第六話「考えてみれば簡単な話だった。最初からこうしておけば問題はなかったのだ」
間違いなく「まともなヤツが書いた正統派のライトノベル」では起こり得ない展開に突入する第六話。
だって普通さあ、全裸で若い女に迫られてこういう判断下すラノベ主人公なんておらんやん?
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き、七都巳大竜がお送り致します……。
「――ねぇ~いいのぉ~?
もし仮にここで私が通報しちゃったらぁ~
貴男警察に逮捕されちゃうけど――
――「黙れ小娘ぇ」
「は? あんたァ、私の話聞いてt――
――「黙れつっとろーが小娘ェ。てめえその耳聞こえてねえのか?
耳の掃除を怠ってんのか。
耳垢詰まってんなら横向けコラぁ~、
鼓膜を超えて蝸牛菅、
果ては脳まで穿ったらァ!」
「がぐぁっっ!? ごぉ、ぁが……!」
度重なる嘲笑と脅迫紛いの暴言に腹を立てた自分は、
衝動的に両中指で小娘の両耳を刺し貫いておりました。
序でに癖が出たか、図らずも奴めの両足も 少 々 床 へ 減 り 込 む 程 度 に は 踏み付けてしまいましたが……
まあ、精々数年ほど己の足で歩けなくなる程度でしょうし、
大の男へここまで強気に出られる此奴ならば大したことではありますまい。
此奴の学年などは存じ上げませんが、
さる博識な漫画家先生に曰く『女子高生は無敵にして最強』だそうで……
常人にとっての重傷や致命傷も、
無敵にして最強の存在たる女子高生か、
或いはその系譜に属す女学生や女子らにとっては
抜け毛で踵を撫でる程度で御座いましょうし。
……それはそれとして読者の皆様方、
以後暫く感情的になった自分の暴言が続きます。
大変申し訳御座いませんが、
何卒ご了承頂ければ幸いに御座います……。
「おうガキィ、なんだってェ?
この俺をどーするってンだよゴラァ~。
警察に通報ったるだあ?
上等だてめえ、やってみろや。
両手空いてンだ、端末弄るぐれーできるよなァ?」
「ぁ、が……ぐ、げぁぁ……!」
「オイどうしたぁ、通話してみろよ簡単だろ。
てめえらにとっちゃ端末なんざ身体の一部みてーなモンだろうしよォ~」
「ぅぅっ、ぐ……ぎぎっ……」
「なんだあ? 両耳塞がってて電話できませんってかァ?
スピーカーにすりゃ問題ねえだろ……とっととやれよ……
通報っちまえってンだよッ!」
「――ぐぎッッッッ!?」
腕か指に力を籠め過ぎた所為でしょう、
刹那にして小娘は息絶えておりました。
「あア゛……? 何勝手に死んでンだてめえ……
何勝手にくたばりやがってんだってんだよッッッ!」
この時の自分は、感情的になる余り内なる激情を抑え込むのもままならず……
「ッざけんな! ふざけんなゴラァ!
何を勝手に絶命してんだあッ!
誰が絶命していいと言ったァ!?」
恐らく江夏からの仕打ち等に由来する心労も相俟って攻撃性が増す余り、
普段の憤怒制御も忘れ、
暴力的な衝動のままに暴れ回る畜生にまで零落れておりました。
「誰が死んでいいつったァ!? 誰の許可だ!?
誰が死んでいいって許可出した!?
俺ァ出してねえ! 俺は出してねえぞゴラあ!
てめえ俺の許可無く死んでんじゃねえ!
散々イキり散らかしといてあっさりくたばんなゴルラァ!
っざけんなッボケがあ! 何様のつもりだてめェァアッ!」
我乍ら嘆かわしい惨状、
見るに堪えぬ失笑ものの有り様と言う他にない程、
その時の自分は醜悪にして愚劣で御座いました。
察するに当時の自分の知能指数は
ドブ川の小魚か道端の苔程度にまで落ち込んでいたことでしょう。
畜生の如く喚き散らかし、
命尽きた小娘の亡骸を侮辱的な迄に破壊し続ける……
何たる蛮行、何たる愚行。
実に恥ずべき行いに御座います。
「……いかん、な。こんな場所で油を売っている場合ではない……。
そうだ……装備を……
あの特殊部隊風の戦装束は、地球に帰りたいと駄々を捏ねた自分の為、
皆様方が拵えて下さった我が宝……
否、装束のみならず、肌着下着や防毒面、武器暗器の一つ一つに至る迄全てが宝……
断じて斯様な場所で喪う訳にはいかんっ……!」
どうにか落ち着きを取り戻すに至りましたる自分めは、
改めて奪われた装備の奪還と施設からの脱出を試みようと
思考を巡らせたので御座います。
然し乍ら……
「一体何事……?」
「全くこんな時間にどうしたのよ……」
「あら、あの男って確か……」
「そうだわ。ウチの傘下の漁師どもが拾ってきた献上品よね」
「てか、あそこに倒れてるのってまさか……」
「ウソでしょ、信じられない……!」
「そんな、殺したっていうの!? 全裸の男如きが、あの子をっ!?」
「……儘為らぬな、どうにも」
愚かしくも油断していた自分めは、
ぞろぞろと集まって来たこの建物の関係者どもに取り囲まれておりました。
「くっ、ふざけんじゃないわよ……!」
「たかが男如きの分際であたしらに盾突こうなんてっ!」
「その判断を後悔させてやる!」
「さあ、どう料理してやろうかしらねぇ……!」
推定百数十人前後……
各々容姿・年齢・種族等はまさに多種多様なれど、総じて例外なく件の小娘の同類……
即ち見掛け倒しの婢であろう事実は最早確認するに及びますまい。
「やれやれ……
極力迅速く物語を進めねばならんと謂うに、
大勢で取り囲みおってから……」
本作に寄り添って下さいます、
大変にお優しく親切な読者諸兄姉の皆様方としましては、
恐らく副題にて言及されし"爆乳彼女"の登場を
それはもう大層心待ちにしてお出ででしょうから、
この辺りは手短に進行めるべきなのでしょうが……
現実的にはもう暫くお時間の方頂かねばならぬ様子で、
重ね重ね謝罪を申し上げさせて頂きとう御座います。
皆様。大変に申し訳御座いませぬ……。
(果たして妥当か判り兼ねますが、お詫びとしてご覧に入れましょう……
異世界の神々より授かりし我が切り札"シンズドライバー"を活用しての、
圧倒的に容赦のない怪物的な戦いぶりを……)
幸いなことに、
我が体内に眠る切り札を婢どもは強奪えておらず、
自分めが構えを取り腹へ意識を向ければ直ぐに腰へ現れて下さいました。
腰に巻き付く禍々しい魔物を思わせる機械装置……
ヒーロー玩具を邪悪に気味悪く歪めて改造したような"それ"こそ、
神々より授かりし大いなる力たる我が切り札
"邪悪魔神器シンズドライバー"に御座います。
「いざ、顕現ッ」
[KEN-GEN!! INCARNATE LAZY DRAGON!!]
腰に巻かれし禍々しい装置を手順通りに操作しますれば、
我が身は白い光を伴う白煙に包まれ……
ものの十数秒で並みの人間より大ぶりな化け物へと姿を変えるので御座います。
『……さあ、面倒だが仕上げるとしよう』
変じたる姿はまさに異形の怪物……
辛うじてドラゴン型に纏まってはいるものの、
取り囲んでは調子付いていた婢どもが恐怖と不快感に悲鳴を上げずに居られない程に
不気味かつ恐ろし気な姿をしておりました。
その詳細につきましては……
長引いてもいけませんしまた次回、
冒頭にて詳しく説明させて頂きとう御座います。
次回、遂に大竜の持つ所謂"チート能力"の代表格『邪悪魔神器シンズドライバー』の力の片鱗が明らかに!