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第八十四話「どうやらこのデート、我々以外にも同行者がいるらしい……賑やかな旅になりそうだな」

いざ、観光旅行へ!

しかも今回旅行に参加するカップルは何も大竜とパルティータの二人だけではないようで……!

 読者の皆様、毎度大変お世話になっております。

 今回も前回に引き続き、冒険者の財王龍こと七都巳大竜がお送り致します。



「さぁー! 着いたよダイちゃん! といってもまだ空港の中だけどさ」

「ええ、やっとこさ到着ですなァ。……空港の中とは言え、それでも既に観光地特有の雰囲気が伝わって来るようです」


 場面はとある国の国際空港。

 ヴェーノ発の国際便に乗り込んだ我々は、パル殿が事前に選んでおられた観光地(デート先)へ降り立ちました。

 さて、でば実際此度のデート先として彼女が選んだ国が何処かと言うと……


「んー! やっぱ愛しの彼氏とのデートで降り立つと、同じ風景でも違って見えるなぁ~!」

「自分も、パル殿のお話しを聞いて以来ずっと来たいと思っておりました。

恐らくこの皮膚が粟立つような高揚感も、その期待が故なのでしょうなァ~」

「……今まさに、待ちに待った時が来たんだっ。

 彼氏や友達と最高のひと時を楽しむ為に……事故と陰謀に奪われた一か月間を取り戻す為に……

 あたしの大願を、成就させる為に……ルシャンテ共和国よ、このあたしが帰ったぞぉ~!

 我が最愛の彼氏を引き連れてねぇ~!」


 興奮しきった様子のパル殿の、さる"ソロモンの悪夢"或いは"スパルタの亡霊"を彷彿とさせる台詞をお読み頂ければ、概ねご理解頂けましょう。

 此度我々が観光旅行の為に訪れし国の名は"ルシャンテ共和国"……

 嘗てパル殿が案件遂行の為に来訪し、近隣海域にて猛威を振るっていた怪物"キバガニダコ"の討伐を成し遂げた地であり、

 通称"海と浜辺と国土の大きな国"、"太陽輝く理想郷"と名高き熱帯の大国に御座いました。


「前はそこまで長々と滞在できなかったし、ダイちゃんとデートするんならココしかないって決めてたんだよね~」

「成る程……ところで先程、"友達"と聞こえた気がしましたが……よもや今回の観光旅行は我々以外にも同行者の方が居られるので?」

「おっ、よく気付いたね~。実はそうなんだよ。どうせなら人数居た方が楽しいよねってコトで、

 ここ最近新しく出来たばっかりの友達に声かけてみたら、丁度四人ともスケジュールに空きがあったみたいでね~」

「ほう、御友人ですか。それも四人も。流石長生きしておられるだけに、交友関係が広う御座いますなァ……」

「うん。まあ厳密に言うと仲良くなったのはその内二人で、残る二人とはあたしも今回初対面なんだけどね~。

 陽元発の同じ国際便に乗って来るって話だったし、もうそろそろ姿が見えると思うんだけど……」


 空港を出るのはご友人方との合流後との事で、我々はその場に留まることとなりました。

 そして待つこと少々……


「パルちゃんお待たせ~♪ 」

「お久し振りです、ピローペインさんっ」


 件の"ご友人方"の姿が見えて参りました。内訳としましては、男女二人ずつの計四人……

 涼し気な白いノースリーブのワンピースを着込んだお嬢さんと、そのお相手と思しき端正な顔立ちで体格のよい殿方、

 只者ならざる雰囲気を纏う狐の耳と尾を持つ美しいご婦人と、そのご婦人に付き添う小柄で華奢な美形の少年、

 といった面々に御座います。


「撫子さん、文恵ちゃん、久しぶり~。なんだかんだ元気そうで良かったよ~」

「パルちゃんこそ相変わらずで安心したわっ☆」

「はい。色々ありましたけど、上手くやれてます~」


 パル殿と楽し気に言葉を交わす女性陣……こちらのお二方こそ、即ち件の"ご友人方"に他なりません。

 ともあれ合流した我々は、場所を空港内の飲食店に移し、各々注文を取りながら話に花を咲かせます。


「さて、取り敢えずお互い自己紹介と行こうか。

 ザイちゃん、紹介するよ。此方、陽元でお世話になった阿古屋 撫子さん。

 撫子さん、こちらうちの彼氏の財王龍ツァイ・ワンロン

「初めまして♪株式会社マスターキャッツの阿古屋撫子よっ☆

 アナタがパルちゃんの彼氏のツァイクンね? パルちゃんからお話は聞かせて貰ってるわ♪

 宜しくねっ♪」

「此方こそお初にお目に掛かります。

 ギルド"丸致場亜主"にて冒険者をやらせて頂いております、財応龍ツァイ・ワンロンと申します。

 お会い出来て光栄に御座います、阿古屋代表取締役会長」


 まず紹介して頂きましたのは、パル殿が東方陽元(ヨウゲン)翠森シンスイの宿泊施設にて知り合われた、妖狐アプリション・フォックスの阿古屋撫子代表取締役会長に御座いました。

 世界に名を馳せる大手総合広告代理店『株式会社マスターキャッツ』の代表取締役会長を務めておられます。


「んもぉ~、堅苦しいのはお止しになって頂戴な♪

 経営の中枢を担ってるのは友達の方だし、そんなに大したことなんてしちゃいないんだからっ☆

 パルちゃんの彼氏クンならつまりアナタも私の友達なんだし、そもそもこの場には阿古屋って二人居るんだから、気軽に撫子って呼んで頂戴っ☆」

「これは失礼を、撫子殿」

「序でと言っては何だけど、紹介させて貰うわね☆ この子はセイくん♪

 『マスターキャッツ』の法務部長で、私の愛しい旦那様っ♥」

「お集りの皆様、初めましてっ!

 ご紹介に与りました『株式会社マスターキャッツ』法務部の長と、代表取締役会長・阿古屋撫子の夫を兼任させて頂いております!

 ハーフエルフの阿古屋正命(セイメイ)と申しますっ! 以後お見知り置きをっ!」


 撫子代表取締役会長の旦那様であらせられる正命セイメイ法務部長……

 何ともはやインパクトのある自己紹介に度肝を抜かれた我々ですが、より驚くべきは彼のお姿に御座いました。

 というのも此方の正命法務部長、見た目はどこからどう見ても少年であり……年齢にして概ね十五から十七歳程度にしか見えなかったので御座います。


「なんと……」

「……確かに『旦那さんとはかなり年が離れてる』っては聞いてたけども」

「「」」


 衝撃的な事実に、一同唖然とせざるを得ませんでした。これに関して、撫子代表取締役会長が言うには……


「誤解されないように言っておきたいんだけど、セイくんはこれでも今年で七十五なのっ☆

 元々ハーフエルフで老化が遅いのに加えて、色々と特殊な事情があるのよ〜♪」


 なんと、そのような背景時事があったとは……


「さて、それじゃお次は文恵ちゃん行ってみようか」

「はいっ。初めまして財王龍ツァイ・ワンロンさんっ。冒険者ギルド"闇猫堂"ギルド長の柚木文恵ですっ」

「どうも。文恵の彼氏で闇猫堂の実働部隊長やらせて貰ってます、レッサーオーガの佐藤隼斗です」

「ご丁寧に有り難う御座います、柚木ギルド長、佐藤部隊長。丸致場亜主の財王龍と申します」


 爽やかに名乗って下さいましたのは、冒険者ギルド"闇猫堂"の柚木文恵殿と佐藤隼斗殿に御座いました。

 読者の皆様としましては比較的記憶に新しゅう御座いましょう、柚木ギルド長とパル殿は先日正しくここルシャンテ共和国にて出会われ、以後意気投合の後ご友人となられたので御座います。


 因みに闇猫堂と言えば読者の皆様は『役立たずのギルド長が仕切っている業界の窓際族』と認識されておりましょうが、

 先のパイユ・レトラ海岸での一件に端を発する騒動にて組織は混乱に陥り、紆余曲折を経て前任のギルド長が逮捕され一部の幹部も蒸発……

 柚木殿が後任のギルド長に任命されるなど大規模な改革が行われ、真っ当な冒険者ギルドとして再スタートを切られたとの経緯がお在りなのでした。


「なんともはや……そのような出来事が……」

「私達としても苦渋の決断でした。けどこのままじゃいけない、私達がここで動かなかったら一生このままだと思ったので……」

「正直、あの時は大変でしたよ。けど今迄に比べたらどうってこと無ぇっつーか、あの女を本気で振り切るならここしかないって確信もしてたんでね」


 どうやら嘗て"世界最低の冒険者ギルド"と呼ばれた闇猫堂は、その名に恥じぬ凄まじい内情であったようで……。

 とは言え深く詮索しようとは思いません。お二方が幸福であり、闇猫堂は改革された……その事実だけ理解できれば、充分に御座います。


「さ、て!

 お互い自己紹介も済んだことだし、早いとこ宿へ荷物置きに行っちゃおうか!

 今回はいい宿押さえてあるんだよ〜」

「ホウ、それは楽しみですなァ」


 といった具合に、食事を終えた我々は空港を後にし、そのまま今回お世話になる宿泊施設へ向かったので御座います。

次回、水着回勃発!

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