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深く考えるな、意味はない

 振り返るカノンとレオン。

 その瞬間に、カノンが僧侶に押し倒された。

「「え?」」

 間の抜けた声をレオンとカノンが同時にあげた。そして、そんなカノンと、次にレオンを僧侶が見上げてにたりと笑った。

「適当に言ったに決まっているじゃないですか☆」

 そのまま一気にカノンの服の中に僧侶は手を突っ込んでそのまま、カノンをくすぐり始めた。

 なまじ生命の危機に瀕していないので、対人スキルの低いカノンはどう対応すればいいのか分からない。とりあえずじたばた暴れつつ抗議の声を上げる。

「やめっ……ひっ……ひあっやあっ」

「ふふふ、よいではないかよいではないか♪」

 僧侶は凄く楽しそうだ。そのくすぐり攻めはどんどん激しくなっていく。

 加えて、カノンが凄く敏感だという事実をレオンは知る。

 ごれは非常に重要な情報だ。そう、これは非常に重要な情報だ。

 しかも、涙目になって息も荒げに顔を赤くしているのも中々よい。実によい。

 そうレオンが、うむうむと頷いていると、

「レ……レオ……助け……ひぁっ……ひあっ」

「もう一息かなぁ?」

 名前を呼ばれて、レオンは我に返った。

「……助けを呼ばれたから、やめてくれないか?」

「レオン様がそういうのであれば、仕方ないですね」

 と、楽しそうに僧侶が笑ってくすぐるのを止めて離れる。

 くすぐられていないのに、カノンの体がびくんびくんと小刻みに震えている。

 落ち着かせようと、カノンが息を荒げに呼吸をしているのを見てレンは心配になる。

「大丈夫か、カノン?」

「ひゃんっ!」

「………………………………………………」

 抱き起こそうとしただけで、エロイ声が出た気がする。いや、だって俺まだ何もしていないし、と思いつつレオンは再びカノンに触れる。

「ひっ!」

 くすぐられ過ぎて感度が高くなっているらしい。どうしたものか、本当に……。

 襲おう。

 お持ち帰りして美味しく頂いてしまおう。だってなんかこう凄くこう、可愛いではなくて、確かに可愛いのだけれど、なんかもう良いかもって思うんだ。

「レオン……顔が怖い……」

「はっ、俺は今何を……ぐふっ!」

 引いたようにカノンが見上げていると、次にはレオンが呻くとカノンの上に倒れこむ。

「レオン、レオ……え?」

 僧侶がカノンに倒れこむ前にレオンの腕を引っ張りあげて、そのまま背負う。

 ちなみに僧侶はカノンよりも背が低く非常に華奢である。

 そのまま背負い込んで、一息ついてから僧侶はそのまま去ろうとした。だから、即座にカノンは飛び跳ねるように起き上がり、僧侶のフードを掴んだ。

「……放して頂けませんか? 僕は貴方に用はありません」

「散々くすぐっておいて、ただで逃がすと思うか? 僕が。それに、レオンを返せ」

「……レオン様は後、ね。それに、貴方のものでは無いでしょう?」

 呆れてものも言えないというように、溜息を付きながら振り返りもせず僧侶が言う。

 だから僧侶はカノンがどんな表情をしているのか見えなかった。

「それで?」

 淡々とした声音。感情の無い、そんな言葉。僧侶もさすがにレオンの事を気の毒に思う。恋敵とはいえ、レオンがカノンの事を好きなのは一目瞭然なのに。

 だから少し苛立ちながら僧侶は言い返した。

「よく堂々とそんな事が……」

 そこで僧侶は言葉をとめる。思いの他近くにカノンの顔があった。

 その顔は表情が消え失せ、ぞっとするほどに冷たく美しく見えた。

「手を出すな。殺すぞ?」

「………………………………………………」

 カノンの金色の瞳が、魔物の瞳が煌々と輝く。声音も、体が氷の塊になってしまったのではないかと感じるほどに冷たい。

 命令されていると、僧侶は理解した。

 これは一体なんだ?。威圧感、異質な、とても恐ろしい生き物に遭遇してしまったような。

「もう一度言う、レオンに手を出すな」

 その金色の瞳は、僧侶が今まで見た中で一番綺麗で恐ろしい。

 逆らってはいけない。でも、この綺麗な生き物は何だ?。

 僧侶はその声に従うように、レオンをカノンに渡すその時に、カノンが"何"であるのかを知ろうと魔法かける。けれど、その魔法はカノンが一笑すると共に消え失せる。

 圧倒的な力量の差だ。それは、魔族との混血なのかを疑わせるほどに。

 カノンが抱きしめたレオンに目を移すと、ふっと優しい笑みを浮かべた。

 その笑みがあまりにも澄んで柔らかくて優しげだから、僧侶は油断してしまう。

 レオンに魔法をかけて抱きかかえ、去ろうとするカノンに、やはりレオンを諦めきれない僧侶は手を延ばして肩を掴んだ。

 その手は即座にカノンによって弾かれる。さらに、

「僕に触れるな、下種が!」 

 吐き捨てるように僧侶に言い切る。その目に宿る殺気は、次は無いと物語っている。

 その恐ろしさに、僧侶は床にへたり込んでしまった。

 本当に何なんだあれは。今まで出遭った魔族と全てにおいて違う。

「やあ、僧侶、どうだった?」

 先ほどの行動全てが、ホーリィロウの筋書き通りだった。レオンが僧侶は欲しかったので、協力するという趣旨のはずだったのだ。

 けれどこのような結果になってしまった。そして、ホーリィロウは失敗したというのにご機嫌なまま。

 また彼の駒として働かせられた事に僧侶は溜息をつく。いつもの事だ。だからあえてそれを問いただすことはせず、

「……ホーリィロウ様。確かカノンが欲しいと言っていましたが、アレを?」

 あんな恐ろしいものを欲しいと言う我が勇者を、僧侶は気が狂っていると思う。

 けれど、ホーリィロウはそんな僧侶の言葉に、

「そうだよ。欲しいんだ」

「僕は、恐ろしいと思いました。あれは……」

「多くの勇者が望んで止まない果実だよ、禁断のね」

「は?」

 時折、詩的な表現をする我が勇者に、僧侶はもっと分かりやすく言ってくれませんかねと思っても口にしない。

 以前戦士がそれを言って、しばらく部屋から出てこなくなった。

 さすがにそれを今されると困る。

 適当に頷いて流す受け流しスキルが僧侶の中で着実に成長しつつあった。

「はあ、そうですか。それよりも次はどうするのですか?」

「暫くレオン達を追い掛け回すことにした」

 願ったり叶ったりの発言に、僧侶は喜びかけるもののあの怖い生き物を思い出して僧侶は素直に喜べない。そんな僧侶を見透かしたようにホーリィロウは笑いかけた。

「レオンという首輪があるから大丈夫だよ。彼がいる限りカノンは何も出来ない」

 そう言われて納得する。確かにカノンはレオンといる時は雰囲気が違う。

 ただその言葉に安心を感じると同時に、僧侶には逆に悔しくも思えた。

 負けてなるものかと、僧侶は心の中で誓ったのだった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。



次回更新は未定ですが、よろしくお願いいたします

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