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幼少期の黒歴史(3)

 お小遣いとして与えられた金貨をレオンは見る。

 いつも召抱えている商人から物を買っているが、これさえあればこっそりお忍びの服を買う事だって出来るし地図だって手に入る。

 もうすでに何度も城の警備の目をかいくぐってレオンは外に出ていた。

 そして分かった事は、

「シルスの村って、近すぎ」

 城の城壁から徒歩三十分くらい、ちなみに後で聞いた話では、この村はもともとは王宮の野菜を作るために出来た農園が始まりらしい。

 けれど、その場所からレオンの住んでいた城は見えない。

 城壁からある程度離れて行くと城が見えなくなることで、遠距離からの攻撃に備えているのだった。

 レオンはとことこと歩いていって、さて今度こそレオンを仲間に入れてくれるような遊び相手はいるだろうかと思いをはせる。

 以前、都市の子供達に紛れ込もうとした所、仲間外れにされてしまったのだ。

 レオンの見た目もそうだが、子供達の敏感な感覚から、レオンが“異質”と判断されて排斥されてしまったのだった。 

 さて、今回はどうだろうと思って歩いていくと、子供達の集団がいる。

 銀髪の長い髪の……性別は後姿なので分らないが、それがリーダーらしい。

 そして彼らの前で子供が三人ほど穴を掘っているらしかった。

「何をやっているんだろう」

 そうレオンは彼らの様子を近くで見るために歩き出したのだった。


 時間はレオンがこの村に着く少し前。

 カノンは三人の子供の前で仁王立ちになっていた。

「お前達、よくもセーレを苛めたな?」

「だ、だって……」

「言い訳は聞かない。さて、どうしてくれようか……」

 カノンの後ろに隠れている“妖精族”との混血であるセーレ。

 その見目の麗しさから、彼もまた村の子供達に手を出されていたのだが、ボスであるカノンに助けを求めたのだ。

 カノンはボスの勤めとして自分の“部下”であるセーレを守る義務があると思っていた。

 そして、悪い事をした子供を再教育する事も。

 カノンは優しくて甘い所もあるが、厳しい所は厳しいのだ。

 なのでカノンが怒っているのを見て三人の子供達は、

「……だってセーレと遊びたくて」

「蛙とか毒のない蛇をを一斉にけしかけられたって聞いたけれど」

「持って追い掛け回しただけだもん!」

「……ほう?」

 そしてカノンは、現在罰として三人に穴を掘っては埋めさせる行為をさせている。

 それを三回ほど繰り返した所で、見ていたセーレがカノンに問いかける。

「……カノンちゃん、何で穴を掘って埋めさせるの?」

「ん? ああ、人間は無意味な事をやらされ続けるとやる気を無くすから。それでセーレの事を苛めようって気が、そう簡単に起きないよう体で覚えてもらおうかと」

「いつまでやるの?」

「さて、いつまでかな……」

 時間を言われない事で、三人がびくっとする。

 そんな三人とカノンを見てセーレは、カノンちゃんて可愛いけれど結構腹黒だよなと思ったが、今まで散々泣かされたセーレにとっては庇い立てする気はなかった。

 それにカノンは泣いているセーレを助けてくれたのだから。

 そこで顔色の悪い三人の子供にカノンはにやりと笑い、

「……でもある事を言ったら、これで終わりにしてやる。どうする?」

 子供達は顔をお互い見合わせて、不機嫌そうにセーレに向かって、

「……ごめんなさい」

 と言った。よし、反省の色がないとカノンは判断して、

「……追加するぞ?」

「ごめんなさい!」

 と子供達は、若干涙目になりながら切実に言ったので、カノンはそれで穴を埋めさせて終わりにした。

「……好きな子は苛めちゃ駄目だぞ? 自分を魅力的に見せて、目が離せないくらいにしないとね?」

「……はい」

 カノンがにこりと笑うと、三人の子供達はぽやーとカノンに見とれる。

 この三人はカノンの事も綺麗なので好きだった。

 が、とてもカノンは強いので、手出しが出来ないためその分もセーレに向かってしまっていたのだった。

 一方カノンはこういう子供も、根は曲がっておらず素直なので嫌いではなかった。

 このタイプなら問題ないのだが、希に、『ごめんなさい、でも僕も悪いと思うけれど君にも問題が(以下略)』というまったく反省しない人間がいる事を知っている。

 それと比べればとても素直で可愛いので、三人に頭を撫でてから飴玉をやると、三人は嬉しそうな顔をしたまでは良かったのだが。

「カノンちゃんてなんだか、“お母さん”みたいだよね」

 ぽつりと言ったセーレの言葉に、カノンは必死に、なんで僕がお母さんなんだ、と訂正を求めていたのだった。


 僕、と言っていたからそのリーダーの子は男らしい。

 彼の顔はこの位置から見えないが、傍にいる子はとても可愛くて、その子は“妖精族”らしい。

 しかし今の話を聞くに、リーダーの子は中々いい性格をしている。

 悪いともいえるが、良い所もあってとてもユニークだと思う。

 少なくともレオンはこういう人間は嫌いではない。

 だから声をかける事にした

「あの……」

 リーダー格の子が振り返った。

 その瞬間時が緩やかになったようにレオンは感じた。

 さらりと流れる銀髪に、金色と青の意志の強そうな瞳。

 可愛いとか綺麗とか美しいとか、その全てを内包しておりどう表現していいのかレオンは分らなかった。

 目はその少年に釘づけで、逸らす事も動くことも出来ず、心臓の鼓動だけが速くなる。

 そこでその銀髪の少年は口を開いた。

「……誰?」


次の更新は一時間後

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