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  作者: ロッドユール
7/9

 もう幾日が経ったろうか。年も月も曜日も、そんな感覚が、もう私の中から消えていた。数字すらが存在せず、その意味を失っていた。

「・・・」

 私は穴の中に居続けていた。

「・・・」

 時間の感覚がなくなっていた。というか、時間そのものが世界から消えていた。

 時間がないということは、同時に時間が無限にあるということでもあった。いつも時間に追われイライラし焦っていた私を、膨大で広大な時間が溢れるように満たしていた。あれほどに日々、何かに常にイライラし、何かに苛まれていた自分が嘘のようだった。こんな世界があること自体、私は知らなかった。

「・・・」

 雨が降って来た。ぽつぽつと当然のように私は濡れた。しかし、そこに苦痛はなかった。喜びさえ感じた。それは自然なことだった。植物が雨に濡れるように、大地が雨に濡れるように、それはただただ自然なことだった。ただそういうことだった――。

 雨が降り、風が吹き、太陽が照る。自然の流れ、自然の動き、自然の変化、それは太古の昔から繰り返されてきた自然の営みだった。人間だってそんな存在だった。他の存在と何も変わらない。そんな存在だったのだ。

 自然の中で、すべての存在と一体として生きていた。それがいつの間にか、自分たちだけがその中から遊離し、自分たちは特別な存在だと錯覚し始めた。

「・・・」

 そう、錯覚・・。


 また何かが穴の底を覗いていた。私はそれを見る。それは真っ黒い猫だった。その丸い頭が、穴の端から顔だけを覗かせ、穴の底の私をじっと見つめていた。私もそれを見つめ返す。

「・・・」

 私たちはしばし、お互いを無言で見つめ合った。

「・・・」

 猫はただ無表情に私を見つめていた。

「・・・」

 猫は鋭く縦細くした目で私を捉え、見つめ続ける。

「・・・」

 猫が見つめる先に――、しかし、私はいなかった。

「私・・」

 私とはいったい――、なんだったのか・・。私は私を見失う。その時、一瞬めまいにも似た渦が、私を襲う。

「私は・・」

 私は一体・・。

「・・・」

 気づくと猫はいなくなっていた。

「・・・」

 私はその猫の頭の出ていた場所を見つめた。

「・・・」 

 その時、何かが分かった気がした。でも、何が分かったのかは分からなかった。

「何か・・」

 それはとても大切なことのような気がした。

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