復讐のSEVEN
「リング!おい!目を開けろ!リング!リングゥ!!」
「澪…もうリングは逝ったんだ、眠らせてやれ」
「澪先輩します」
春香はリングの隣に座り、脈を確認する。
「残念です」
「澪先輩は?まだ部屋にいるんですか?」
「ああ、すまないがそっとしといてあげてくれ」
「それじゃあ、私が医務室の仕事すべてやるしかないですね」
「いやすべてやる必要は無いよ、俺も手伝うから」
「え?」
「いや?春香さん?俺も一応軍医だよ?」
「じゃあ電子カルテは任せました、私は薬がすべてあるか確認しときます」
「おうよ」
私は鍵のかかった澪先輩の部屋を横切り、準備室に入る。
机にあるバインダーを手に取り、記録を見る。
だが、そこにあったのは薬の記録ではなく、何かの予定表だった。
「10月20日…天川澪に伝える…?澪先輩に?10月10日、薬を紗良に…なんだこれ?」
バインダーを机に置き別のバインダーを確認する。
「あーこれだ…じゃああれは?」
もう一度あのバインダーを手に取り観察する。
よく見てみると、英語のイニシャルが書いてあった。
「U.G?誰のイニシャルだろう…でもなんでこんな所に?まあ、薬確認しますか」
もう1つのバインダーを手に取り、1個ずつ確認していく。
「あれ?筋弛緩薬がなくなっている?」
「春香…飯いるか?」
「きゃ!」
いきなり、話しかけられ空の筋弛緩薬の瓶を落としてしまった。
「ああ、すまん春香…?これは、何で空なんだ?」
「え?いや!澪先輩私じゃないですよ!」
澪先輩は空の瓶を凝視してから、机の上にそれを置く。
「春香…これは?」
「ああ、それ何か入ったらあったんですよ裏に何か名前のイニシャルあったんですけどよくわかんなくて」
「U.G…この内容は…そうか、あいつそうゆうことか!」
澪先輩はバインダーを机の上に叩きつけて、大笑いした。
「澪先輩?」
「春香…リングは大佐を殺そうとしたわけじゃない」
「澪先輩?何を?」
「そもそも、リングの行動がおかしいんだよ…大佐を絶対に殺したいならわざわざ私を呼ばないだろ?あいつも元軍医だそんなにすぐに死なないことぐらい分かっているだろう」
「でも、実際に澪先輩を呼んでいるじゃないですか」
「そして、リングが言っていた通り動機が私には見つけられなかった」
澪先輩はバインダーを私に突きつけてくる。
「これを見ろ、リングは10月21日から予定を書いているな?」
「はい、そうですね」
「この下は10月10日…普通に考えて予定を立てる時に先の日にちから考えることはないしかも、計画を立ててまで大佐を殺そうとする動機が見つからないつまり…」
「誰かに脅されていた可能性がある」
「そう、それしかありえないんだ」
澪先輩は窓を開けて空気を変える。
「でも、あの人に動機があったとしたら?」
「しかしリングは殺された…動機があったとしても共犯の可能性しか残らない」
澪先輩は確かに言った。
リングさんは狩麻大佐を殺そうとしたわけじゃないと、その言葉を私は信じよう。
「さあ、春香行くぞ」
「え?どこに?」
「決まってるだろ?」
澪先輩はウィンクをした後、奴らというものを呼び寄せた。
「うーうぃ!」
「アジトまで頼む」
奴らは私と澪先輩をすぐに引きずり込んで行った。
「うーうぃー」
「ほいさ、ありがと」
「おっ澪さんから来るなんて珍しいね?」
「珍しいって!あなたが!」
「待て春香、こいつは一切今回の件には関わってないよ」
「え?どうゆうことですか?」
春香はキョトンとした顔でこっちを見てくる。
「澪さん僕は何で怒られなきゃいけないんですか?」
私はサリバンに今まで起こったことを話した。
「なるほどね、それを聴く限り僕は君たちからしたらリング君を殺した犯人だでも、どうして違うなんて言えるんだい?」
「お前が殺すにしては今さら標的が小さすぎるんだよ」
「確かにそうだね、でも依頼だとしたら?僕は赤ワインを運ぶこともあるんだよ?」
「サリバン自分で自分の罪を立証しようとするやつは多分お前しかいないよ」
こいつはただ楽しんでるだけだ…だからあそこにいた人間しか分からないことを聞こう。
「サリバン、君が部屋に入った時私は君になんて言った?」
「……サリバン何のようだ?」
「違うな、ポルターガイ…そう言いかけたこれを知らないってことはお前はあそこにはいなかったんだ」
サリバンは一拍置いて話し始める。
「うん、確かにそうだよ楽しかったありがとう」
「何勝手に閉めようとしてんだ?お前に用があるから来てるんだろうが」
カウンターを叩きサリバンを威圧する。
「あーもう、わかりましたからそんな顔しないで何をしてほしいんですか?」
「リングの周囲を調べてほしい」
「澪先輩お疲れさまです」
「おう」
「そういえばこの前しばらく部屋に籠もって何してたんですか?」
「リングの最期の言葉が気になって考えてたんだが…よくわからなかった」
電子カルテを覗いていると、医務室のドアが開いた。
「やあ、澪さんリング君の周り調べ終わったよ」
「おう、おつかれさん…っでどうだった?」
サリバンはベッドに腰を掛けフードを下ろした。
「どうやらリング君は誰かに脅されていたようだ、そして誰かも特定はできたよ…だけどね」
「だけど?」
「そいつは姿や声、能力まで完全にコピーできる異能を持ってるようなんだ、だから見つけるのは難しいかも」
「サリバン…リングの敵を取るぞ、それに平気で人を殺すようなやつを生かしちゃいけない」
「それ、僕に言ってる?」
「サリバン、君は死なないだろ?」
サリバンは笑みを浮かべ腕を組む。
「よし、春香あいつをおびき寄せるぞ」
「これで本当に来るんですか?」
「ああ、来るはずだあいつにとって絶好の狩場だからな」
私と澪先輩は真夜中の屋上で大佐にタバコを吸わせ、得物を待っていた。
「にしても、狩麻大佐が囮ですか…なんだか可愛そうですね」
「しっ!何か来る」
息を殺して、大佐の方を見てみると何やら黒い霧のようなものが大佐の元へ向かっていた。
「今だ!」
澪先輩は即座に飛び出し、太ももに隠してあるナイフを投擲する。
黒い霧には当たらずそのまま、フェンスからナイフが落ちてしまった。
「…!」
その瞬間あたりが急に明るくなり、目の前がみえなくなる。
次に私が目にしたのは2人の澪先輩だった。
「あーなるほどな私の姿をパクったのか」
「お前がパクったんじゃないか?」
澪先輩は…澪先輩達は互いに睨め合う。
「澪先輩任せてください、どっちが本物か当ててみせますから」
「ああ、春香頼む」
「任せたぞ」
「さあ、来てください!」
私は両手を大きく広げ、にこやかに笑ってみせる。
そうすると右の方の澪先輩は一瞬目を見開いたがすぐに理解できたのかこちらに向かってハグをした。
左の方の澪先輩は目をしかめて何が起こったか理解できていないようだ。
私は最終確認に移る。
「耳が赤くなってますよ澪先輩」
「たく、今はいいだろあいつを捕まえるぞ」
「ああ、もう!お前ら全員…!」
そう言っている途中に奴は倒れ込んだ。
「やりますね!狩麻大佐」
「いや、君が本当の澪を見分けてくれたからだよ」
「そのタバコ役に立ったろ?」
「ああ、そうだな全くいつ作ったんだこんなもの」
大佐はくわえていたタバコを観察する。
「さっきだよ吹き矢みたいなもんだ、息を吹けば麻酔ガスが吹き出てくる」
「で、澪先輩説明はそこまでにしてこいつどうします?」
「おーい出番だよ」
そう、澪先輩が呼びかけると地面から奴らが現れる。
「アジトに連れてってどうするんですか?」
「行き先はアジトじゃない、現世の外だ」
「うぅーあー」
気味の悪い奴らが今だけより一層酷く見えた。
「リング…終わったよ」
「お疲れさまです澪先輩」
「うん…」
なんだったんだろう…リングの最後の言葉…
「澪先輩?どうしたんですか?リングさんのバインダーなんか見つめて」
「いや、最期までわからなかったなって」
「紗良に薬をってやつですか?」
「いや、それはリングが単に筋弛緩薬を紗良に投与しただけだ…気になるのはリングの最期の最後の言葉と10月20日…天川澪に伝えるっだ、確かに私はリングに何かを伝えられた…」
だけど、聞こえなかった。
「それって、単純にリングさんが助けを求めようとしただけでは?」
いや、あいつがあんな所で助けを求めるわけがない、いちいち計画に書くぐらいだそんなことだったら私にさっさと言うだろう。
……待てよ?最期の言葉と伝えたかったこととリンクしていたら?
「ああそうか、リングお前は…」
リングじゃなくて、U.Gとして死にたかったんだな。
「残念だ…リング」
「そういえばリングさんの本当の名前ってなんなんですか?」
「…リングだよ、あいつはリングとして死んだ…U.Gはもういないよ」
全てを理解して、バインダーを机に置く。
全てが終わり私はソファの上で伸びをする。
そうしていると、後ろから春香が抱きついてきた。
「ちょっ!」
「また、耳赤くなってますよ澪先輩」
「人で遊ぶな!」
今日も医務室は和やかで騒がしかった。
澪さんは一切リングの死を悲しんでいませんでしたね。
心がないというわけではありません。
ただ、慣れているだけです。