悪化のFIFTEEN
駄目だ…能力の差がありすぎる。
「どうした?逃げてばかりで攻撃しないのか、まあ、したところで時を巻き戻してやるがな」
こうなれば、巻き戻す前に影うちをして一撃で決めなくては…
「はっ!」
ナイフやメスをわざと外し、時を巻き戻されないように罠を張る。
「どうした?集中力でも切れたか?」
「……」
私は、最後のナイフを取り出し自分の首に刃を当てる。
「ついに、諦めたか」
諦めなんかするものか……希愛を殺させてたまるか。
こうすることで、私に注目させる、その隙に。
「もらった、前頭葉!」
男は、自害しようとする私に集中していたのか無防備な男の前頭葉に私のナイフが直撃する。
思考を司る前頭葉をやったのだ、これでもう自分の意識で時間を戻すことも、動くことすらできまい。
「やったか?」
男は何も言わず、その場に倒れた。
私は、男が倒れた後、無数の刃を首や心臓に刺しスマホを取り出す。
サリバンに連絡を飛ばす。
「もしもし、澪さん?」
「奴らをよこしてくれ」
「もしかして、澪さんも異能使いに襲われたのかい?」
「私もって、お前もか?」
「ああ、不思議な術を使うやつだった。攻撃してたら時を戻されてね」
私の戦ったやつと、同じ能力?
「私もそいつと戦ったぞ!?一体どういうことだ?」
「……もしかして、奴はいろんなところにタイムスリップしすぎてこの時空に大量に存在するのかも…嫌な予感がする!澪さん今春香さんと一緒かい!?」
「大佐の部屋に奴らを!私は部屋に戻る!」
私は、ナイフが大量に刺さっている死体を置いて、大佐の部屋から飛び出た。
自分でも恐ろしくなるほど、早く部屋に着いた私は部屋に鍵がかかっていないことに気がついた。
「クソ!鍵がかかっていない時まで遡りやがったな!希愛!!」
部屋の鍵を開けた。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
「希愛?」
「はぁ…はぁ…澪先輩?こいつ、なんなんですかぁ?」
なんと、希愛があの男の首根っこを掴んで持ち上げていたのだ。
「希愛、一体どうやって?」
「いきなり部屋に入ってきて、首絞めるものだから。考える気力も、なくなるほど生命エネルギーを吸い取ったんです」
あいつは、生命エネルギーを吸い取られていることに気づかなかっただろう。
男の体は宙吊りの状態で、力尽きて腕は垂れ下がっていた。
そうだ、ここにも奴らをよぼう。
「ヒューー!!」
「え?今何やったんですか?」
「何って、奴らを呼んだんだよ」
指笛を吹くとすぐさま、男の足元から奴らが現れてせっせと男を連れて行った。
「なんか、今日の奴ら忙しそうでしたね?」
「まあな、今日で三人目らしい」
「三人!?」
「ああ、サリバンと私と希愛で3人だ。全員揃って同じ異能、同じ奴に襲われてる」
希愛は腕を組み、不思議そうにする。
「それって、一体どうやって?」
「奴は、時間を自由に行き来できるらしい。そして、今時代に何人かいるらしい」
「それって、いったい何人ぐらい?」
「さあな、サリバンが調べてくれるんじゃないか?まあ、まだ居るかもしれないからしばらくの間一緒にいよう」
どうやらもう、希愛は男の生命エネルギーで回復しているようだ。
私が、椅子に座った時。
ポケットの中のスマホがバイブする。
液晶画面を見てみるとサリバンからの電話だった。
「どうした?」
「澪さんとてつもないことになった。残りの男が、僕たちをけしかけている」
「はぁ、まあ能力も分かってるし…」
「それはそうなんだけど、この時代の男全員倒さないとね…」
サリバンと話していると、廊下から口笛が聞こえてくる。
「澪先輩、なんですかこの口笛?」
「さあ?見てみるか」
私は、ドアを開けてライトで廊下を照らす。
だんだんと、足音と口笛の音が大きくなっていく。
「おいこれって?」
「ですね」
「澪さん!男を全員あちらに送らないと世界の時は止まったままだ!」
スマホから、サリバンの声が響く。
スマホのライトが男にあたる。
「貴様らこの空間で動けているということは、異能使いだな!」
「クソ!希愛!離れてろ!」
男は目を見開き、こちらに接近してくる。
身体能力は普通の人間…そして奴は攻撃されると時を巻き戻す。
ならば!
「はっ!」
私はナイフを男に向かって投げた。
そうすると予想通り、また手元にナイフが戻ってきた。そして、私の位置や男の位置も巻き戻っている。
「巻き戻してばかりいると、一生私のところに辿り着けないぞ!」
希愛や私を襲った時こいつは素手だった。
つまり、今もこいつは飛び道具は持っていないはず!
人間に同じ動きはできない!
また同じ手を使ってみるか…
「はっ!」
私は、わざとナイフを外し奴を誘き寄せる。
「ついに外したな!」
予想通り、奴はこっちに突っ込んできた。
そして、私の首を絞める。
喉からヒューという音が通り抜ける。
不思議と痛くはなかった。
「澪先輩!」
このこえは、希愛?
そうか、希愛は私が罠を張っていることに気づいていない!
頭が真っ白になっていると、後ろから希愛が私に抱きついた。
その瞬間、息ができなくなっていたが不思議と苦しくなくなった。
希愛が生命エネルギーを私に!
「ゃ…め…」
もう、失いたくない!
私はそう強く願った。
そうすると、自然と手が男の額に伸びる。
次の瞬間、私も予期せぬ事が起こった。
「澪先輩!?」
「?」
手のひらからいつものあの感触が伝わってきたのだ。
メスも持っていないのに…人を切るあの感触が。
次の瞬間、首を絞めていた手が離され、私は自由となった。
「澪先輩…それ…」
希愛は私の手のひらを指をさす。
「あ……これは…」
私の手のひらから生えていたものそれは、無骨なサバイバルナイフの刃だった。
今度は私が進化してしまった…
このままじゃ…希愛が……
冷たい廊下にライトが灯る。
これで、最後だったらしい。




