一緒に散歩でも
カノンはぱちりと目を覚ました。
外に出てからの記憶が無い。
なのに気づけば再びベッドの上で、レオンに抱きしめられていた。
なんか服が一もと違って高級そうだとかそこらへんはいい。
レオンの顔が近くて、その顔も幼く見えて可愛くてもう……もう、どうすれば良いのかと。
とりあえず背伸びをするように、レオンの唇にカノンは自分の唇を重ねた。
一回。
軽く触れるだけのキスをするが、レオンは安心しきったように気持ちよさそうに眠っている。
その様子にカノンはちょっとだけむらっと来て、もう一回キスをしてみた。
レオンはまだ起きない。
酷くどきどきして、カノンはレオンにもう一度キスをする。
それでもレオンはまだ目を覚まさないので、カノンは熱に浮かされたように数回それを繰り返す。
けれどレオンは目を覚まさないので、今度はそっとカノンは唇をつけてレオンの口の中に舌を進入させて……そこでレオンが瞳を開いた。
まずい! そういう危機感から、カノンは逃げ出そうとするがレオンにベッドに押さえつけられて、そのまま唇を貪られてしまう。
「あぁ……んんっ……んんっ」
唇の端から唾液が零れ出るくらいに激しく舌を絡められて、口の中を犯される。
繰り返されるたびにカノンは体が震えて、熱に浮かされるようになる。
そして潤んだ瞳でぼんやりとカノンはレオンを見つめ始める。
気持ちいい、レオン好き。
そんな言葉だけでカノンは自分の体が満たされて、何も考えられない。
そこでレオンが唇を放した。
「……おはようカノン」
「……おはよう」
「と、いうわけで続きをしようか」
カノンの上で、レオンが嬉しそうに笑った。
カノンは正気に戻った。
「ま、待て。待って、お願い、朝から何する気だ!」
「うーん、あんな事とか、こんな事?」
「ほ、ほら、こんなに気持ちのいい朝だから一緒に散歩でも……」
「俺はカノンを味わいたいなって。気持ちのいい朝だし」
実際にカーテンから零れ出る光の強さが、良く晴れた日であることを示している。
細い筋になって床の絨毯を照らすその光を見つめてレオンは、
「……外でするとか?」
「……今の言葉で、僕のレオンへの好感度が10ポイント低下しました」
カノンが冷たい目でレオンを見る。
レオンはやりすぎたかなと思いつつ、
「……ちなみに0になるとどうなるのでしょうか?」
「魔王城に僕が帰る」
きっぱりとカノンは言い切る。
相変わらずカノンの目が冷たいままなのでレオンは、
「じゃあ、迎えに行けばいいんだろう? 俺が」
「でもレオンは勇者じゃないだろう? 王族だし」
「……あ」
「だから魔王城には入れないだろう?」
「で、でも勇者を連れて行けばいいんじゃ……」
「来ても、父様に対応してもらえば良い。僕はレオンに会わないようにする事なんて幾らでもできる」
「……調子に乗りすぎました。でもごめんなさいなんて言わないんだからね!」
「……ちゅ」
そんな、ちょっと開き直ったレオンに、カノンは唇を重ねた。
すぐに離れていくカノンの表情が、何処か憂いを秘めている。
どうしてだろうとレオンが思っていると、カノンが
「……レオンが王族だなんて、僕は知らなかった」
「……嫌いになったか?」
「……好き」
そうカノンは呟いて、再び甘えるようにレオンにキスをしてくる。
そしてそのまま何も言わずに、レオンへとぎゅうと抱きついた。
また不安にさせてしまったとレオンは後悔しながら、レオンは抱きついてくるカノンを抱きしめ返す。
それにカノンはさらにレオンの胸に顔を埋めてくる。
俺はもう駄目かもしれないとレオンは思っていると、
「……レオン、初めて……大人になって会った時、勇者として成長するなって思ったんだ」
「何で?」
「……魔力の基礎的な量が人間にしては高いから、成長するだろうって思ってた」
「ホーリィロウの方が強いだろう?」
「レオンのほうが強いよ。多分……王族だから、力が強いのかも」
「……通りで皆、魔法の勉強させたがったわけだな」
「……だからあの……ルカに教わって首飾り作っていた時も、分ったんだね」
「魔法のお勉強をしないと、剣術やらせてもらえなかったからな」
「……どうして剣を頑張っていたの?」
不思議そうなカノンを、レオンは照れ隠しも含めてカノンの顔を自分の胸に埋めさせてから、
「……勇者の振りしてカノンを探しに行こうって思っていたから。それに魔族の方が魔力は高いし……いい所見せたかったんだよ」
「……そんな事しなくてもレオンは素敵だよ。でも……嬉しいな……大好き」
再び、顔をすりすりしてくるカノンに、あ、襲いたいとレオンの理性が切れそうになる。
そこで部屋の扉がノックされたのだった。
次回更新は一時間後