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記憶の悪魔 STORE NIETEEN

あの記憶を克服して私に弱点がなくなった時、私の進化も希愛の進化も止まり、破滅の道も閉ざされる。

「そうだよな?佐倉さん…」

腕の中の本は少し、生きているかのように震えた。

「澪さん!落ちますって!」

「しっかりつかまってな!」

まだ寒い、この空の上を飛ぶのは危険か。

「ほっ!すまないね!」

私は、ナイフをさらに大きくし希愛が落ちないようにしっかりと固定する。

「これでいいか?」

「はい!もう離しませんからね!絶対に!」

希愛は私の胴体をしっかりと掴む。

私は、ゆっくりと降下し着地する。

「希愛いつまで引っ付いてんだ?」

「空中であんなに飛ばすんですもん!!あんなに怖いんだったら“奴ら“に運んでもらったほうが良かったですよ!」

「お前がこれでいきたいって言ったんだろ?ほらついたぞ」

私は、抱きついている希愛を気にせずカフェの中に入っていく。

中に入った瞬間あの光景がフラッシュバックする初めて佐倉さんに連れてこられた時のあの光景が…

「はぁ!」

私は一瞬苦しくなり、頭を抑える。

「澪さん!?」

「大丈夫だ、行こう」

私の後ろの希愛を横に移動させ、奥にあるピアノに一緒に座る。

「そういえば、希愛は記憶のピアノを使ったことがなかったな」

「はい…そもそもピアノも演奏したこともないです」

「このピアノは、普通じゃないただ私についてきたらいい」

「ついてくるって?」

「私がまず、鍵盤を弾き始めるそうしたら、頭の中に一筋の光と共に道が現れる。その道を進んでいれば自然と体が鍵盤を弾き始めるんだ、あの世界についたら私がリードするよ、未来の記憶にいくよ!」

「はい!」

体とピアノが合体したような錯覚に囚われる、この感覚だ!

懐かしい落ち着いたメロディ…

気づくと私は、光さす道にいた。

「希愛今行くからな!」

私は走り出し、光の中に飛び込んでいく。

目が慣れていく。

「毎日、あなたのことを思っているの」

これは…歌?

でも私にこんな記憶は…

「インクはただ黒く滴り落ちて」

これ…希愛の声だ。

私は目の前にあらわれたドアに手をかけて中にはいる。

「希愛?」

ここは、希愛の家?だとするならば私の記憶ではなく希愛の記憶に来てしまったのか?

部屋には、希愛だけがいて色の濃い夕日が窓から差し込んで、随分と調律されてないようなピアノの音が響いていた。

ピアノは弾けないんじゃ?

希愛は私と目が合うが気にせずそのまま歌っている。なるほどこいつは、希愛の記憶の一部か。

私たちは記憶を当然認知できるが記憶は私たちを決して認知できない。

できてしまったら、記憶の内容が変わってしまうからだそうだ。

「一人で、記憶のピアノに入るのは少し危険だ早く探そう!」

部屋から飛び出した私は階段を駆け下りる。

この家は結構メルヘンな家具や色をしており、パンケーキの匂いがすごく似合いそうな風景を醸し出していた。

「希愛!いないのか!?」

一階のリビングの扉を開けて、私はそう叫んだ。

しかし、そこに人の影はなく、ただオレンジ色の薄い夕日の光が薄暗い部屋に差し込んでいた。

「誰もいない…どこだ?私とは、そんなに離れていないはずなんだが…」

私はそっとリビングの奥に進む、すると食卓の方にラップのかかったショートケーキととっくに冷めているであろうコーヒーが置かれてあることに気がついた。

「希愛の好物は、ドーナッツのはずだが?わざわざショートケーキを?いいやそんなことはどうでもいい!」

私は念の為、キッチンも散策することにした。

「まあ、当然ここにはいないよな」

しかし、なぜかここは他の所より暗かった。

「きっと、認知が薄いんだろう…じゃあ、ここに希愛がいる可能性は少ない……どこにいる?」

記憶のピアノで映し出されるのは、その人が重要と思ったストーリーの一部…

本人が重要だと、思わない記憶の部分はこのように暗くなったりする…逆に重要な部分は色が濃くなり印象的に派手になる。

今まで、巡っていて派手だった場所?

希愛の部屋だ!あの部屋はここと違って夕日が差し込んでいてもオレンジ色が強かった。

私はリビングを飛び出て、2階へ駆け上がる。

そして、希愛の部屋に飛び込んだ。

「希愛!!」

「………はぁ……はぁ…」

そこには、信じられない光景が広がっていた。

「希愛?おい!希愛!」

「澪さん?」

そこには、血まみれの希愛と横たわる希愛がそこにいた。

「良かった、記憶の方か…希愛一旦戻ろう?」

「はい……疲れました」

私は、希愛の肩を掴み立ち上がらせる。

「………妹が…」

「妹?お前に妹がいたのか?」

それじゃあ、あの歌っていたのは希愛ではない?

「……はぁ…」

「落ち着いてくれ、さあ目を閉じろ」

ドアノブに手をかけ、私たちは外に出た。

…………

目を開けると、記憶のピアノの前にいた。

隣の希愛は眠っている、どうやら疲れているようだ。

私は、希愛を抱えてソファーに置いて、白衣をかけてあげる。

「さて、私の問題だ…私が解決しよう」

再び、ピアノの上に座り正面に向かう。

希愛が気になるが、やるしかない。

…………

「ついたか」

過去に遡り、私の恐怖に打ち勝つんだ…まずはあの時。

「リング……いや、楽羽…私はお前に向き合おう」

指にはめられた指輪を見る。

次の瞬間私は、大佐の部屋にいた。

「ここからか……サリバンに化けた奴を消せば楽羽は救われる…」

私の前には、楽羽、希愛、大佐、同期、この全員だった。

「ポルターガイ…サリバン?何故ここに?」

サリバンは、笑顔を浮かべ部屋の中央に立つ…

「やだなー澪さん、僕の職業忘れちゃったの?」

させない!

偽サリバンに近づいた瞬間、彼はいつもの笑顔を浮かべる堕天使ではなく、闇に包まれた何かになった。

ピアノの時もそうだった!これを殺せば……私の恐怖は消える!

「はっ!」

メスを、闇に向かって投げるが当然のように吸い込まれた。

「これじゃあ、命中したのかもわからない!」

その時、闇から投げたナイフが跳ね返ってくる。

それを、なんとか力で受け止め宙浮かすがどうにもこいつは殺せそうにない…

そうだ!本がある!

私は白衣に入れていた本を取り出し、ページをめくる。

「闇を掻き消す方法…何かないか!?」

回復…透明化…未来視…変身…だめだ、何もない…

「ああ!もう!突っ込むしかねえ!」

私は、死ぬ覚悟で闇の中に突っ込んだ。


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