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得体の知れない空間

 嫌な夢を見た。

怖い夢だった。

三人に置いていかれ、一人孤立する。

どれだけ走っても追いつけない。

そんな彼女を笑うかのように木々はカサカサと音を立てた。

 3人の姿は小さくなり

やがて消えた。

視界は真っ暗だった、完全な闇。

何もないこと、これが今の玲花にとっては最大の救いだったのかもしれない。

「うぅ…」

 玲花は体を起こそうと試みたが、体に力が入らなかった。

「ここが…あの世なのかな」

 玲花は不思議と冷静になった。

「今はいい…」

 玲花は再び深い眠りについた。

夢の中で玲花は何かに乗って走り回っていた気がする。

帰りのことなど考えずに、ただ。


 玲花は目を開ける。

少し眩しい。

玲花は恐る恐る立ち上がり、自分の体を舐め回すように観察した。

首は確かに繋がっていて、足、腕も揃っている。

やっぱり夢だったのか…

玲花はそう思った。

しかし、視界に映るあまりに見慣れない部屋は彼女の不安を強く煽った。


 ぎぃいいい

扉がゆっくりと開く。

 玲花は底知れぬ不安を感じその場にうずくまる。

扉が開かれると、そこにいたには恐ろしい化け物ではなく白衣の男性がいた。

「僕はこういう者なんだけど……大丈夫?」

男は気を使うように、玲花の下へ近づく。

「うえぇ…ああえ?」

玲花は何かを喋ろうとしたが呂律が回らなかった。

 しばらく静けさが流れる

時計の秒針のカチカチという音が玲花にこの空間が現実であると深く認識させると共に、

強い不安を覚えさせた。次にこの男が発する言葉も事実であると。

ううん…無理もないか

 白衣の男性 南 浩一はそう思った。

「安心して、君は助かったんだよ」

浩一はそう言った。

「ああぁ……ああああああ」

玲花の脳内にあの恐ろしい記憶が一気にフラッシュバックする。

薄暗い森、小さくなる三人の背中、生暖かい血、頼りない金属音

 そして、玲花から全てを奪ったあの化け物も

知りたくもなかった、あれは紛れもない現実だったのだと。

浩一は少し驚いた様子であたふたしている。

彼に悪気があったわけでないのだろう。

「おっ…落ち着いてね」

彼は彼女を宥めるように言ったが、あまり効果はなかった。

「ごめんよ…少し待っててね」

彼は何かを思い出したかのように部屋を後にした。

 また部屋中が静けさに包まれる。

その静けさの中に響く。

 秒針がの音一人一人が玲花の心を壊していく。

ギィイイ

 再び扉が開くと、浩一が何か資料のようなモノを持って戻ってきた。

玲花はなぜか強い安心感を感じたような気がした。

「少し落ち着いたかな…?」

浩一は玲花をじっと見つめながら続けて聞いた。

「今の状況を、説明していいかな?」

レイカは軽く頷いた。

彼は少し深呼吸をしてから話始める。

「玲花ちゃん…だよね?落ち着いて聞いてね、信じられないかも知れないし信じたくないかも知れないけど…君はさ、意識集合た…」

「ゴーストって呼ばれる化け物に襲われて、保護されたんだよ」

 彼は何か難しい言葉を使おうとしたあと、慌ててそれを修正した。

玲花には彼が言っている言葉の意味が全く理解できなかった。

「エリちゃんは?お姉ちゃんに………サナコさんは?」

玲花は答えを知りつつも聞いた。

結果は沈黙。

玲花の目から涙が溢れる。


男は部屋の端まで歩いて窓を開く。

薄暗い部屋に一筋の灯りが差し込む。

「!?」

玲花は驚いた。

「いや…」

そこから差し込む光は今までの生活で当たり前の陽の光には見えなかった。

青白く輝くその光は

どこか幻想的だが、でレイカにとっては不気味な気がした。

得体の知れない光。それが玲花を恐怖させた。

 

「ん?」男が振り向く

「うわぁああ!!!」

ドタドタという大きな音と共に少女が部屋から飛び出す。

「あ!まって」

男は慌てて部屋を出るが人混みのせいですぐに見失ってしまった。

廊下は

浩一という男性と同じ服装をしたの他に。

不思議な服装をした少女たちで溢れかえっている。

「なにあれ?」「どうしたの?」

彼らは玲花を見るなり、心配するそぶりを見せたり

ヒソヒソ話を始める。

廊下をまっすぐ進むと扉が見える。

玲花は迷いもなく扉を突き破りように開く。


外だ。

空があるはずの場所は土に覆われてている。

立ち並ぶ建物は現実的でない形をしていて、この空間を囲う壁にはボール状の構造物が大量に並んでいる。

まるでお伽話のような空間がそこにはあった。

玲花は道に沿って無我夢中で走っていく。

 煉瓦造りの建物が並ぶ通りを抜けると

人通りの多い活気づいた場所に出た。

そこは市場のようになっていて。

たくさんの露天のようなモノが並んでいる。

そこにいる人物たちもやはりお伽話のような服装をしていた。

玲花は呆気に取られた。

いきなり知らない所で目が覚め、得体の知れない場所でどこの馬の骨かもわからない人物から

『あなたたち4人はは化け物に襲われ、あなただけが助かった』と宣告される。

少なくとも玲花は認識そう認識していた。

「帰ろう…お家に…………帰らなきゃ…」

 玲花は泣き出しそうになるのをグッと堪えて、無我夢中で走り始めた。

走っているうちに少しずつ冷静になっていく。

自分の足に血がついていることに気づいた。

 途中何度も人にぶつかった。

すれ違いう人、ぶつかる人も皆

同じ反応をする、

彼らも等しく変な服装をして、時に剣や銃を携えている。

冷静になるにつれ、あの夜の記憶と共にこれからへの不安が襲ってくる。

家はどうなっているにだろうか、玲花が最後に自分の家を見た時。

なぜかそこに入ってはいけない気ことを思い出す。

さらに冷静になっていく。

自分はどうやって帰るんだろう。

ここはどこなんだろう。

目から涙が溢れそうになる。

耐えようとしても顔が歪んでいった。

 

気がつくと、薄暗くどこか嫌な匂いのする空間を走っていた。

周りに人がいないことに気がついて、

レイカは思わず足を止めた。

周りはぼろぼろの赤レンガの壁が続いている。

 レイカはポケットに手をいれて、少し安堵する。

そこには携帯が入っていて、確かに起動できた。

そこは強い風が吹いていて、とても涼しかった。

「中…地…鉄…満西橋…?」

玲花は壁に書いてある文字を読み上げた。

他に幾つかの文字が書いてあるが、掠れてはっきりとは読めなかったが、

ここが古い地下鉄の駅だということだけはわかった。

 突然、遠くから ゴォおおおおおおおおおという大きな音とが聞こえる。

 どこか近くを列車が通ったのだと感じた。

巨大な唸り声のような音は玲花にあの化け物を連想させた。

また、不安になり走りろうとした。

「いや…」

玲花は動かそうとした足が硬直する。

この感覚…

いる…

玲花は後退りする

後ろを振り返ると幾つもの道があり、自分がどこから来たかがわからなくなっている。

「あぁ…嫌だ…来ないで…」

足音がする。

べちゃべちゃという濡れたタオルを床に叩きつけるような音が近付くと。

だんだんその姿が露わになる。

携帯のライトに照らされたそに化け物の体表はドロドロの粘液のような物に覆われていて。

肌は青白く。体毛などは一切生えていなかった。

人型で、痩せ細った人間のような姿をしている。

「あ…いや…」

声にならない悲鳴が響く。

化け物の周りに何か黒いモヤのようなモノが掛かって見える。

化け物はそれを吸い込むような仕草をとった。

心なしか、それを吸い込むだけ、その化け物は大きくなっている気がする。


化け物がどれだけ吸ってもモヤは晴れない。

玲花はあることに気づいて

恐る恐るモヤの続く先に目をやる。

モヤがさらに濃くなる。

モヤの発生源は他でもない彼女自身であった。

「うそ…」

玲花少しずつ後退りする。

玲花に合わせるように化け物は前へ。

「死にたくない」

玲花はその化け物に背を向けて走り出す。

暗い道を足を滑られそうになっても、転ばずに走り続ける。

泣き出しそうになった、目からはもう涙が溢れていたのかも知れない。

それでも走った、走り続けた。


古いレールにのような物に足を引っ掛けてしまう。

「あ…」

玲花はその場で転んでしまう。

起きあがろうとした時、レイカは後ろの化け物が自分の後ろにピッタリくっついていたこと、いつでも自分を殺すことができたことに気がついた。

のっぺらぼうのような化け物顔に亀裂が入り、やがてそれが顔のようになる。

「おおおおっかえりいいい?」

化け物が喋る、何を言っているのかさっぱりわからない。

でも玲花にはわかってしまった。

化け物は手を結んで開いてを3回繰り返す。

その動作は玲花の母親がよくやる仕草だ。

「こんなのじゃない!!」

玲花は途端に後ろを向き、足に力を入れたが、足に力が入らない。

化け物が両手を広げ、玲花につかみかかろうとする。

「危ない!」

遠くからバールのような物が飛んでくる。

赤く発行したそれの先端は。

クリティカルヒット

化け物の頭部を引き裂いた。

向こう側に二つの灯り。

 懐中電灯のものと、怪しく輝く光。

玲花はわっと泣き出す。

懐中電灯の光に向かって飛びつき、それを抱きしめた。

 

「おぉ…すっかり懐かれちゃってますね」

全く空気の読めてなさそうな少女が言った。

「あはは…」玲花が抱きついた男性が苦笑いをした。

 彼は浩一だった。玲花は彼の顔を見て一度手を緩めたが、

再び玲花は彼を強く抱きしめながら泣き続ける。

いくら泣いても足りない気もしたが。

「おつかれ…怖かったね」

男が言った。

「今は…帰ろっか」

男は玲花を背負い歩き出した。

「そう言えばその娘、もう葵にはあったの?」

男と共に来た少女が聞いた。


 



どうもサヨツーです

1話からだいぶ雰囲気を変えて。

「得体の知れない魔法少女の世界」に足を踏み入れ始める玲花ちゃんの物語です。

お家に帰ろうと思う玲花を表現する上で、芥川龍之介先生の「トロッコ」を参考にしてみました。

まだ始まったらばかりですが、これから色々なことに巻き込まれるであろう玲花ちゃんをよろしくお願いします

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