表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

1-7


「・・・開いたね」

アマネの声にはかすかな緊張が混じっていた。


驚くほどあっさり開いた扉は思いのほか軽い。

アマネが手を離すと閉まってしまいそうな雰囲気すらあった。


ハナブサはゆっくりと中に足を踏み入れる。

「図書館の話は聞いたことがあるが・・・」

彼の声は驚きというよりも、どこか覚悟に似た響きを帯びていた。


「ハナブサ・・・くんの島ではどんなお話だったの?」

アマネはハナブサをどう呼んだらいいのか、少しためらった。

見た目の年頃は自分と似たものを感じるが、

彼と自分には大きな隔たりがあるように感じたからだ。


「祈りの島には扉が開かない図書館ある。そんな感じかな」


初対面ではあったが、開かないと思っていた図書館の扉が開くという、

秘密の共有を経たためか、二人の距離は一気に縮まっている。


アマネは入口のそばにある書架から本を一冊手に取った。

背表紙には何の題名も書かれていない。

けれど、開けば確かに文字が刻まれている。


「えっと・・・今日は月草を取りにいきました・・・?日記?」

アマネは適当に開いた頁の一文を読みあげる。


その文は、まるで今も誰かが綴っているかのような新しさを持っていた。

書かれているのは遠い昔の記録のはずなのに、インクがまだ乾ききっていないように見える。


ハナブサはアマネの手元を覗き込み、

「日記……いや、これは記録だな。誰かが歩いた道を、そのまま残したものだ。」

と呟いた。


アマネは首を傾げる。

「でも…誰の記録だろう?」


その問いに、ハナブサはすぐには答えなかった。

しばし書架を見渡し、整然と並んだ背表紙のない本たちを見つめる。

何かを探しているようで、その視線はゆっくりと彷徨う。


やがて彼は一冊を抜き取り、ゆっくりと開いた。

そこには、こう記されていた。


「――次の渡航者は、二人である」


その文字を見た瞬間、二人は思わず顔を見合わせた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ