシリアスじゃなくて、もう少しこう……エロいというかそういう感じを出したかったのに上手く行かなかったorz。……努力します。
次回の更新は近日中に。よろしくお願いします。