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1.始まりとこれから

私は驚き咄嗟に声のしたほうに振り返り、固まってしまった。

急に声をかけられたのもあるが、相手がネットフェンスに引っかかり逆さまの状態で話しかけてきたからだった。

黒い革ジャンにジーパン、昔のバンドマンを思わせるような服装をした女性がこちらを見ていた。

「お嬢さん?おーい」

目の前にいる女性は逆さまのままフリーズした私の前で手を振っていた。

「あ、は、はい!」

「すまない、一度助けてもらってもいいかな?」

そういい彼女のズボンについているチェーンを指差した。

どうやら、ズボンについていたチェーンがフェンスに引っかかっていたみたいだ。


「いや〜ありがとうお嬢さん、助かったよ」

「いえ、それは別に大丈夫なのですが…何故あんなことになっていたんですか?」

私はさっきまで彼女が引っかかっていたフェンスを見ながら言った。

「あぁ、それね…」

彼女は恥ずかしさを誤魔化すように頭をかきながら話した。

「壁の前で何かを広げて止まってる人がいたから、フェンスを飛び越えて話しかけようとしたら…」

「引っかかってあんな状況になったんですね…」

そこで私はふと、彼女の言った事が引っかかった。

私は細い道を歩いていたのに彼女は壁の前でただ立っていたと言っていたのだ。

それが気になり、私は後ろを振り返る。

そこには道はなかった。

彼女の言っていた通り、ただ建物の壁があるだけで周りを見渡しても私が先ほどまで歩いていた道なんてなかった。

そういえば途中から地図なんて見ていなかった気がする、少し前の話なのにどうやってここまで来たかも定かではなくなっていた。

ただ、その時は迷いなく歩いていた気がする。

最初からその場所を知っていて、そこに向かおうとしていたのではないかと思ってしまうほどに。

そう考えているうちに少し怖くなり、私はそのことを考えるのをやめた。


私は彼女の方に向き直した、そうすると彼女は何かをメモしていたようで羽ペンとメモ帳をポケットにしまった。

「そういえば、自己紹介がまだだったね」

「名前は付世御 空(つくよみ そら)、よろしく」

そう彼女は名乗ると右手を出してきた。

「ルナ・スコープです、よろしくお願いします?」

そういい私は彼女の手を握り握手をした。

その時だった、彼女の服の中から突然1匹のネズミが出てきて彼女、ツクヨミさんの肩に乗った。

「きゃぁ!」

本日何度目の驚きだろうか、私は急に出てきたネズミに驚き悲鳴をあげた。

「おっと忘れてた、コイツは旅のお供のチュウ助さんだ」

そのネズミを指差し私に紹介した、後に聞いた話だけどネズミは全世界で人気だから連れているらしい。

そういうのは詳しくはないけど、基本デフォルメされたものなのではないだろうか。

例えばそう、電気を使ったり赤いパンツを履いたり。

「で、ルナはどこに向かってるんだ?」

自己紹介を終えた彼女は話を戻し私に聞いた。

「あぁ、そうでした…ピタヤというホテルに向かってる最中なんですが道に迷ってしまいまして」

私は少しネズミを警戒しながら事情を話した。

「ふむふむそこか、わかるから案内してあげるよついてきな、C地区は道が入り組んでるからね」

「あ、でもちょっと待ってて、荷物取ってくるから」

そう言って彼女はネットフェンスの向こう側に行き荷物を取りに行った。

あまり見ていなかったせいで気が付かなかったが向こう側は公園だったようだ。

「お待たせ、それじゃあ行こうか!」

ツクヨミはギターケースを背負って戻ってきた、やはりバンドか何かやっているのだろうか。

「はい、よろしくお願いします」

そう言って私は彼女の後に続いた。

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