第九十七話「目指すはそう、ケイト・ソウゴウ・カガク・ダイガク~♪」
作者注:タイトルはTVアニメ『うる星やつら(2022年版)』のED主題歌として名を馳せた
MAISONdesによる楽曲『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ ( feat.花譜 & ツミキ)』のサビのリズムでお願いします。
読者のみんな、御機嫌よう。
近頃は更新頻度が落ちてるけどそれでも本作『つい☆ブイ!』に寄り添ってくれてありがとね~。
さて、前回に引き続き今回もこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが進行役を務めさせて頂くよ~。
「いや~、参ったねこりゃ……」
「よもやジョウセツが面会謝絶の状態とは思いもしませんでしたなァ。これが俗に言う『出端を挫かれる』といったような状況か……」
場面は東方の大国"陽元"西部の大都市"螢都"に建つホテル"コン・ボルーグ"の一室。
一通りの聞き込み調査を経てあたし達が得た情報は主に二つ……
『天瑞獣ジョウセツは住処の主懇山共々螢都の民と密接に関わり合っていて、元来明るい性格で殆どの相手に対し友好的。派手好きで派手好きで幅広く活動している』
『天瑞獣ジョウセツは近頃、何故か表舞台から姿を消し住処に籠もったまま他者との接触を拒み続けている』
……正直、圧倒的に不利な状況と言わざるを得ないだろう。何せあたし達の目的はジョウセツから魂絆証を貰うこと。
そして魂絆証の獲得には、各天瑞獣と強固な信頼関係を築くのが必須条件。つまり必然、接触出来なきゃ魂絆証も貰いようがないワケで……。
「うーむ、どうしたもんかね……場所は割れてるし、意地でも拠点に忍び込むぐらいのことはできなくもなさそうなんだけど」
「……あまり賢明な手段とは言えますまい。曲りなりにも事実上神格扱いされる存在の住処ならば、警備とて厳重な筈……。
我々の戦闘能力と不死性に任せて突破出来ぬとは断言しませんが、概ね割に合わんでしょう。
何より如何にジョウセツが何者にも友好的かつ寛容だとして、己が住処へ土足で立ち入る不法侵入者相手に心を開くとはとても……」
「ま、そうだよねぇ……」
とは言え諦めるわけにもいかないあたし達は、話し合いの結果一先ずジョウセツについてより深く調査を進めようって結論に至った。
相手について対面前から深く理解しておくのは友好的な関係の構築にとってプラスになるし、調査を続けていけば急に引き籠ってしまった原因も分かるかもしれないからね。
「今日の聞き込みは町の人たちに聞いて回ったけど、やっぱ言っちゃ悪いけどそこまで踏み込んだ情報は得られなかったし、次はその道の専門家を頼るのがいいと思うんだ」
「妙案かと思います。ただ、専門家と言っても何方を頼ればよいやら……」
ダイちゃんは不安そうに頭を抱えるけどその反応は当然だろう。
一口に専門家と言ったって色々いるし、概ねその手の人種は絶対数も少なければ多忙だったりするからね。
けどあたしはそこも見越して、既に目星をつけていたんだ。
『もし専門家を頼るとなったらこの人しかない』って候補をね……
「それなら心配ないよ。相手の候補は大方絞り込んであるからねぇ」
「ほう、それは何処の何方です」
「このホテルのすぐ近くで活動してる人だよ。ま、行って確実に結果が出せるかはわかんないけどね。
何せ向こうも暇じゃないだろうから、まず会えるかどうかって問題があるし。
ただ、その分実力派間違いないんじゃないかな。何せ――」
(州▽∀▽)< そして、翌々日! >(◎甘◎ )
「ほならね、ここにお名前と電話番号書いて下さいね。ほんで警備のもんに声かけられたらこの紙出したって下さい」
「わかりました。有り難うございます」
「丁寧な対応感謝致します」
聞き込みから二日後……あたし達はホテルの近所にある私大"螢都総合科学大学"を訪れていた。
「構内入るのに届け出が必要なのは何となく予想してたけど、まさか警備員から確認要求までされるとはねぇ」
「地球では考えられぬ程厳重なセキュリティに御座いますなァ。或いは軍事施設ならばそれほど厳しいのも理解できますが……」
大都市の常と言うべきか、螢都には幾つも大学がある。その殆どは大手の名門と名高くて、ここ螢都総合科学大学も例外じゃない。
「私立で名門……こう言っては何ですが今一ピンと来ませんなァ」
「あたしもそう思うよ。学生や職員の能力や人格は兎も角として、
学校法人そのものの地位や格式と言ったら大体、私立より国公立の方が格上……
必然、名門校だって国公立が多い傾向にあるんだけど、この螢都総合科学大学は私立じゃ珍しく国内でもトップクラスの名門と名高いそうなんだ」
「ほう、それはそれは……」
「序でに言うと"総合"科学ってだけに、科学と名のつく学問なら自然科学に限らず何でも学べる幅広さも特徴でね」
「なんと……つまりほぼ全ての学問について専門的に学べると?」
「そういうコトだねぇ」
一般的に科学って言うと、生物学・化学・物理学・工学・医学とかそういうのをイメージしがちだけど、
そういう所謂"学校の理科で取り扱う範囲"の科学は自然科学っていう限られた区分の内容に過ぎない。
実際の科学はもっと幅広くて、
物理科学や生命科学なんかの"自然に存在するあらゆるもの"を研究対象とする自然科学の他、
数学や統計学なんかの、自然科学とは対照的に理論ベースで研究を進める形式科学、
経済学、政治学、心理学から法学、経営学、教育学に至るまで文明社会のアレコレを研究する社会科学、
それ以外の語学、哲学、美学、倫理学、文学、芸術学から歴史学や考古学、民俗学等諸々の分野をひっくるめて言う人文科学
って感じで大きく四つ――自然科学を物理科学と生命科学で分けて考えるなら五つ――の分野に分かれてるんだ。
更にそれぞれの分野は純粋な真理の追究を主目的に据えた基礎科学と、より実用的な方向に知識や技能を活用する応用化学に分かれてる……
つまり実質、科学は八つ若しくは十の分野に分かれてるとも言えるワケで……
通常、人員や設備の都合から法人毎に専攻分野がある程度偏ってる傾向にある大学にあって、ここまで幅広く色々な分野を学べるってのは、素人考えだけどシンプルに凄いなって思うよ実際。
「してパル殿、今回この螢都総合科学大学にてお会いする方というのは……」
「あぁ、うん。太神将臣先生って言ってね。
専門は環境考古学なんだけど、文献史学や民俗学とか歴史学・人類考古学分野全般に詳しい方なんだ。
昨日アポ取ってみたら結構フレンドリーな方で、会えないかって相談してみたら快くOKしてくれたよ」
「ほう、それはそれは」
我乍ら何て運がいいんだろうと、その時はそう思ってたんだ。
けどなんだろう、やっぱり世の中そう上手くは行かないってのかね……"厄介事"は唐突に、真夏のゲリラ豪雨よろしく予期せぬタイミングで降り注いで来ちゃうんだ。
次回、思いがけない形でバトル勃発!