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困る質問No,1

 宿に着いて、

「キス、何で黙ってされていたんだ?」

「いや、突然の事で……もしかして、レオン、それで怒って?」

「……大切な"幼馴染"だからな」

 本当はそれだけではない事をカノン以外は全員知っていたので、彼らから見ると修羅場のような状態である。

 だが、当のカノンは嬉しそうだった。

「そっか、心配してくれたんだ」

「……そうだ。まったく、キスなんかされて……」

 カノンの雰囲気からどう考えてもレオンの怒っている意味を勘違いしているらしい。それはそれで好感度upかとイオが分析していると、

「そうだよね、百回キスすると子供が出来るしね!」

 レオンが固まって、それを聞いていたイオが噴出した。しかもそれだけでは笑いが収まらないらしくお腹を押さえて床に転がった。

「イオ……失礼だよ。僕はそんなにおかしい事を言ったつもりは……レオン?」

 真剣な表情でレオンはカノン両肩に手を置いて聞いた。

「カノン、いま自分が何を言ったか分かっているのか?」

「え? だから、百回キスすると子供が出来るって」

 それに今度はふいっと、レオンはイオ達の方に歩いていき、

「どうしよう……」

「いや、僕に言われてもね……」

「試しに子供がどうやって生まれてくるか聞いてみたらどうだ?」

「トラン、いいアイデアだ」

 そこで不思議そうにこちらを見ているカノンに、レオンは聞いてみる。

「カノン、子供がどうやって生まれてくるか知っているか?」

「確か人間の子供はキャベツ畑で、魔族はコウノトリが運んでくるんだったか……逆だったかな?」

「よし、わかった。そのままでいい」

 へんなのと首を傾げるカノンをよそに、レオン達は作戦会議をする。

「どうするんだ、あれ。というか、うーん」

「いっそレオンが教えてあげたら。手取り足取り、ね?」

「……そうだ、とりあえず俺が百回カノンにキスして子供が出来ないって事を示せばいいんだ」

 そんなレオンの発言に、イオがにまにまと笑い煽る。

「レオン、良いから襲っちゃいなYO☆」

「無理だ。カノンはまだ俺の事……"幼馴染"としか思っていないから」

 カノンの事を大事に思っていますと暗に言うレオンに、イオは更に楽しそうに笑って、

「あら、純愛なんだ」

「落とす過程が楽しんだよ。それに、それをやってから、その後で子供が見たらいけない本を買いに行かないと」

「自分で教えてあげないの? カノンちゃんに、こうとか、こうとか」

「……俺が知らない内に、『教えてあげるから来ない?』『分かった』『アッ―!』てなったらどうするんだ!」

「……あのカノンちゃんをどうこう出来る人がいると?」

「はっきり言おう、エロ用語で顔を赤らめるカノンが見たい!」

「よし、行け」

「ありがとう、わが友よ」

 がっしりと手を握り合い、頷く二人。その二人を良い友情だなと、トランが表情を変えることなく頷いていた。


「え?……キスするの……だって……」

 あまりにカノンが顔を真っ赤にしてしまうから、レオンまで頬が熱くなる。それに顔を赤らめるカノンが可愛いから仕方ないとレオンは思う。

「その、レオンは僕と……」

「ち、違う。カノンは"幼馴染"だからそれ以上の感情は無い」

「だったらどうして」

「……"幼馴染"だから、間違っている事を教えておかないと」

「そんな! 父様が嘘をついたって言うのか!」

 カノンが何故そんな事を行っていたのかレオンは気付く。そして、成長過程で何処かでそういう話を聞くはずなんだけれどなと苦笑して、

「ほら、子供の時ってそういう話はわざと避けるようにするんだ。きっとカノンの事が可愛いから、わざと嘘をついたんだ……」

「そう、そうか……」

 しょぼんとするカノンの隣にレオンは座り、カノンの顎を右手持ち上げる。

 そのままレオンはカノンに唇を重ねた。カノンはレオンの唇が柔らくて温かくて、"甘い"と思った。

 そして思った瞬間、何を考えているんだと慌てて飛びずさる。口がぱくぱくするだけで、カノンは声が出ない。

「~~~~~~~~~~」

「何だ、この前の夜は積極的にやってきたのに」

「だって記憶にないし。それにキスしてもし子供が出来たら……」

「責任とってやる。だから、やってみよう、百回のキス」

 前にも増して顔を赤くするカノン。実の所、責任とってやるとか、レオンの顔がこういう顔していればカッコイイと思ってたとか、本当に心臓に悪い。

 そしてカノンも、してみても良いと思う自分と、レオンが嘘つくはずないからきっとそんな事はないのだろうという、何処か残念な気持ちで頭がいっぱいで、気が付くとレオンに再びキスされていた。

 今度はカノンは逃げなかった。

 なのでレオンは軽く唇をすってから離す。

 だが、そんなレオンの目に映ったカノンは何故か不敵な笑みを浮かべていた。

「下手だな」

 衝撃的なことを言われて、レオンがえっ、となっている隙にカノンがキスしてくる。

 軽く触れて吸うだけだが、上手い。

「どうだ? これくらいでないと」

「カノン、一体今のキスは誰から教わったんだ!」

「え?」

「誰だ、一体誰に……」

 レオンが慌てたように聞いてくる。よく見ると怒ってもいるようだ。だから、おかしなレオンとカノンは笑って、

「誰もいないよ? それはレオンも知っているでしょう?」

 確かカノンがそういう経験がある設定で記憶操作はしていなかったはず。案の定、レオンが黙る。

「……悪かった。続きするな」

 納得がいっていないようだが、執拗にレオンからしてくる。

 本当にレオンは"幼馴染"が大事なんだなと思い、カノンは胸がちくりと痛んだ。

 それが何だか癪で、カノンもキスで反撃を開始する。

 しばらくそれを繰り返して、百回になる。

「な? 何も起こらないだろう?」

「そうだな。僕が間違った知識を……え?」

 そこでカノンは窓の外を見て、声を上げた。

 何かが近づいてくる。

 それは大きな鳥で、何かを抱えているらしかった。

 それが真っ直ぐにこちらに向ってきて、そして窓から飛び込む。

 大きな鳥だった。それはいいとしてその鳥が持っているものの方が重要だった。

 籠の中白い布に包まれてそれは泣いていた。

「赤ん坊?」

 誰とも無しにカノンが呟く。

 それは、人間の赤ん坊だった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


web拍手に、自作絵を入れておきました。カノン君です。下手な絵で、女の子に見えるかもしれないのですが、それでもokという方は見てやってください。

また、ムーンライトノベルの方の同名小説のweb拍手は、番外編となっています。18歳以上の方はそちらもどうぞ。今のところ投稿内容は同じです。かりうむいおん、で検索すると出てきます。IDは一般向けと分けているので、そこからのリンクではいけません。すみません。


次回更新は未定ですが、よろしくお願いいたします


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