第六十八話「いざ屋内プールで(女二人寂しく)水遊び! ……かと思ったらなんか予想外の展開に突入してるんだけど!?」
過去作「ヴァーミンズ・クロニクル」といい、
私の書く水着回は悉く水着回らしさがないのはなんなんでしょうね。
そもそも水着回らしさってなんだよって話なんですが
「いやー……"施設内で水着を買える"とは聞いてたけど、まさかあんな風に購入するとは思わなかったよ……」
「まあ、最初はビックリするわよね~」
読者のみんな、御機嫌よう。いつも『追放Vtuber』もとい『ついブイ』を読んでくれてありがとね~。
できれば感想とかも貰えると作者が落ち着くのでこっちとしては有り難いゾ☆
ってなもんで、今回も前回に引き続きこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが東方の大国"陽元"北東部の主要都市"森翠"からお送りするよ~。
「ただまあ、ビックリしたってだけで概ねあのシステムは嫌いじゃないね。サイズ確認とか試着の手間もかかんなくていいし」
「そうよね~♪ 私も結構気に入ってるの♪ 何でも陽元とマルヴァレスが共同開発した最新技術が採用されてるんですって☆」
場面はトレーニングジム"Bloom Cat"内部にある多目的屋内プールの中。
空間操作系の魔術で拡張されたそこは果てしなく広大で、内装も隅々まで凝ってて視覚的にも楽しい場所だった。
「ほほーぅ、陽元とマルヴァレスか~。そりゃ技術力エグくて当然だねぇ」
さて、ここであたし達がそれぞれ着てる水着について説明させて貰おう。
まずあたしが更衣室の専用設備で購入し着用してるのは海上人工都市"ウィナニス・シティ"の大手スポーツ用品メーカー"NINOMAE"が製造・販売してる"オーシャンリーパー"って競泳水着。
着心地良く見栄え良く実用性高くをモットーにしたこの製品は、正面から見ると胸の谷間もヘソも出てなくて露出控え目でスタイリッシュに見えるけど、背面は結構布地が少なく結構際どいデザインと言えるかもしれない。
「ほんと凄い技術力よね~。中に入ってキー入力するだけで自動的に水着着せてくれるなんて……
専門家の先生たちはまだまだ開発途中だっていうけれど、正直もう完成形でいいんじゃないって思っちゃうわ☆」
続いて撫子さんの水着はエンツアム共和国が世界に誇る老舗服飾メーカー"もちひな"謹製の最新作、その名も"ニュンハイ"。
同社傘下の研究機関で開発された最新鋭の合成繊維で作られたこの水着は、高級感溢れるいかにも繊細そうな見た目の割にかなり頑丈と評判なんだそう。
幾つかのバリエーションがあるけれど、撫子さんが着ているのは落ち着いた雰囲気の裏に情熱を秘めたようなワインレッドのホルターネックビキニ……。
彼女の卓越した美貌と確かな色香を美味い具合に引き立てつつも、安易に近寄るのを躊躇わせるような高貴さも醸し出しているのは流石としか言いようがない。
「それにしたってパルちゃんが競泳水着を選ぶのはなんだか意外だったわね。
マイクロビキニやスリングショットなんかじゃ無いにしても、もっとこう正統派のワンピースとかチューブトップビキニ辺りを選びそうな気がしてたのだけど」
「まぁ〜そういうのも考えたんだけどねぇ。ザイちゃん居ないのに谷間とかヘソ出すのもなんか違う気がしたっていうかね、撫子さんが正統派のビューティフル路線だったから、ならあたしは若干変化球気味にしようかなぁ、みたいなね」
とまあ、そんな感じに話し込みながら何をしたものかとプールサイドを進んでいると……
「―――ィよォォォ〜御婦人方ァ〜。チョイと待って貰おうかィ?」
ふと、誰かに声を掛けられる。なんかもう声からしてヤバそうな雰囲気だ。
(……上流階級もピンキリ、か)
ふと目を遣った先には、どうにもガラの悪い男たちの姿があった。
種族の内訳は、オーガ、リザードマン、デーモン、シャーカン、ミノタウロス、バードフォーク等……
中でも一際異彩を放つのがリーダー格と思しき羆獣人の巨漢。
多分声を掛けてきたのもこの男だろう。
「御二方ァ、『株式会社マスターキャッツ』の阿古屋撫子代表取締役と、ビットランスの便利屋パルティータ・ピローペイン殿で相違あるめぇな?」
しかもこの男、あたし達の名前と肩書きを知っているらしい。
(つまり性欲持て余した色情狂野郎がヤる相手欲しさで雑にナンパ仕掛けてきたってワケじゃない、か……)
勿論、だからといって警戒するに越したことはない。
重ね契りの術がある以上奴らを迎撃するのは容易いにしても、相手に及ぶ魔術効果がランダムな以上どんな被害が出てもおかしくはないからね(電撃ならまだマシな方で、酷いと何処からともなく隕石降って来たりするから……)。
「……人違いだと言ったら?」
「そう返答すなァ、大抵本人と相場が決まってンだぜぇ……
元よりこっちも証拠有りきで声掛けてンでェ。隠し通そうなんて思わねえこったなァ」
「……大した自信じゃないか。如何にも、あたしはパルティータ・ピローペイン。
ビットランスのヴェーノで便利屋をやってる魔女さ。財王龍の女と言ったほうが伝わりやすいだろうね」
「そして私はマスターキャッツの阿古屋よ。肩書きは代表取締役"会長"だけどねぇ」
「ブヘヘヘ……そうかいそうかい、そりゃ失礼した。すまねェなァ」
あくまで不遜な態度のウェアグリズリーは薄気味悪い笑みを浮かべている。さて、そんな奴の正体はというと……
「申し遅れたなァ。俺ァ隈川。北方はレディクロウズでブリガンディン・プロレスリングってプロレス団体の運営を任されてるモンだァ」
「レディクロウズの隈川……?」
その名前には聞き覚えがあった。
そもそもレディクロウズってのは北西部にある世界最大の島国で、『最果ての神獣』『聡明なる巨獣』『芸術を極めし賢王』『生ける絵画の神』なんて異名で呼ばれた第三十九代魔王、
巨神魔獣人のブリザヴィス・レディクロウズが開拓・建国した"エニカヴァー最北端の国"なんだけど……彼が魔王就任以前から面倒を見ていた何人かの弟子の中に、隈川って名前のウェアグリズリーが居たハズだ。
「お察しの通り、俺ァレディクロウズ第三代大統領の耳孫ってヤツにならァなァ」
「耳孫……つまり玄孫の子ってワケか。で、そのプロレス団体の運営者様があたし達に何の用で?」
「申し訳ないのだけれど、ナンパならお断りよ? 私は既婚者だし、この子にも彼氏が居るんだもの。
勿論、無理矢理手を出そうとしたって無駄。私達二人に"重ね契りの術"が作用している以上、どう足掻いたって酷い目に遭うのはそっちだもの」
「ギヒヒヒヒヒ……無論、ンな事ァ承知の上よ。元より俺らァ荒くれ・破落戸の類いとは言え野盗や愚連隊ほど零落れちゃいねェ。
こんなナリでも一応、社会人として最低限の遵法精神と倫理観は持ち合わせてっからなァ~」
「じゃあ、何が目的なワケ?」
あくまで臆さず、あたしは一番の疑問を隈川に投げ掛ける。するとそれまで余裕かましてた奴の態度が、唐突におかしくなり始めたんだ。
「目的……! 目的だとっ……? ああ、目的……! そいつを言わなきゃ始まらねえわなァ……!
ぐっ、ぅぉおおぉぉ……ぉぉ……クソっ、ダメだぁ……こんなキャラ演じンのなんざ、もう耐えらンねェッ……!」
「しゃ、社長っ!」
「隈川社長、しっかりして下せぇ!」
持病が悪化し始めたみたいな様子で苦しみ蹲る隈川。
上司の身を案じた部下たちは慌てて駆け寄るけど、隈川はそんな部下たちを『大丈夫だ』と制止して……
「ええい、もう構うものかよっ……! 何が『部外者相手に頭垂れるはレスラーの名折れ』だボケがっ……!
相手が何モンだろうと、敬うべき相手を尊ぶのはヒトとして当然じゃねェかっっ……!」
何やら覚悟を決めたらしい隈川は、改めてあたし達に向けて五体投地の姿勢で頭を下げ、張り上げられてこそいないけれど確かに耳へ届く声で、こう言ったんだ。
「阿古屋代表取締役会長……! ピローペイン様っ……! 先ずはお二方への非礼、心よりお詫び申し上げます……!」
「え? いやまぁ~その……そんな、謝られる程の事されてないし別に……」
「そ、そうね。私達別にあなた達に何かされたって程でもないし、何ならプロレス業界の方ってあんまり会った事ないからこういう場所で会えたのって地味にラッキーぐらいに思ってるんだけどね?」
開口一番、隈川の口から出たのは謝罪の言葉だった。
正直彼らに何かされたワケでもないし咎める気も毛頭なかったあたし達は、あくまで寛容に対応する。
そして……
「くっっ……! 寛容なお心遣い、痛み入ります……! そして僭越乍ら、お願い申し上げてぇコトが御座います……!
何卒この隈川にお力添えを……! 我が『ブリガンディン・プロレスリング』最大の窮地を、どうか救っては頂けませんでしょうかっっ……!」
続け様には、まさかの懇願……予想外過ぎる展開に、あたし達は困惑せずにいられなかった。
次回……
『パルティータと撫子、ブリガンディン・プロレスリングの面々+α~Θと力の限り遊びまくる』の巻。




