第五十一話「制約無き明晰夢の世界とはまさに我らの愛の巣であるが故、存分に羽目を外させて貰うとしよう……いっそ読者が引く程にな」
明晰夢の世界に降り立った大竜を待つものとは……
(……どうにか理解できたが、いやはやとんでもないな……)
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回より引き続き、冒険者の財王龍こと元Vtuberの七都巳大竜が、明晰夢の世界より己自身の設定を理解し乍らお送り致します。
(よもやこの屋敷と庭が、全て我が財産だなどと……)
屋敷の中をある程度進む自分の脳内に流れ込んできた"夢世界での記憶"。
その実態としましては、
『亡き親族より豪邸と広大な庭園を相続し、荒れ放題であった庭園を見事再生させる偉業を成し遂げた男。
現在は屋敷で暮らし乍ら、庭園を再生させた経験を活かしガーデンコーディネーターとして活躍している』
といった具合でして……
(全く予想できなんだ……いやそもそも何故明晰夢の中で恋人と乳繰り合うだけなのに、そんなわけのわからん設定が必要なのか……)
どうにも理解が追い付きませんが、少なくともよい夢なのは確かです。
ともすれば気になってくるのは……
(パル殿の"設定"、だな)
薬と装置が正常に作用していれば、彼女もこの屋敷……或いはこの時空の何処かに現着し、自分と同様に設定が反映されている筈です。
(開発者様の設定された"夢の内容"が余程複雑でもなければ、十中八九この屋敷で暮らしておられると考えて間違い無かろうが……
ともすれば設定はなんだ? 希望としては現実同様自分の恋人、或いはより進展した関係として婚約者や妻を所望したい所だが……)
などと思案し乍ら捜し回ること暫し……
香ばしい料理の芳香とヒトの気配を気取った自分は、意を決して炊事場へ足を踏み入れます。
すると……
「ああ、お早う御座います。御主人様っ♪」
(なんともはや、そう来たかっ……!)
そこに居られましたのは、エプロンを身に着け今まさに調理後の後始末を終えたらしい一人の侍女……
否、"侍女様"に御座いました。
「丁度朝食の準備が出来た所ですよ。相変わらずグッドタイミングですねっ☆」
自分を魅了してやまない絶世の美貌に、敬語でも変わらぬ陽気で軽妙な喋りと態度……
見紛う筈も御座いません。
その"侍女様"こそはまさしく我が最愛の女性、魔術師パルティータ・ピローペイン殿に他なりませんでした。
(まさかの侍女とは……! 実に素晴らしい。最高ではないか……!)
当時の自分の心情としては、驚愕三割・歓喜七割といった所でしょうか。
予てより彼女の美しく愛らしいメイド姿を思い浮かべ、何時の日か"そういった性行為"をも所望していた自分にとっては、
願ってもない最高のシチュエーションに御座いました。
「ああ、お早うパルティータ……相変わらずの迅速かつ的確な仕事ぶり、恐れ入るよ。
貴方のような素晴らしいメイドの支えがあればこそ、自分もこうして生きていられるのだなと実感させられる……」
「いやぁ~それほどでもありませんってぇ~♪
でも感謝して頂けたのは素直に嬉しいです。有り難うございます☆」
可能な限り敬意を払い雑に扱わぬよう、それでいて主君らしさも損なわぬよう、細心の注意を払い言葉を紡ぎます。
本音としては此方も敬語を使いたかったのですが、何故か彼女に向けて紡ぐ言葉の全てが対等語になってしまいます。
(女性を見下し偉そうに振る舞う、時代錯誤な古臭い男のようで聊か気に食わんが仕方ない。
これもクダギツネの設定ならば従う迄だ……)
妥協した自分はそのまま椅子に腰掛け、侍女たるパル殿が準備して下さった極上の朝食を堪能させて頂きました。
(へ甘へ )<味は紛れもなく絶品につき……
「ご馳走様でした……」
さて、朝食を終えましたらば続いては仕事に御座います。
と言ってもこの明晰夢《時空》での自分はガーデンコーディネーター……
会社に通勤する必要はなく、職務は主に在宅で熟します。
よって必然、侍女たるパル殿とは頻繁に顔を合わせることとなり……
「御主人様、失礼しますねー。ちょっとこの棚修理しなきゃなのでー」
「うむ、宜しく頼むぞ」
「いよっ、と……」
(……ぬ、っっ!
スカート越しに、尻のラインがくっきりとっ……♥)
彼女が作業の合間に見せる一挙手一投足……
主を誘惑していると曲解しかねぬような所作に、自分は思わず見惚れてしまうので御座いまして……
「せーのっ、ほっ」
(むっ、胸がっ……♥ 揺れっっ……♥)
「あっ、すみません御主人様〜前失礼しますねー」
「う、む……構わんぞっ」
「すぐ退きますからー」
(おぉっ……尻が間近にっ……♥ だが彼女は作業中、手を出して妨害などしてはならぬっ……!)
「ていっ!」
(――!?)
「――よし、取れた……」
(惜しかったな……あと少しでスカートの中が見えておったろうに……♥)
とまあこんな具合で、事ある毎に彼女の後をついて回っては視姦するようになってしまっておりました。
(全く己の下賤さにはほとほと呆れ返るばかり……現実でこのような行為に及ぼうものなら最悪民事裁判ものであろうな……)
其の度内心で"自嘲や自省"を試みるものの、結局のところ"自重や自制"にはまるで至らず……
(……そもそもこの世界は明晰夢《非現実》な上、彼女は自分の恋人であり性的行為にも貪欲な程積極的……
何なら普段から頻繁に誘惑され、乗って来ぬからとお叱りを受けたり引っ叩かれさえする……
であれば別段、何も躊躇う必要などないのではないか……?)
挙げ句、魔が差す余り外道じみた開き直りに至ってしまったのでした。
(とは言え迷惑もかけたくはない。最低限の筋は通さねばな……)
といった訳で思案した自分は、作業を一段落させ休憩へ向かう途中のパル殿へ声を掛けます。
「……パルティータ、少しいいかな」
「はぁい、なんでしょう御主人様っ☆」
「すまんな。すぐ済むから……そのまま……動かぬように……」
「……? どうしたんです御主人様? あたしに何か問題でも――
「せいッ!」
「――――!?」
意を決した自分は素早く腕を伸ばし、パル殿のスカートを真正面から堂々と捲り上げます。
露わになる太腿と、そして下着……
(おおっ……♥ し、純白っっ……♥)
それはほんの一瞬の出来事でしたが、然し自分には数秒或いは十数秒にも感じられました。
「ぁっ、やぁん♥」
すぐさまスカートの前を押さえるパル殿……
伏し目がちに顔を赤らめた彼女は、微かにいやらしくほくそ笑み乍ら擦り寄り、呆れた様子で語り掛けて来ました。
「んもぉ、御主人様ったら……♥
イイ歳こいた殿方がスカートめくりだなんて、そんな子供っぽいイタズラしたら"めっ"、ですよぉ♥」
彼女の語り口はあたかも幼子を優しく咎め窘めるかのように甘ったるく、腕組みにより持ち上がり強調された両の乳房
――谷間こそ隠れているものの、薄い生地が密着しており破壊力は抜群でした――
の存在も相俟って劣情を掻き立てられずに居れません。
「そりゃ御主人様とあたしは"そういう間柄"ですけどっ♥
だとしても親しき仲にも礼儀ありっていうか……やってイイこととワルいことがあるじゃないですかぁ?」
成る程。
どうやら明晰夢世界でも彼女と自分は実質恋仲のようです。
正直、当初主従関係と知った時は
『親類縁者より不本意な政略結婚を強いられ、それでも尚周囲の反発を押し切り侍女との真なる愛を選ぶ,、所謂"禁断の恋"に発展する展開かもしれない』
と、半ば本気で不安でしたもので……
「何よりあたしだってこれでも一応、師匠から御主人様のこと任された身ですからぁ?
素行不良とかに関しても指導・矯正してかなきゃいけないんですよねぇ♪」
「指導・矯正、と言うと……?」
「要するに、
『メイドにイタズラなんてしちゃうような、わっるぅ~い御主人サマには" オ シ オ キ "ですからねっ』
~ってコトですよぉ~♪
ねぇ~御主人様ぁ? 幾らあたし達が親族公認の仲だとしても……
メイド風情なんかからオシオキされちゃうなんて、そんなの流石にイヤですよねぇ?」
「……」
「ま、今回は大目に見ますケドっ♥
次やってきたら立場的にも容赦できないんで、くれぐれも"いいコ"にしてて下さいね~♪」
返答を待たず踵を返した彼女は、そのまま立ち去ろうとしますが……
さりとてあれしきで大人しく引き下がる程に自分が"いいコ"でないのは、読者の皆様も既によくご存知かと思います。
(つまるところ、先程の警告は彼女なりの"フリ"と見て間違いないっ……!)
確信した自分は、アサシン特有の動きで気配を消して彼女の背後へ忍び寄り……
「――待てぃ」
「ひゃんっ!?」
「……捕まえ、たぁ♥」
背後から抱きすくめるように密着、両の手でその豊満な左右の"お胸様"をそっと包み込み……
そのままゆっくりと、優しく揉みしだかせて頂くことと致しました。
(正しからざる主君で結構……元より自分は悪党故になっ♥)
相方に頼んだアンケによると
本作の下ネタやエロは結構読者ウケもいいようなので
久々に(あくまで成人向けにならないような、漫画とかラノベで許容される程度にですが)フルスロットルで参りたいと思います。
これが商業媒体で出た作品だったら倫理的にどうのこうのって文句も言われそうなんですけど、
そもそもこのカップル元々かなりの狂人なので倫理とか常識とか逸脱しがちな所結構あるんですよね~。