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第六十二話「万一刑が軽かった時の為にもブーメラン覚悟で色々言っておこう」

麻薬組織センテニアル・スターズを相手取る戦いは最終局面へ!

 やっほー、読者のみんな。

 毎度毎度本作『追放Vtuber』こと『ついブイ』の読者で居てくれてありがとね~。

 今回も前回に引き続きこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが主人公兼ナレーターを務めさせて頂くよ~。



『ブオエゲアアアアアッ! ゲエアラガアアアッ! グアラバアアアッ!』

「ひいいいいっ! やめなさいラクゴー! この私の言う事が聞けないのっ!?」

(さぁ~て……さっさと終わらせて警察に突き出しますかっ)


 場面は麻薬組織センテニアル・スターズの拠点……嘗てザーロース学園大学学舎と呼ばれた石造りの建造物の中。


『ギュオボロラァァアアッ! ブルブロボラァアアアッ!』


 呪術で見るに堪えない姿になった組織幹部のラクゴー。

 身も心も"有機物でできた災害"になり果てた奴は、次なる標的を嘗ての主に定め突き進む。


「なん、でっ! なんでぇっ!? なんで、この私がっっ!

 なんでこの私がこんな目にっ! わけがわからないっ!

 こんなハズでは、なかったのにぃぃっ!」


 対する標的……麻薬組織センテニアル・スターズのトップ、エルフで元大学講師のアリアナ・チャペックは無様に逃げ回るばかり。

 『腐っても嘗ての部下を攻撃できない』って主張はまあ、無量大数歩譲ってギリギリ分からなくもないけど、それにしたって防御なり飛んで逃げるなり幾らでもやりようはあるだろうに……


(まあこの場から逃げてないだけマシ、か)

「いやあああああああ!」

「――"バインド"  ――"防護ディフェンド"」

「ぎゃっ!? なに、これっ……! 動かないっっ……!」


 取り敢えずこいつを生け捕りにしなきゃそれまでなので、魔術で動きを封じつつドーム状の障壁で囲っておく。

 ラクゴーを近付けさせないように倒せば問題はないけど、拘束だけじゃ心許ないし用心するに越したことはない。


「ちょっとピローペイン!? これはどういうこと!? 一体何の真似よ!?」

「どういうことも何もないよ。こちとらここであんたに死なれちゃ気分が悪いんだ。意地でも生き残って貰うよ?」

「ピローペイン、貴女……!」


 ……なんだろう、心なしかチャペックの眼が変にキラキラしてるなぁ。さてはこの期に及んであたしが慈悲を見せたとでも勘違いしてるのかな?

 致命的な誤解ってのは後々当人を不幸にするし、早めに解いてやらなきゃいけないねってコトで……


「こちとらあんたの所為で地獄見た被害者凡そ五千人強の憎悪背負わせて貰ってるんでねぇ~生き残って絶望を味わって貰わなきゃ困るんだよぉ~♪」

「えっ」

「まずは逮捕からの全世界顔出し実名報道っ♪ その後は送致、拘留、起訴・裁判っ★ 勿論この間も報道は続くだろうさっ!」

「そんなっ……!」


 目に見えて奴の顔が曇り始める。……正直褒められたモンじゃないんだろうけど、案外クセになるねこりゃ。ちょいともう少し色気出してみようか。


「"重縛ヘヴィ・バインド"」

『グヴアアアアッ!?』


 ってワケでラクゴーをも拘束しつつ、あたしは奴に語り掛ける。


「裁判がどれだけ長引くかはわかんないけど、恐らくあれだけのことをやったんだ……実刑判決は免れないだろうねぇ★ そうなりゃほぼ確実に、あんたは牢獄行きさっ♪」

「そ、そんなのっ! そんなのやってみなければわからないじゃないのっ! なんで法律の専門家でもない貴女なんかにそこまで断言できるのよっ!?」

「ああ、そうだねぇ~やってみなけりゃわかんないだろうさ。あたしだって自衛の為に幾らか法律は齧ってるけど専門家って程じゃな~い。

 裁判所があんたの主張を認めて不起訴処分にするかもしれないし、奇跡的に腕の立つ弁護士が必死で頑張って無罪を勝ち取ってくれるかもしれない」

「そ、そうよ! 私は――」

「けどそれで全部終わるワケじゃないんだよ、人生はっ」

「っ」

「どれだけ長く生きててもよくする勘違いだけどさ、人生ってのは死ぬまで終わらず続いていくモンなんだよ。

 ゲームや物語みたく『目標を達成しさえすればそれでハイお終い。後は何も頑張らなくてもオッケーですお疲れ様でした』とはならないんだ」

「ぅぅ……!」

「ザーロースのことも、願い星のことも、あんた自身がどれだけ終わった過去と認識したって、害を被った当事者にゃ関係ないんだ。奴らは一生根に持つよ。

 その恨みは強烈さ。

 もし万一、仮にあんたが不起訴や無罪になったとしたら……報復の為に手段なんて選びはしないだろうね。

 『法律が裁かないなら、自分が裁いてやる』……そんな風に思ってる奴なんて、このエニカヴァーにはそれこそ星の数ほどいるんだからねぇ~。

 そこんとこよぉ~く、覚悟しときな?」

「」


 と、いけないいけない。ついお喋りに熱中し過ぎちゃったよ。

 圧かけ過ぎた所為でチャペックは最早放心状態……


『ヴウウウアアアアアアッ!』


 序でにラクゴーの拘束も解けた。

 ある意味グッドタイミングと言えばそうだけど、拘束状態の方がやりやすかったろうしなんともはや……


「……ま、贅沢は言ってられないか」


 どの道手っ取り早く始末すれば同じこと。てなワケであたしは、荒ぶるラクゴーとの決戦に挑む。


『ギィィィドドドドッ! ヴォジョグッデエエエエエドォオオッ! グッドヴァッゾオオオオオッ!』

「何言ってんだかわかんないんだよ……取り敢えずこいつでも喰らっときな」


 手始めに挨拶がてらエネルギー弾の魔術”魔力弾丸マナバレット”を撃ち込んでおく。原則全ての魔術師が最初に習得する攻撃魔術の初歩だけど……


『ブウウグエアアアアアッ!?』

「おおー、派手に吹っ飛ぶねぇ~」

「――ハッ、いやあああああああ!? ラクゴおおおおおおおっ!」


 流石に出力四乗倍で炸裂仕様にもなると、ラクゴーの巨体を四半強ほど吹き飛ばすぐらいの威力は出るらしい。

 ……なんかチャペックが後ろで五月蠅いけど、奴が死ぬ様を見せつけられると考えれば好都合だ。


「ちょっとピローペイン!? 貴女一体どういうつもり!? なんでラクゴーを攻撃するのよっ!?」

「いやぁ~仲間たちの所に連れてってやろうかと思って♪ このまま放置してても被害が拡大するだけだし、呪われた身体から解放してやった方があいつの魂も救われるじゃんね★」

「ふざけてんじゃないわよっ! ラクゴーをあんな姿にしたのは貴女じゃないっ! それなのに手に負えなくなったら殺すなんて間違ってるわ! しっかり最後まで責任取りなさいよ!」

「五月蠅いなあ……あたしが巻いた種だからこそ奴の命を刈り取って責任取ろうってんでしょ。

 この場でそれより最適な"責任の取り方"なんてないっての。

 仮にあったとして、血筋も家柄もなくて、一般企業に就職するしかなかった孤児上がりの庶民が考え付くハズないじゃんね?」

「な、何を言いたいのよっ……?」

「そこまで言うならあんたが代わりにやりなよって話さ。

 名家出身の高貴な血筋で、若くして私大の理事長にまで成り上がったエリート救世主サマなら、さぞ人道的で合理的な"責任の取り方"をしてくれそうだしさぁ?」

「ぅっ、く……!」


 軽く圧をかけてやるだけで、チャペックは簡単に黙り込んだ。

 そうそう、それでいいんだよ。所詮何もできないのなら、口出しなんてするんじゃない。


『ェヴロッガラララァ……!』

「ほーう、こりゃスゴいねぇ~。まさかあの傷をこの短時間で殆ど完治させちゃうなんてっ★」


 並みの猛獣や怪物なら概ね討伐(落命)撃退(重体)に追い遣れるような破壊力だってのに、尚も戦意や殺意を捨てずあたしに向かって来るとは見上げた根性だ。


「さてはあんたも戦闘者として認めて欲しいってのかい?

 ……いいだろう。掛かって来なよ。全力で相手《殺》してやるからさっ!」

『ヴェゥルラァァァァァァッ!』

「やめてええええええええっ!」


 容赦はしない。極力早めにカタをつけるっ!

次回、パルティータ東方へ行くの巻!

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