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  作者: ロッドユール
4/6

「・・・」

 一日が経っていた。

「・・・」

 私は穴の中にいた。

 不思議なことに、まったく空腹感がなかった。というよりもむしろ満たされた感覚があった。水すら飲みたいと思わなかった。

 刺激的なものは一切なかったが、安穏なゆったりとした感覚が常に私の心を満たしていた。

「・・・」

 私は、ぽっかり空いた穴の入口から見える空を見つめていた。

「・・・」

 私はただ空を見つめていた。そこに思考はなかった。私はただ空を見つめていた。そこには空があり、その下にそれを見つめている私がいた。それだけだった。

「・・・」

 私は一体本当にどうしてしまったんだ。どこかほわっとした頭で、私は考えた。しかし、そんな問いすらがどうでもいいほどに、何か不思議な感覚がずっと私を包んでいた。

 なんだろうこの感覚。初めて味わう感覚だった。言語化し難い、いや、できない感覚だった。

 安心感。その言葉がまず浮かんだ。とても、大きな、というか広大な規模の安心感。私の体すらも超えた広大で壮大な安心感。でも、それでいてそれほどはっきりしているわけではない。どこかもわっとしていて、ふわふわとした感じ。穏やかでふんわりと胸の内を流れていくような感覚。 

 本当に幼い頃、こんな感覚を味わっていた気がする。幼い頃、本当に小さな頃、物心がつく前――。

「・・・」

 何か堪らない懐かしさが込み上げる。確かに私は、こんな感覚の中で生きていた。それを私ははっきりと思い出す。

「・・・」

 私は堪らない思いに満たされていた。忘れていたあの感覚。私はその中にいた――。

 毎日毎日をただ生き、なんの憂いも悩みもなかった、あの純真な日々――。


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