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納得したので


「そういえばカノンちゃん、突然居なくなっちゃったけれど……」

 そうセーレに問いかけられてカノンははっとする。

「え、えっと、僕、ちょっとストーカーぽい相手が居て……」

「そっかぁ、カノンちゃん可愛いものね。でもその後大丈夫だったの?」

「うん、やられる前にやっておいたから……」

 さすがに魔王なので追いかけられてしまったとは言えず、カノンは適当に言葉を濁した。

 そんなカノンを見ながらセーレはふと、

「……そういえばカノンちゃんがいなくなる前にカノンちゃんが大きくなったような姿の魔族にあったんだけれど……」

「へ、へぇ、そうなんだ」

「ちなみに僕の夫は、ホーリィロウという勇者のパーティで魔法使いをやっています」

「え?」

 カノンは冷や汗が自分の額に浮かぶのを感じた。

 だが別にばれた所でもうここに来る事だ出来なくなるだけで別に……うう。

 そんなカノンの様子を見てセーレがくすりと笑った。

「まあ、ちょっとからかっただけだけれどね、僕の見間違いかもしれないし。そもそもあの岩の巨人が砂になった物だって綺麗に消えていたし……実の所本当にあった事なのか未だに確証がもてないんだ」

「そう……なんだ」

「でもレオンはいつだってカノンは戻ってきたかって聞きまくっていてもう本当にね……これでカノンちゃんに別の恋人がいたらと思うともう……妄想が止まらないというか」

「……おい」

「でも良かったね。レオンはカノンちゃんに夢中だし、カノンちゃんはレオンに夢中だし」

「そ、それはその……うん」

 ちょっと顔を赤らめてカノンは頷いた。

 素直に頷かれると、レオンもなんと言うかこう……。

 そのままぎゅっとカノンをレオンは抱きしめた。

「レ、レオン?」

「カノン、愛してる。子供の時からずっと好きだった」

「レオン……僕も、レオンの事が好き、愛してる」

「不安はなくなったか?」

「……うん」

 二人の世界が形成されている。

 その初々しい恋人達の様子を見ながら、セーレは氷の解けたお茶に口をつけたのだった。


 それから何気ない話をして、カノンとレオンが宿へと戻ってくると、部屋に書置きの手紙が。

 それをレオンはとって、おもむろに読み上げ始めた。

「くっくっく、これを読んでいる頃にはレオンとカノンちゃんはもう好きなようにちゅちゅちゅしても良いかなと思っている頃だと思う。そんなわけで空気の読めるこの僕、イオは他の部屋を借りておいたよ! ちなみにルカちゃん達は都市の方を見たいからってそっちに行っちゃったよ。……この意味が分るかね? つまり二人の仲を分かつ邪魔者は居ないのさ……さあ、どうする?」

 その場でカノンは、レオンが声を出して呼んだその紙を取り上げて、力任せに引きちぎった。

「この、この、この……イオのばかー、こんなところで気なんか使うなぁぁぁぁ」

 そう涙声でカノンは叫んで、その紙をゴミ箱に捨てた。

 はあはあぜいぜい、と息を激しくすっているカノン。

 そんな耳まで真っ赤なカノンをレオンは後ろから抱きしめた。

「……それで、カノンは納得してくれたか?」

 赤くなったカノンの耳にレオンは囁いてやると、カノンはびくっと体を震わせた。

 そして少し黙ってから、

「……うん。レオンが昔から僕のことを好きだったって、分った」

「カノン、俺が本気だって分ったか? 俺はもう二度とカノンの事を手放すつもりは無いって」

「……うん。でも、僕だってレオンの事を逃がすつもりなんてない。……僕の方がレオンよりずっと強いもん。力づくでだって、僕に縫いとめられる」

 そう目に暗い光を宿しながらカノンは笑う。

 そんなカノンにレオンは肩をすくめて、

「どうかな、カノンは意外に間抜けだからな……」

「……レオンは僕以外に他に好きな人を作るの?」

「……そうだな、カノンが俺のものにならないならそうなるかもな」

 と、少しだけ意地悪な事を言ってみる。

 案の定カノンは焦ったように、

「! 嫌だ! レオンがそんな他の誰かと……」

 すがるようにカノンは、カノンを抱きしめる腕をぎゅっと握った。

 そんなカノン入れ恩は寂しそうに小さく笑って、

「……俺の方がずっと不安なんだぞ? カノンは俺よりも力があってこんなに綺麗で可愛くて……優しくて。飽きて捨てられたり、離れていってしまう事なんてずっと簡単なんだ」

「レオン……」

「カノンが俺を拒めば俺はもうカノンに会えないんだ。それが、俺は怖くて仕方がないんだ」

 そんな不安をレオンが抱えていたなんてカノンは気づかず、カノンは俯いた。

 そこでレオンはカノンの肩を掴んで、レオンのほうを向かせて笑った。

「……カノンは前、俺が笑っている顔が好きだって言っただろう? だから、苦しくたって俺は笑っていたぞ?」

「レオン……ごめん」

「何で謝るんだ? 結構これ、使い勝手がいいんだぞ?」

「……レオン」

 心配して損したというように、むっとしたような顔で見上げるカノンの唇に、レオンは自分の唇を重ねた。

 そのままレオンはカノンの口に舌を入れて、舌を絡める。

 暫くしてから唇を離すと、カノンの目にどこか安堵の表情が見えて。

「カノン、愛してる」

「僕も……レオンのこと愛してる」

 そう、甘く二人は呟いたのだった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次回更新は、近日中に。よろしくお願いします。

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