第七十四話「正直な話、ここまでまともなバーゲストさんは滅多に見たことがない」
朝っぱらからほぼ無休憩で肉体労働してたのでわりと限界ですけど
毎日更新しないとブクマもポイントも増えないだろうし感想やレビューだって書いて貰えないと思うので
とりあえず必死でやってます。
「何をやっとるかぁ! 遅いぞ貴様らっ!」
「アーハイ、ドウモスミマセーン。道がなんかね~混雑してたみたいで~」
「お昼に食べた生ガキが当たっちゃったみたいで~」
「ちょっとメイクのノリが悪かったっていうか~」
読者のみんな、御機嫌よう。
今回も例によって前回から引き続きこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが常夏の大都市レッドカーネルからお送りするよ~。
「なんだその態度は……! それが人命を背負う者の振る舞いかァ!?」
場面はルシャンテ共和国の首都レッドカーネルに建てられた高級ホテル"グリーンアイド・ブロンドビューティ"のロビー。
人目も憚らずキレ散らかすのは、ギルド"フルムーンナイツ"の幹部筆頭……希少種族"邪神末裔"のエルガミセラ・ルナサイド。
同ギルドを率いる元魔王のアンジェリカ・ルナサイドが亡き夫との間に設けた一人娘で、単純な戦闘能力だけに限れば世界最強クラス、現フルムーンナイツの武力と権能を象徴する存在と名高い傑物だったりする(序でに他の幹部共々美人だからファッションモデルやグラビアアイドルとしても活動してるらしい)。
「あ~らぁ、ごめんなさいねぇ竜女神姫様ぁ」
「所詮は下等で下賤な木っ端ギルドの構成員なので~」
「あたしに至ってはギルドの看板も何も背負ってない、単なる民間の便利屋なもんで、ええ」
性格はとにかく傲慢で攻撃的。
肩書きや血筋に誇りを持ち組織に忠誠を誓っていると言えば聞こえはいいけど、その実常に自分が絶対に正しいと信じて疑わない脳筋のバカなもんだからどうしようもない。
あたしや丸致場亜主の二人がナメ腐った態度を取ってるのも、要するに奴の本質が敬うに値しない小物だからに他ならない。
「まあまあ姫様、落ち着いて下さいよ。今回の案件なんて姫様一人いれば十分な筈です」
そう言ったのは全身緑色のアークデーモン、ジェルソミーナ・デモゴルゴン。
幹部格最年長の凄腕魔術師で、かつて魔王軍に居た頃は将官を務め、当時の勇者一団を全滅寸前に追い込んだなんて逸話もある。
「そうですわぁ~。もし何かあってもアタクシどもがいるワケですしっ♪」
便乗するのは水商売人風の火炎精霊、エノレア・ズィルコーニウム。
一見ふざけた見た目だけどその実ふざけた性格で、戦場では桁外れの出力を誇る攻撃系・召喚系の妖術で敵を焼き尽くす厄介者として名高い。
「こんな雑魚どもの助力なんざそもそも必要ねえってんだよ!
なァ天摩チャンよぉ!? なんかあった時にゃオメーさんが何とでもしてくれるもんなぁ!?」
声も乳も尻もでかいこいつは、吼神族の税牙神。
神獣系トップクラスの武闘派種族"吼神族"の現族長で、卓越した身体能力と常軌を逸した生命力を有する戦闘の達人らしい。
「……ええ、そうですとも。何があろうとウチがいれば百人力です」
さらりと言ってのけたのは、幹部格の中では異彩を放つ小柄な月兎霊、天摩ハクト。
神獣系種族の中でも特に知能の高い"月兎霊"の現代表を務める天才的な呪術師で、魔力以外にも"霊力"や"神通力"といった東方由来の独自のエネルギーを操るそうな。
何れも実力は申し分なく、海棲の怪物程度に苦戦するような面子じゃない。
(ま、公益性とやらを証明できればいいって話だし? せめて奴らの機嫌を損ねないようにやり過ごせばいっか……)
「ではこれより休憩時間とする!
各員、一時間後にパイユ・レトラ海岸海水浴場エリアの"海の家 すぺぇすころにぃー"前に準備を整えた上で集合せよ!
そこで此度の作戦にて共同戦線を張る応援部隊と合流予定だ! 具体的な作戦内容に関しては応援部隊との合流後改めて説明してやろう!
では、解散!」
という感じで、あたし達は一旦解散となった。
「とにかく波風立てないように上手いことやり過ごすわよっ!」
「ですよねぇ~。まあここでこのまま遊ぶのも悪くないですけどぉ、やっぱりギルド長たちのこと、心配ですし~」
(……ダイちゃん大丈夫かな……万一にもモリニャメシ政府で変な目に遭わされてなきゃいいけど……)
正直な所、できるなら今すぐにでもフルムーンナイツの奴らを皆殺しにして囚われのダイちゃんを救出したいぐらいあの子が心配だった。
けど奴ら……特にルナサイド親子を下手に刺激したら何を仕出かすか分かったもんじゃない。
ここは落ち着いて行動するのが定石だろう。
(州=_=)<準備は入念に……
「二人とも、準備はいいわね?」
「バッチリですよぉ~」
「あたしも大丈夫です」
程なくして準備を整えたあたし達は、予定より少し早めに現場の海岸へ到着していた。
3人とも準備は万端……攻防共に隙なくフル装備だけどそれもその筈、何せ相手は海洋生態系でも上位に位置する大型捕食者"クラーケン"のミュータント化個体……どんな予想外の形質を獲得してたって不思議じゃない。
「さて、待ち合わせ場所は確か"すぺぇすころにぃー"って海の家の前だったかしら?」
「そうですね~地図によるとここから結構奥に進まなきゃダメみたいです~。
正直、フツーに海水浴場エリアの出入り口でいいと思うんですけど、なんで態々そんな所なんでしょ~ねぇ?」
「さぁ~て、なんでかしらねぇ~。ちょっと下賤な庶民のアタシには分からないわ~。
……ま、事あるごとにウチへ難癖つけて喧嘩吹っ掛けて来るような奴らの考えなんて理解したくもないケドね」
「同感ですよバーゲストさん。てか、合流予定の応援部隊ってどこの誰なんですかね。
正直、ミュータント化したクラーケン相手だろうとあの五人で十分な気しかしないんですけど」
あたしとしては軽い気持ちで、『それこそ知らない。奴らに聞けばいい』って流されるつもりで言っただけだった。
けどバーゲストさんの面持ちはやけに神妙で……
「ん~、確かにそうね……パルちゃんの言う通りだわ。希少種族で単純な武力だけなら世界最強クラスの脳筋バカ姫、
元魔王軍将官で勇者一団を一度は壊滅させた実績のある行き遅れ緑おばさん、本気を出しさえすれば自然災害レベルの火力が出せるおちゃらけ陥没乳首、
パラメータ戦闘力全振りの自堕落アホ犬に、霊力や神通力っていう未知の領域に上半身突っ込んでる干物兎……
悔しいけどあたし達三人じゃ逆立ちしたって勝てないでしょうよ。ましてこの程度のクエストに、まだ追加で戦力を宛がうなんて普通なら有り得ないわ。
考えられる可能性があるとしたら……いえ、流石にそれはないわね。ともかく急ぐわよっ。奴らより早く到着しておかないと後で何言われるかわからないわっ」
「そりゃ確かに」
「ですね~」
バーゲストさんの意味深な発言がどうにも引っ掛かるけど、ともあれこんな所でゆっくりしてるワケにもいかない。
怪物の脅威が迫りながらも観光客で賑わう海水浴場を、あたし達は速足で駆け抜けていく。
(応援部隊、ねぇ……冒険者ごっこがしたい金持ちのアホガキとかじゃなきゃいいけど)
エニカヴァーにはそういうバカが結構いるから、強ち冗談とも言い切れないんだよこれが……。
ま、結論から言うとエルガミセラの言ってた応援部隊ってのは、アホな金持ちなんかじゃなかった。
寧ろどっちかというと、その正反対の奴らでね……
次回、応援部隊の正体とは!?




