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第五十四話「仕事で母校のある街に帰ったらなんかどえらい事になってた件」

Xのアンケートで

「パルティータが単独で戦うとこ見たかった」

って意見が複数見受けられたので急遽執筆に至った便利屋魔女孤軍奮闘編です。


相方曰く昨日の時点で明晰夢デート編の継続を所望する声があったみたいなんですけど、

そっちに関しては便利屋魔女孤軍奮闘編がいい感じに終わるか、

さもなきゃなんか目に見えてウケが悪くなった時のてこ入れ、

もしくは「明晰夢デート編再開してくれ」って感想とかメッセージとかで直接意見を貰った場合に再開予定です。

ただ明晰夢デート編が前回で終わったのって、思いついたネタがあれ以外にあんま面白そうなの思いつかなかったからっていうのもあるのでどうなるかわかりませんが……

 やっほー、読者のみんな。

 こうやって地の文で語り掛けるのは初めてだね。

 あたしはパルティータ・ピローペイン。

 本作『追放Vtuber』こと『ついブイ』のヒロインをやらせて貰ってる、不老不死不妊不改変なしがない魔女の便利屋さ。


(なんて言うと『不老不死不妊不改変の時点でわりと"しがなく"はない』

 って突っ込まれそうだけど、実際魔術師とか異能者界隈だとあたしみたいなのなんてそう珍しくもないからね~)


 今回は作者の奴がどうしてもあたしを主役にしたエピソードを書きたいってんで、こうして主人公兼語り部を務めさせて貰ってるよ。

 ダイちゃんの古風なノリが好みのみんなはゴメンネ、あの作者が満足したらまた元に戻ると思うから。

 ――さて、説明もこの辺りにしてそろそろ本編に入ろうか。


「……当たり前だけど、流石に百何十年も経つと様子も結構変わるもんだねぇ~」


 場面はフィルミアーナ魔導国の首都シムプレックス。

 十年世話になった母校"フィルミアーナ国立魔導学院"のあるこの街へ、あたしはこの度久方ぶりに降り立った。


「最後に来たのは何時だっけか……」


 過去を懐かしみ、郷愁に駆られながらすっかり様変わりした街道を進む。

 ただ、今回この街に来た理由は勿論観光なんかじゃなく――


(……っと、あんまりゆっくりもしてらんないな。向こうは急を要する事態だって言ってたし)


 ――便利屋としての"仕事"で来てるんだ。



 ◆◆◆



「お久しぶりです。ジブリ―ル大臣、メルクリウス大臣」

「此方こそお久しぶりね、ピローペインさん。変わらずお元気そうで何よりだわ」

「ああ、久しぶり。まァ、私らの仲だし堅苦しいのはナシにしようよ」


 場所は変わって、シムプレックスの一等地に建つ高級料亭。

 あたしと向かい合って座るのは、魔導国政府高官で希少種族"神性血統ゴッズレリティブ"のリエル・ジブリール環境大臣と、同じく政府高官で"蛇王族ナーガラージャ"のハルーシャ・メルクリウス厚生労働大臣。

 共にただの一般人カタギじゃ対話どころか対面さえ難しい、世界的に見てもそこそこトップレベルの大物なのは言う迄もない。

 なのにあたしがこのお二人と気軽に会って話せてるのは、出自不明で天涯孤独のあたしにとって

 魔導国政府の皆さんが実質家族みたいな存在だからってのが大きいんだけど……

 その辺りの話はまた別の機会に。


「それじゃ、お言葉に甘えさせて頂いて……。てか、近頃どうなんです? どうもそちら方面の情勢には疎くて……」

「ああ、心配しないで。みんな相変わらず元気で賑やかだから」

「マシロー婆さんやホゥンの姐さんなんかは退任されたけど、権力者の肩書が外れたお陰で前より生き生きしてるしねぇ~」

「そうですか、それは良かった」

「まァ、マグラヴィットちゃんなんか元気過ぎて使用人困らせてるぐらいだから、一概にいい状況って言えるかは微妙だけどねェ」


 さて、概ね読者のみんなはお察しだろうけど……

 あたしと対面して親し気に話してくれてるこちらのお二人こそ、この度あたしに仕事を依頼してきた"依頼主クライアント"に他ならない。


「それで本題ですけど……依頼文によると魔導国そちらでなんだかきな臭いのが動き始めてるとか?」

「ええ、残念乍らどうやらそのようなの。……ピローペインさん、142年前の大事件を覚えてる?」

「142年前……あたしが18の頃の大事件っていうと、"煌めく星トゥィンクリンググスター"のヤツですか?」


 "煌めく星トゥィンクリンググスター"。

 パッと見だとなんかキラキラしてて綺麗なイメージがあるけど、これの後ろに"事件"がつくととんでもなくヤバいものを指す言葉になるんだ。


「そう。あの"煌めく星"さ……

 魔導国ウチの国民たちを大勢苦しめた、"ア連"の作り出した、吐き気を催す黄金色の絶望……!」


 グラスを握り潰さんばかりの勢いで憎々し気に毒づくメルクリウス大臣。

 けれど彼女がそうならざるを得ないくらい、"煌めく星"ってのは忌々しい代物なんだ。


 黄金色の邪悪"煌めく星"。

 一見すると五芒星型の黄色いラムネ菓子にしか見えないそれの正体は、エニカヴァーの長い歴史の中でも特に悪名高い凶悪な合成麻薬。

 嘗てエニカヴァー西部で猛威を振るっていた独裁国家"ア連"こと"アンドリミ社会主義共和国連邦"の独裁者レッソー主導のもと国家ぐるみで開発・製造されたこの薬物は、乱用者に強烈な幸福感と強大な異能を与える。

 薬での飛躍的なパワーアップを実感した乱用者は暴走し、結果的に事故や犯罪の増加に繋がる……けど、こいつの本当の脅威はそこじゃない。


 殆どの麻薬がそうであるように"煌めく星"には強い依存性があって薬効もさほど長続きしない。

 効果が切れた乱用者は異能を喪うばかりでなく、副作用として凄まじい絶望感と心身の衰弱に苛まれる。

 結果的に乱用者は"煌めく星"を売人から買い求めるけれど……

 悲しいかな、乱用回数が増える度に薬効の持続時間は減少するし、効果を得るのに必要な服用量だって爆発的に増えていく。


 しかも"煌めく星"はそれそのものがとんでもない猛毒でもある。

 一度摂取したら最後、乱用者の体組織は所々壊死していき、最後には肉がそげ落ちて骨が見えるような死体になって命を落とすんだ。


「……本当にあれは酷かったですよね。

 幸いにも国立魔術学院(あたしの母校)から被害者は出ませんでしたけど、

 大本のア連やここ魔導国は元より、ビットランス、ベイレイン、ユアキクル、

 カヴァナス、エニジ・サンディ、瑞国、サイズエン・クエイ……

 他にもあちこちで蔓延して大勢の被害者が出たって……」

「そうね。税関が厳しくて麻薬市場も小さい陽元や地上からの干渉が困難なゼログラフィア、

 あとはキャッソスタとか各種地底・海上・海底国家なんかは被害を免れたようだけど……」

「はんっ、例え被害がどれだけ少なかろうが関係ないね。命を守り救う為の薬学の叡智を、あんな形で悪用したってだけで極刑もんだよ……!」


 ご自身が医療従事者上がりだからだろう、メルクリウス大臣の怒りはそりゃもう凄まじかった。

 けどあたしだって"煌めく星"は大嫌いだし、それを国ぐるみで生み出したア連……

 もっと言えば独裁者の書記長レッソーは殺したいぐらい憎んでるから、彼女の気持ちは痛い程わかるんだ。


「……それで、"煌めく星"がどうかしたんですか?

 あの薬物は当時の最終的な被害を重く見た各国政府が法整備を徹底、加害者のア連政府(レッソー)さえ流石に反省して製造・所持を全面禁止にした上に関連施設も全部解体、

 果てはヴァルスメイト神議会が総がかりで物理法則の根源を書き換えてまで二度と製造できなくした以上、もう世に出回ることはなくなったって話じゃないですか」

「よくそこまで覚えてるわね。そう、確かに貴女の言う通り"煌めく星"は神々の介入もあって、ここエニカヴァーでは二度と作られることは無くなったわ」

「そう、"煌めく星"はね……今回ウチを騒がせてるのはもっとヤバい、別の"新型麻薬"なのさ……」

「新型の、麻薬っ……!?」

次回、魔導国を蝕む新たなる脅威とは?

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