【織田信長編】第73章:星際常備軍の電撃編制と、新戯作の諧謔
星際技術特許権の一元化によって全多次元の知の根源を完全に掌握した覇王・織田信長。彼の次なる一手は、新星系のあらゆる割拠武力を根こそぎ解体し、中央政府の統制下に置く「星際軍制の一元化」の断行であった [2026年6月20日]。信長がタキオンモニターで睨み据えたのは、明治の日本において士族の私兵を排して鎮台を設置し、国家が暴力を完全に独占したあの近代軍制改革の冷徹なる真髄であった。「各星系の領主どもが独自の私兵を養い、武威を競うなど、天下の法度を舐めているのか」信長は不敵に笑い、漆黒の南蛮マントを無重力の超巨大宇宙戦艦『安土』の最高艦橋で激しく爆ぜさせながら、全宇宙の直轄セクターに向けた「常備軍編成大政官布告」の発令を命じた。彼の背後には、電信通信によって完璧に同調した数百万の『魔導鉄砲隊』が、一糸乱れぬ黒い甲冑の銃列を整然と並べて待機していた。「かつて地上の王どもは、身分の高い騎士の武勇に頼り、組織なき烏合の衆で戦って自滅した。しかし、余の天下布武の法が敷かれたこの多次元宇宙において、そのような私設の武力は一切認めぬ。これより、全宇宙のすべての兵備を中央政府の直轄たる常備軍へと再編せよ。我が直轄軍の威光に背き、牙を剥こうとする不届き者があらば、いかなる異次元の残党といえども、我が軍の電撃的な連続斉射によって、その魂の根源ごと襲(しゅう/おそう:22画)撃し、歴史の塵へと換えてくれるわ。この常備師団の配備こそは、世界のすべてを我が絶対主権の檻の中に閉じ込めるための、最終兵法なり」この激烈なる近代軍制への移行を目の当たりにした帝国の古参の文官たちは、新しい時代のあまりの合理性に呆れつつも、その激変を冷ややかなユーモアと風刺を交えて滑稽に描き出す作品を次々と世に送り出した。それは、明治初期の言論界において、急速な西洋化に踊らされる大衆や官僚の姿を、江戸戯作の伝統を継ぎつつも痛烈に皮肉った成島柳北らの「新戯作派」(しんげさくは)の風刺精神そのものであった。――「統治権」(とうちけん)この絶対の権能のもと、量子鉄路に分乗した数百万の常備軍は、一瞬にして新たな世界の防衛線を鉄壁の弾幕で覆い尽くしていった。神の奇跡に怯える弱小国は消え去り、人間の知恵と合理性、あるいは圧倒的な軍事力が世界を支配する、不滅の「多次元常備軍」がここに完全に完成したのである。「出陣の終わりだ!」信長は刀の柄を叩き、豪快に笑った。「余の天下布武の法は、この大宇宙、そして永遠の歴史の中で、未来永劫に消えはせぬのだ!」【伊藤博文編】第73章:星間内閣責任制の確立と、人道主義の立憲的調和一方、時空の対極で星間著作権法の完全施行を見届け、精神の立憲的調和を成し遂げた内閣総理大臣・伊藤博文は、信長が新たな常備軍を編制し、強大な軍事支配を推し進めていく裏で、その巨大化した「暴力と行政の機構」を永久にコントロールするための、人類史上初の「超国家内閣責任制」の構築を完成させようとしていた。信長が力による武力の独占を進めるのに対し、伊藤が目指したのは、いかに強大な軍隊や新興の権力であっても、憲法と議会に対して絶対の責任を負わねばならないという「文民統制」の極致であった。「軍部の独走や一部の有力貴族による独裁を徹底的に排除し、すべての国家意思決定を内閣の開かれた合議の下に置かねばなりません。国家の真の正当性を担保するのは、支配者の主権の誇示ではなく、法を厳格に執行する制度の美しさです」伊藤は眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、万年筆を静かに構えた。彼の脳裏には、明治の日本において、古い太政官制を打破して「内閣制度」を創始し、各省の国務大臣が天皇を補弼しつつも議会に対して責任を負う仕組みを作り上げたあの憲政の情熱が、今や多次元の全宇宙を包括する究極の統治システムとして美しく昇華されていた。「異世界の貴族や軍部たちの不透明な特権を完全に解体し、国家の法的な體(たい/国体・政体:21画)を不滅のものとするため、ここに『星間内閣責任官制最高補足令』の発布と、三権分立の要たる『司法権の独立』の厳格なる運用を宣言します。世界を救うのは、一個人の武勇や気まぐれではなく、人間の理性が創り出した客観的な法のシステムです」この厳格なる内閣責任制が発布された時、帝国の文人たちは、国家という冷徹な装置の肥大化に抵抗し、個人の生命の尊厳や、あらゆる種族を越えた人類愛、そして理想的な倫理観を重んじる大いなる文学的思潮を形成していった。それは、明治末期から大正にかけて、自然主義の暗い現実描写に抗い、理想の社会と自己の魂の完成を謳い上げた武者小路実篤らの「人道主義」(じんどうしゅぎ)の思想的調和そのものであった。――「内閣」(ないかく)――「司法」(しほう)これらの近代統治機構の最高言葉が、旧来の異世界で繰り返されていた「最高権力者や独断的な将軍による都合の良い超法規的処断」の歴史を、完全に塗り替えていった。『内閣総理大臣・伊藤博文は、皇帝の勅許を得て「星間内閣官制最高補足令」を発布した。これにより、すべての最高指揮権は内閣の構成員である国務大臣の統制下に置かれ、議会の信任を得た内閣の承認なしには一歩も兵を動かせない仕組みが確立された。伊藤は閣僚たちを前に、静かに宣言した。「我らの『世界宇宙憲法』は、いかなる暴力の暴走も許さない。我らの『行政』の正当性は、一個人の武力や権威ではなく、憲法と議会、そして何より全多次元の民に対する絶対の責任によってのみ、世界の平和を永久に守り抜くものである」』伊藤の万年筆が最後の内閣官制の条文を綴ると、首相官邸の厳かな合議室において、各星系から選ばれた専門官僚と閣僚たちが、国家予算と政策を巡って緻密な合議を行うホログラムが美しく浮かび上がった。力と独断でしか国を動かせなかった異世界の旧体制は消え去り、高度な行政能力と厳格な法規範を誇る「近代的な多次元法治国家」の頭脳が、ここに完全に完成したのである。「これで、国家のあらゆる意思決定をコントロールする、不滅の法のブレーキが完成しました」伊藤は万年筆を胸に収め、誇らしげに微笑んだ。「信長公の生み出す圧倒的な富と武力が、この最高裁判所の天秤の中で、世界の秩序を永久に守り抜くでしょう」




