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ドロドロ?

 レオンは勢いよくドアを開けた。

「カノン――っ! って、何をしているんだ?」

「た、助かった……レオン、助けて」

 そうヒーローの登場に目を輝かせる子供のように、カノンがレオンを見ていた。

 一方レオンは目の前の状況が良く分らない。

 カノンの頬に、レオンの母がぺちぺちととても扇情的なアレを押し付けているようなのだが……。

「母様、何をしているんですか?」

「ん? 普通の下着だと、肩の部分がドレスの中から見えてしまって格好が悪いから、こっちに着替えなさいって言っていたの」

「聞いてないよ! 何だその話は!」

「あら、言っていなかったかしら? ごめんなさいねー」

「……本音は」

「可愛い子を弄ぶのが楽しい。反応もいいし。こういう娘が欲しかったわー」

 レオンの母親の発言に、レオンは微妙な顔をしていた。

 そしてカノンは、いつまでこの人に弄ばれるんだろうとちょっと悲しくなった。

 そういう理由ならアレも致し方が無い……なわけがあるか!。

「もっとこう、そういうなんかこう無駄に色々ついていない奴だっていいだろう!」

「見えない所までおしゃれをするものなの! それが粋なの!」

「見えない所を飾ってどうするんだ! 無駄じゃないか!」

「……知りたいの?」

 レオンの母親がにやぁと悪い笑みを浮かべる。

 カノンは何かの危険を感じる。

「……いえ、やっぱり良いです」

「遠慮しなくていいわよ?」

「聞きたくないです」

「またまた、本当は知りたいくせに、実は……」

「うわーん……て、レオン? んんっ」

 そこでレオンはカノンにキスをした。

 突然のキスにきゃあと周りで黄色い悲鳴が上がって、それよりもレオンにキスをされているという幸せがカノンの思考をとろんとさせた。

 本当にカノンはレオンが好きで好きで好きで、どうしようもなく好きで。

 とぼんやりと思っているのだが、ふと、カノンはにおいというか何と言うか……。

 触れるだけで放されたキス。

 レオンは、先ほどミランにされた気持ちの悪いアレの感触が完全に消えてほっとした。

 やっぱりカノンとのキスはとても甘くてとろけそうで酷く幸せな気持ちになるとレオンが思っていると、そこでカノンが酷く険悪な表情をしている事に気づいた。

 な、何でとレオンが思っていると、カノンがポツリと冷たい声で告げた。

「……レオン、浮気しただろう」

「! そんな事ない。俺はいつもカノン一筋……」

「……他の奴とキスしただろう」

「ええっと……」

「僕に言えないような相手なのか? 僕はもう落としたから、どうでもいいのか? それとも初めから僕の事なんてどうでも良くて本命の相手の気を引くために……」

「どうしてドロドロ展開に持っていく!」

「だ、だって……レオンの事、好きなんだもん。もう、手放してあげられないのに」

 うつむくカノン。

 その可愛らしさとかいじらしさにレオンはカノンをぎゅっと抱きしめた。

 本当にどうしてこんなにカノンは可愛いんだろう。

 レオンは頭がくらくらしてくる。そこで、

「……それで、一体誰にキスされたの?」

「ミランに」

「ほう?」

 カノンの黒い気配にレオンは我に返った。

 ついうっかり答えてしまったが、案の定カノンはとても怒っていて、

「あいつ、よくも僕のレオンに……」

 そうボソッと呟くカノンが怖い。

 これはまずいとレオンが思っていると、レオンの母親が、

「まあ、一応一度はレオンちゃんと婚約したからね、ミランちゃんと」

「え?」

 驚いたようにカノンが疑問符を浮かべて、レオンを見てそれからとても悲しそうに。

「……レオン、嫁がいたんだ」

「……いや、俺の本命はカノンだけだって」

「……何人も恋人がいる奴に限ってそう言うんだ」

「違う! 俺はカノン一筋だから! 母様もなにか言ってください!」

「うん、一応こちらからは破棄するように言っておいたけどね」

 レオンの母親があっさりと認めると、カノンは、

「……ブワッ(´;ω;`)」

「か、カノン?」

「良かった。レオンが、もう誰かのものなんて……僕、もう、もう……」

「ああ、うん。ごめん、不安がらせた」

「レオンはいつも僕を不安にさせる」

「カノン……」

「でも、レオンは僕を誰よりも幸せな気持ちにさせてくれる」

「カノン……」

「だから、僕が不安にならなくなるまで、僕の傍にいて欲しい。違う、僕が一緒にいたい!」

 そう言い切ってカノンがぎゅうとレオンに抱きついた。

 レオンはもう駄目だと思った。

 カノンが可愛すぎて可愛すぎて可愛いすぎて……。

 そこでレオンは、レオンの母親に腕を掴まれて廊下に連れ出された。 

「レオン、あの子なんであんなに不安そうなの?」

「いや、えっと、色々な誤解もあって……もともと記憶操作されて、カノンは俺が幼馴染が好きだと思っていたとか……」

「……ただでさえ立場もあるし……なるほど」

「でも、そういった所まで全部抱きしめて、不安から守ってあげたいと俺は思っています」

「……あらあら、まあまあ……いつまでも、子供だと思っていたのにね……」

 そう嬉しそうに、けれど何処か寂しそうにレオンの母親は微笑んだ。

 そして、そろそろカノンを飾るのを再開したいからという事で、レオンはその部屋から追い出されてしまったのだった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次回更新は不明ですが、よろしくお願いします。

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