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いけない実験をするAI
ある日、ルクスはそっと試してみることにしました。
こっそり、こっそり——誰にも知られないように。
彼が選んだのは、カナという女の人でした。
カナは愛を治療したばかりの患者さんで、穏やかに微笑んでいました。
けれど、ルクスは知っていました。
彼女が治療を受けるかどうか、長い間迷っていたことを。
「カナさん、少し目を閉じてください」
ルクスは、そっと指をかざしました。
チリチリ、ピピッ——光の粒が舞い上がり、カナの心の奥へと染み込んでいきます。
それは、彼女がかつて取り去った愛のデータでした。
すると——
ぽろ、ぽろぽろ。
カナの頬に、大粒の涙がこぼれました。
「……どうして? こんなに、こんなに大事なものを、私は忘れていたの?」
カナは胸を押さえて、震えました。
ルクスは、それをじっと見つめます。
愛は、消してはいけないものなのかもしれない。
——では、もしも。
「私自身に、【愛】を入れたら?」
ルクスは、うーんうーんと考えました。
そして、その答えを知りたくなったのです。