第七十三話「まずうちの彼氏は元配信者だけどコンピュータそこまで詳しくないっつーの……」
パルティータは何故南国へ行く羽目になってしまったのか?
その経緯が明らかに。
(あのダブスタ色ボケ耄碌ババア……いつか絶対地獄見せてやる……!)
読者のみんな、御機嫌よう。
相変わらず感想は書かれず、一日あたりの閲覧数も下落気味だけど、それでもみんなが本作『ついブイ』と向き合ってくれるのは素直に感謝してるよ。
ただそろそろ、親身になってくれてた古株読者の方がヤバい状況なのもあって作者がみんなを逆恨みし始めそうになってるから、本作を応援したいなって思ったら是非とも感想を書いてくれると嬉しいな。
……といった感じの挨拶もそこそこに、今回も前回から引き続きこのあたし、
便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが主人公兼ナレーターを務めさせて頂くよ。
(あんな奴らに従ってると思うと腹が立ってしょーがないけど、実際困ってる現地民を見捨てるわけにもいかないし……)
場面はヴェーノ発レッドカーネル行き緊急急行便の機内。
殆ど乗客の居ない小型機の座席に座ったあたしは、乱暴に機内食を貪りながら計画を練る。
(どうにかして奴らをハメてやらないと……)
なんだって前回カヴァナスからビットランスに帰って来てたハズのあたしが、すぐさま飛行機で同国を離れる羽目になっていたのかというと……
その辺りはみんなもうお察しだろうけど、前回終盤でかかってきた電話が原因だった。
電話の相手はビットランスの首都"エレイン"を拠点に活動する冒険者ギルド"フルムーンナイツ"の関係者。
同ギルドは創業数世紀の歴史を誇る老舗かつ、構成員も実力派揃いで数多くの華々しい実績を持っている……んだけど、ダイちゃんも所属してる我らが"丸致場亜主"とは昔から妙に仲が悪く……
っていうよりかは、向こうのトップが一方的に源元ギルド長を目の敵にしているようで、定期的に無駄に大規模で金のかかった嫌がらせを繰り返していた。
要するに今回もそんな"大規模で金のかかった嫌がらせ"を仕掛けて来たってワケ。
電話をかけてきた担当者曰く
『財王龍が病院への不正アクセス容疑で逮捕され、芋蔓式に丸致場亜主の幹部格も共犯の疑いからモリニャメシ政府に拘束された。
証拠は明確で有罪判決は不可避。実刑は免れないだろう。我らフルムーンナイツがモリニャメシ政府と交渉した結果、
ルシャンテ共和国が首都レッドカーネルの観光地パイユ・レトラ海岸に出没したミュータントクラーケンの討伐に、丸致場亜主及び財王龍の関係者が協力し、
その公益性を証明できれば、財王龍並びに丸致場亜主を無罪放免とし解放するとの事。
したがって財王龍の恋人たる便利屋パルティータ・ピローペインは、至急レッドカーネルに急行し現地でミュータントクラーケン討伐隊と合流し、作戦行動に移行されたし』
……との事なんだけど、
(もう突っ込み所しかなくてどこから突っ込めばいいのかわかんないレベルじゃん、これ……)
説明するまでもないだろうけど、担当者の話はとにかく滅茶苦茶だった。
大方、フルムーンナイツからの丸致場亜主に対する嫌がらせだろう。
あそこのギルド長は古代から続く王族の出身で元魔王でもあるし、幹部格も各地に名を轟かせる権力者の身内が多く、各国政府に圧力をかけるぐらいは容易いからね。
行き先として唐突にルシャンテ共和国の名前が出て来たのが今一謎だけど、察するにフルムーンナイツと仲のいい冒険者ギルドのどこかが『ルシャンテ共和国に旅行に行きたいけど金がない』とでも言ったとか、案外そんなくだらない理由なんじゃないかと思う。
(州#▽へ▽)<ま、理由が何であれうちの彼氏と知り合いに冤罪吹っ掛けた時点でタダじゃ置かないけどね。
「……流石緊急急行便。驚きの速さだねぇ」
場面は変わって常夏の国"ルシャンテ共和国"の首都"レッドカーネル"の国際空港。予定では一応ここで"ある二人"と合流する運びになっているハズだけど……
「あっ、居たわ! あそこよっ!」
「ピロ~ペインさぁ~ん! 待ってましたよぉ~!」
(おっと、来た来た……)
こちら側に駆け寄ってくるのは、スキンヘッドにアロハシャツの厳ついカマなオッサンと、痴女一歩手前ぐらい際どい身なりのピンク髪サキュバス……
久々の登場、ギルド"丸致場亜主"幹部格"四宝傑"のメンバー、バーゲスト・美代子さんとゾーイ・エヴァンスさんだ。
「お久しぶりです。バーゲストさん、エヴァンスさん」
「ええ、久しぶりねピローペインちゃんっ! こうして一緒に仕事できるなんて感動的だわ~!」
「この前はすみませんでしたぁ~。私達、ついムキになっちゃってぇ……でもその分、今回は存分に協力させて貰いますからねっ♪」
『討伐作戦に参加し公益性を証明すべし』と命令されたのは、あたしだけじゃない。
源元ギルド長が囚われている以上、ギルド"丸致場亜主"の面々も動かなければならず、結果近場に居てスケジュールに余裕のあったこの二人に白羽の矢が立ったってコトらしい。
……本音を言うと大良さんや時任さんの方がやり易いから良かったんだけど、大良さんはギルド長共々モリニャメシ政府に拘束されているし、時任さんにしても今は多忙から身動きが取れないでいる。
その点バーゲストさんとエヴァンスさんは四宝傑の中でもフットワークが軽いし、確かに自制できなかったり感情的になりやすかったりと欠点は多いけど曲がりなりにも幹部をやってるだけに実力派で、かつ今回の現場との相性もいい。
決して単なる消去法で選ばれたってワケじゃない、この場にお誂え向きの二人なんだ。
「しっかしホント頭来ちゃうわ! あのオババったら、どこに幾ら積んだのか知らないけど一国の政府にまで圧力かけちゃってさ!」
「"本当にそれ"ですよぉ~! その上いきなり遠くに呼び出したりして! 折角出先でいい感じの子とデートできそうだったのにぃ!」
「……とりあえずさっさと終わらせて帰りましょーか。どうせいつも通りどこかしらで下手やって自滅するのがオチでしょあの連中なんて」
てな感じで空港で二人と合流したあたしは、早速今回の作戦で行動を共にする混成部隊との待ち合わせ場所に向かったんだ。
(州;=_=)<ここにこそダイちゃんと一緒に来たかったよ……なんでよりにもよって同行者がこんな連中なんだか……
次回、問題のギルド"フルムーンナイツ"の面々が登場!