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第六十一話「『これじゃどっちが悪だかわからない』って言われても、あたしは元々"正義の味方"じゃないからね?」

パルティータの仕掛ける"面白い作戦"……

その驚愕の実態とは!?

 やっほー、読者のみんな。

 毎度毎度本作『追放Vtuber』こと『ついブイ』の読者で居てくれてありがとね~。

 今回も前回に引き続きこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが麻薬組織"センテニアル・スターズ"の総本山からお贈りするよ~。



「ぅ、ぐうっ!? ぐうおおああ!? ああっがあああっ! づうおおああああっ!?」


 幻術"溺色欲ドラウン・ラスト"の効果に翻弄されていたオーガのラクゴー。

 奴の態度と姿が目に見えて変わり始めるのに、そう時間はかからなかった。


(計画通り……! さあ、どう変化するかなっ★)


「ウゥウ……グウウッ! グガアアアッ! グウウアッヴァアアアアアアアッ!』


 苦しみ悶えるようなラクゴーの呻き声は、奴が怪物的な側面もあるオーガって種族な点を考慮して尚、異質かつ不気味で恐ろしかった。

 声の感じからして、理性や自我なんてもんは殆ど残っちゃいないだろう。


『ヴウウウウアアアアッ!? ゲグガアアアアウウアガアアアアッ!』


 けど何より顕著なのは、容姿の変化だろう。元々"完璧な星"の乱用である程度怪物みたいな姿になっていたラクゴー。

 その時は、例えば漫画やゲームのキャラなんかになってれば、或いは活躍次第ではそこそこ人気が出ていたかもしれないぐらいの、ある程度の"カッコよさ"とか"風格"みたいなものがあったんだ。


 けどそれももう過去の話……

 歪で不自然な変異を重ねた奴は、今や嘗てからは想像もつかない程く醜く悍ましい、怪物や異形と呼ぶのも躊躇われるような"何か"になり果てていた。


『ドゥエララバブルルラララアアアアアッ! ボブレッベアラッガラヅァイッガアバラッベアアアアッ!』


 なんだろう、その姿は……本当に形容しがたいんだけど、っていうか詳しく語るとまた無駄に字数が増えるからあんまり説明したくないんだけど、

 とりあえず、ただでさえ薬の所為でデカくなってた体積が更に二回りほど肥大化してて、なんかトゲとか腕とか目玉とか触手とかが無駄に生えまくってるような、そんな感じなのは確かで……


「いやああああああ!」

「ぎゃああああああ!」

「ふェぶッシァアあああああ!?」

「「ウワアアアアアアア!?」」

「!?!?!?!?!?!?!?」

「なんてこと……!?」


 残るセンスタ幹部格も、恐怖に取り乱すばかりで実質行動不能に陥っていた。


(いやはや、滑稽だねぇ~♪)


 さて一方のあたしはというと――ここまでの地の文を読んでくれれば概ね分かるだろうけど――ひたすらに余裕綽々、実質高見の見物と洒落込んでいた。


(何せこの混沌とした状況を引き起こした張本人だからねぇ~)


『ブヴォォォォオオボッボボバァァァァッ! ヴァバブベバッボボバゲガアアアアアッ!』


 ラクゴーが醜く悍ましい"何か"になり果てたのは,、前回あたしが奴にぶち込んだ"荒ぶる肉欲が人(ラストゥ・サモン・)を怪物に変える(コズミック・ホラー)"って上位呪術の作用によるものだ。


 そもそも呪術ってのは大抵、標的に施された状態である程度潜伏した後に特定条件下で作動する……

 要するに遅効性の毒薬とか罠みたいな運用を想定して設計されがちな魔術群なんだけど、それはこの"荒ぶる肉欲が人(ラストゥ・サモン・)を怪物に変える(コズミック・ホラー)"も例外じゃない。


 具体的な効果は『標的の性的興奮に応じて肉体を変異させ、理性や自我なく暴れるだけの生体兵器に変える』ってな感じで、

 呪術の例に漏れず直接的な攻撃よりは罠っぽい運用が主なんだけど、あたしがやったように強制的に性欲を掻き立てる魔術や兵器と併用すればこの通り……


『ヴェルルルルラァッ! ヴァラララララァァァッ!』

「ひいいいいっ!」

「お、おい止せラクゴー! オレたちゃ仲間だろボケがぁっ!?」

「ェブシッ! やめフェぶしっ! 元に戻れェぶしっ!」

「止まってラクゴー! 貴男はそんな男じゃないでしょう!? あんなわけのわからない奴に負けては駄目! 正気に戻るのよ!」

「あわわわわわわぁぁ~! たたたたたたたたたぁ~いへんだぁぁぁ~!」

「!?!?!?!?!?!?」

「くっ、一体どうすれば……!?」


 理性も自我も完全に失い、視界に入る全てを破壊し尽くすだけの"生きた暴力"と化したラクゴーは、敵であるあたしより仲間の筈のセンスタ幹部たちを追い回していた。

 何かしら仲間たちに思う所があったからなのか、弱そうな奴から始末した方が効率的と判断したのか、詳細な理由はわからないけど……


(これが所謂|他人の不幸で飯が美味い《メシウマ》ってヤツぅ?)


 普段から『他人の不幸嘲笑ってる暇があったら自分の幸福の為に動いた方が合理的』って考えてるあたしだけど、

 実質祖国レベルでお世話になってて愛着のある魔導国にクソみたいな理由で麻薬をバラ撒いた連中が哀れに破滅してく様を眺めているのは……なんだろう、不思議と妙な満足感があったんだよね。


(やっぱり、自分以外の誰かを傷付けられた恨みっていう義憤みたいなのがあるからなのかなー)


 なんて呑気に構えている間にも、センスタの幹部たちは次々ラクゴーの手に掛かり殺されていった。



『ヴァァァアアアアッ!』

「ひいいいいいっ!? や、やめtぼげーっ!?」


 まず死んだのは眼鏡のワーシープ。合わない義足のせいで足が遅かったのが原因だった。


『ボオッ! ブボオッ! ボッボブボバォッ!』

「ぬわっ、やめろっ!?」

『ヴォラアアアアッ!』

「ぎゃああああ――ぐぶえっ!?」

「ブベじゃあッ!?」


 続いてラクゴーはノームを捕まえると、クシャミが止まらないサハギン目掛けて力一杯投げつけ二人同時に殺した。


『ヅオヴアアアアア!』

「くっ、かくなる上はっ……! 悪く思わないで! 私はまだ死ぬわけにはいかないのっ!」

「あだあっ!? うう〜! な、なにするんだよ――」

『ドエアアアッ!』

「おぼぎょあっ!?」

「有り難う、あなたの犠牲は無駄には――」

『ムッドォォオオッ!』

「ぐぎゃべらぁっ!?」


 トレントは並走していたバグフォークを転ばせ逃げ延びようとした。

 けど結果は大して変わらず、精々数秒前後の延命ができただけだった(あとフェアリーは何時の間にか潰れて死んでた)。



『ヴォンドゥルルルルルララララララァッ!』

「ひっ! 嫌っ! こ、来ないでっ! お願いっ、目を覚ましてラクゴー! 貴方はそんな、野蛮で暴力的な子じゃない筈でしょうっ!?」


 一人残されたチャペックは必死でラクゴーの説得を試みるけど当然効果はない。

 曲がりなりにも魔術師なら攻撃魔術で撃退でもすればいいのにそれすらしようとせず、意地でも対話に拘る様子はなんともはや滑稽だ。


(アレかな?『例えどんな姿でも仲間は仲間! 傷付けるなんてできないワ!』とかそんな感じのヤツかな?)


 正直この期に及んで本当にそんなこと考えてるとしたらいよいよ救えない。

 っていうか、その慈悲をクリスティアーノ理事長に向けてればこいつはここまで零落れてすらいなかったハズなんだ。


『ダリナンダリリリランダリリランダイッダァァイ!』

「いやああああ! 待ちなさい! 待つのよラクゴー!

 エニカヴァーに革命を起こし人々を救うべく生を受けたこの私を、この世から消滅させるなんてあってはならないわっ!

 それを理解できない貴方じゃないでしょう!?」


 チャペックの命乞いが命乞いとして成立していないのは誰の目から見ても明らかだった。

 多分当人としては説得力抜群の正論を投げ付けたつもりなんだろうけど、仮にラクゴーが説得してどうにかなる程度の暴走状態だったとして、チャペックの台詞が心に響くことはまずないだろう。


(このままあいつが殺されるのをここから眺めてるのもいいけど……ここで奴を殺して後は地獄側に任せるってのもそれはそれでなんか物足りないんだよね……)


 嘗てクリスティアーノ理事長に弓引き彼を破滅させザーロースをも廃校に追い込み、そして"願い星"で無辜の民を騙して死に追い遣ろうとしたチャペックの罪は余りにも重い。

 こんな場所でただ死なせる程度じゃ贖罪にはならないだろうし、そんな末路じゃ遺族も納得しないだろう。


(もしかしたら読者のみんなは優しいから『アリアナ・チャペックなんてどうでもいい。雑な最期でも別に構わない』って、寛容な姿勢で妥協してくれるかもしれないけどさ……)


 ただそれでも個人的に、ヤツはまだ地獄へ逃がしていいような相手じゃないと思うんだよねぇ。

 よってやることは、ただ一つ……


(奴を助けよう……不本意だけど、それ以外に方法がない)


 本当に不本意極まりないんだけどねー、それしかないなら仕方ないよねー。



(州;=_=)<でもやっぱりやだなあ……あんな奴助けるの……

次回、アリアナ・チャペック救助作戦開始!

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