第九十三話「天瑞獣について学ぼう! 第四幕~"無限の稔りの確約者"と"白煌聖獣"編~」
さぁ、お次の天瑞獣は~?
読者の皆様方、毎度お世話になっております。
前回に引き続き冒険者の財王龍こと七都巳大竜が天瑞獣について語らい乍らお送り致します。
●第七天瑞獣『無限の稔りの確約者 豊穣のランディラ』
「天瑞獣の七番手は『豊穣のランディラ』だね」
「異名は『無限の稔りの確約者』……その特性から特に農業従事者の間で崇拝されておりますなァ」
第七の天瑞獣、豊穣のランディラ。
陸棲の天瑞獣としては首位に食込む程の屈強な体格を誇る重量級であり、純粋な体重体積に限ればデトネイションをも凌ぐとされます。
種族は長い年月を生きた動物が霊格を上げ魔力を高めた結果変異する精霊獣。
ランディラはその中でも特に神聖な力と縁が深いとされる箆鹿型であり、強大な力に纏わる逸話は枚挙に暇がありません。
「軽く検索かけただけで絶賛する内容の記事が目茶苦茶ヒットするから、ほんと慕われてるんだろうね」
「ええ。各所にて思慕・崇拝・神格化の対象となるのは最早天瑞獣の常に御座いますが、中でもランディラに対する民衆の熱量は凄まじいものがありますからなァ」
「やっぱ食べ物関係で恩恵があるってのが大きいんだろうねぇ」
そんなランディラの住処は、クロノコアトルの故郷を擁す大国カヴァナスの主要都市ロスタズ圏内に聳えるアルラン山、その全域に広がるマルゲリッツァ広葉樹林に御座います。
四季折々様々な姿を見せるこの広大な森林地帯は全域にわたりランディラの加護が働いており、同都市の象徴として古くから人々に愛され続けているのだそうです。
「ロスタズかー。もう百年以上前だけど、学生時代に修学旅行で行ったことあるんだけど楽しかったなぁ」
「ロスタズは双璧を成す都市ホーラムと並び、カヴァナス随一の大都会にして周辺諸国にも名を轟かせる産業の中心ですからなァ」
「うんうん、しかも何より食べ物が美味しくてね~。
いや~懐かしいね、修学旅行から帰って来た日の翌朝からえげつないぐらい口内炎になってざっと二ヶ月くらい地獄見たんだよ……」
「そ、それは中々辛う御座いますなァ……」
●第八天瑞獣 『白煌聖獣 陽光のジョウセツ』
「八番目の天瑞獣は、『陽光のジョウセツ』か」
「異名は『白煌聖獣』……シンプルな風貌乍ら異彩を放つネーミングに御座いますなァ」
第八の天瑞獣、陽光のジョウセツ。
種族は炎熱霊玉獣……額に宝玉型の感覚器を持つ哺乳類型の種族”霊玉獣”の内、火炎や熱を司る系統に御座います。
ジョウセツはその中でも最古にして最上かつ最優の存在と考えられており、炎熱の力を極めた結果光を司る迄に至り、
その為に体内で核融合反応を起こしエネルギー源としている"生ける恒星"の如き生命体なのではないかとする説も存在するほどとか……。
「マジかぁ……あのキツネそんなに凄かったんだ……わりと普通にその辺に居そうな見た目なのになぁ」
「ヒトが見掛けに拠らぬように、天瑞獣の本質も外観からは断定しきれんのでしょうなァ。
というか、炎を纏うサラブレッド大の狐は別段『普通にその辺に居そうな見た目』でもないと思いますが……」
住処はエニカヴァー最東端の島国である陽元――概ね地球の日本に相当します――西部の主要都市”螢都"に聳える聖地と名高き休火山“主懇山”なのですが……
「螢都かぁ……。なんか話に聞く限り不安な気しかしないんだよねぇ……」
「そうですかね。自分はそうは思いませんが。
何せ陽元といえばエニカヴァーでも屈指の治安を誇る経済大国にして技術大国と名高く、政府ほか権力者層に無能や性悪が幾らか多いとは言えそれでも他国よりは断然恵まれた国だそうですし、
此度の行き先としては最も安全かつ、渡航が容易な国であると認識しておりますが」
「うん、それはそう。そこはそうなんだよ。何ならあたしも一時陽元で暮らしてたけどマジで居心地良すぎて永住しようかと思ったくらいだもん。
ただ螢都は別っていうかさぁ? 勿論治安いいし食べ物美味しいし天気もいいしで、土地そのものは凄くいいとこなんだろうなって思うんだけど、
民族性っていうのかなー、あの辺の現地民ってなんかこう……言っちゃ悪いけど妙にプライド高くて思考歪んでて、排他的でよそ者に手厳しいとこあるじゃん?
厚意で家の前掃いてくれた隣ん家の人妻に『お前には我が家の前が汚れて見えるのか。我が家が掃除もできん連中の集まりだと見下してるんだろう』とかって被害妄想塗れの暴言かましながらスコップでぶん殴ったとか、
飲食店の経営者は気に障る客の口に無理矢理クソ不味い茶漬けを吐くほど流し込んで倒れた所を有り金全部持ってくとか、
色々ヤバい逸話は数知れず……
お陰で『螢都は陽元の中にある独立国家だ』なんて言われる始末だし、螢都と並び称される西の大都市”虎王”じゃ暴徒化した野球ファンのせいでスラム街が更地になったとか、
東部の首都”栄堂"真熟区・婆娑羅町なんかも大概治安悪くて毎日死人が出てるとかニュースになってるし、
そういうの聞いてるとつい気が滅入って二の足踏んじゃうんだよね……」
「とは言えそれでも陽元は世界有数の治安の良さを誇ると言われますし、何れにせよ避けては通れぬ以上は如何なる手段を用いてでもジョウセツと接触する他ないわけで御座いますからして……
そもそもパル殿は今迄そういった修羅場を幾度となく潜り抜けて来たのですし、いざとなったら自分めが死んででも貴女をお守りしますが……」
「……ぁあー、有り難うダイちゃん……うんうん、そうだよね。なんかごめんねこんな調子で。
陽元って聞くと治安いい分法律厳しくて下手なことできなさそうで、そこが心配だったんだけど……そうだね。
今のあたしらなら大抵どんな状況でも何とかなりそうだし、実際行く前から悲願してるわけにもいかないよね!
よしダイちゃん、次行こう次!」
「了解致しました」
次回、天瑞獣解説ラスト!