第九十六話「つまるところは太陽みたいな存在なんだと思う」
天瑞獣ジョウセツと螢都民の関係とは……
やほやほーぅ、読者のみんな御機嫌よーぅ。いつも本作『つい☆ブイ!』を読んでくれてありがとね~。
今回も前回に引き続きこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが東方は陽元西部の大都市螢都から愛しの七都巳大竜と一緒にお送りするよ~。
(州▽∀▽)< レッツ、聞き込み! >(◎甘◎ )
というワケで、あたし達は行く先々で第八天瑞獣"白煌聖獣 陽光のジョウセツ"と、彼女の住処である主懇山についての聞き込みを開始した。
「ほぉ~、主懇山か……ええやないか。ワシらも小さい頃よう学校の遠足で登ったもんや」
「ほう、それはそれは……主懇山に遠足、というのはこの辺りでは一般的なのでしょうか?」
「せやな。少なくともワシらん世代では普通やったで。
なんなら他の学校のもんと鉢合わせたりもしとったし、別々の学校が合同でっちゅうのもあったなァ」
「主懇山はウチら螢都の民にとって特別なんよ。他の山とは別格、言うんかねぇ……」
「それってつまり、天瑞獣の住まう聖地だからってことですか?」
「せやね。けど、それだけやないんよ? 古くから主懇山は、ジョウセツ様の存在が公に知られる前から山岳信仰の対象として神聖視されとったんよ。
近頃の研究によると、磁場とか地脈が結構特殊な絡まり方しとる上に地層も特殊やから、ジョウセツ様の存在抜きにしても世界的に珍しい土地らしくってねぇ……」
聞き込みを続けてわかったのは、螢都民は主懇山とジョウセツを心から愛し敬い尊んでるって事実……。
天瑞獣は総じて住処近辺の住民から尊敬・崇拝される傾向にあるとは知ってたけど、実際生きた当事者たちに触れたことで改めて実感できた感じかな。
幸いなことに主懇山は観光名所としても名高くて、山にしては環境も安定してるからか比較的自由に立ち入れるとのことだった。
……けど、問題が全く無いかというとそうでもなくてね。
「登山、ねえ……まあ普通に登るんやったらええんやないですか?」
ジョウセツへの接触に難色を示してきたのは、螢都の自治体で長年観光事業に携わっている旅行会社『雷管トラベル』を経営する安城社長だった。
「と、仰いますと……」
「読んで字の如く、ですわ。
普通に登山して……木の実採りとかキノコ狩りとか釣りとか、許可さえ取ったら狩りとかもできますし?
まあ規定は守らなあきまへんけど、とにかく普通に観光っぽい登山やったら特に問題はないんですわ。
ただ兄さん方、ジョウセツ様との謁見をお望みなんでっしゃろ?」
「ええ、かのお方にお目通り頂くのがこの旅の最終目的に御座いますからして」
「そこだけは絶対譲れないよねって、旅行の計画練りながら考えてたぐらいなんですよ」
「んー……すんまへんが、それはちっと難しいかもしれまへんなァ。
一昔前やったらまだしも、近頃はジョウセツ様もめっきり表に出て来られんようなってもうてますからなァ」
安城社長曰く、嘗てのジョウセツは主懇山への登山者や螢都に来た観光客との交流に積極的で、
麓の都市部へ降りてきては子供や若者に混じって遊んだり、国内外問わず各地へ赴いてテレビ番組やネット動画に出演したり、
果ては配下共々ヒト型種族に化けてアイドル歌手や役者として活動してた時期もあったらしい。
けどある時を堺に彼女はめっきり公の場に姿を現さなくなってしまい、主懇山への登山者が接触を試みても配下たちに追い返されてしまうんだそうな。
何故そうなったのか原因は不明だけど、安城さん曰く世間じゃ諸説あるようで……
「一番有力視されとるんは、政府機関との不仲ですわ」
「「政府機関との不仲ぁ?」」
「ええ。陽元政府、特に螢都の上層部いうたら、元来仕事せん癖してプライドばっか高うて古臭い考え方に囚われとる堅物の役立たずが多くてですね。
ジョウセツ様の民衆に寄り添う活動を『天瑞獣として相応しくなく素行不良。螢都ひいては陽元の品位を貶める』言うて遺憾の意を表明しとったんですわ。
とは言えそれでも民衆に見限られて支持率落としたないし、そもそも元々腰が重いしで、明確な行動起こすようなんはありませんでしたが……
いよいよ裏で何かしら仕込んでジョウセツ様へ圧力かけたんちゃうか、ちゅーて専らの噂でんねや」
勿論政府はその説を否定していて……どころかその件を経て流石に身に沁みたのか、今迄のジョウセツに対する否定的・批判的な態度を改めつつあるようだけど……
「その他、ジョウセツ様が出て来られんようんなった件には各方面から色んな仮説が出ましたけども……
結局どれも証拠不十分、ただの憶測止まりや言う話になってまうから……ともかく、ジョウセツ様への謁見はお勧めできまへんわ。
下手したら山岳警備隊に捕まってそのまま祖国へ強制送還まで有り得ますさかい……」
「そう、ですか……」
「ご助言感謝申し上げます、安城社長」
「いえいえ、此方こそ突っ撥ねるような言い方してどうもすんまへんな……ジョウセツ様にはウチの会社も実家も長らく世話になりっぱなしでしてな、
配下の方々共々仲良うさせて貰てますし、態々ビットランスから遠路遥々来て下さったお客様の望みはできれば叶えて差し上げたいのが本音なんですが……
こればっかりはどうにもね……はぁ……ホンマ、どないしてもうたんすかジョウセツ様……」
項垂れる安城社長の口ぶりは、彼を苛む深い悲しみと絶望をありありと物語っていた……。
次回、当然諦めきれない二人が向かったのは……