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第四十七話「世間ではそれを『ブーメラン』と呼ぶのだろう」

案件クエスト遂行に際して大竜が犯してしまった罪とは!?


……まあそもそもこのオッサン、名前の由来が「七大罪竜」のアナグラムだから存在そのものが罪と言えばそうなんだけど(都巳≒罪)


「ならば記憶力が鶏程度しかないお主に教えてやろう!

 今この場にの集いし我ら怒羅厳棲麗屋亜ドラゴンスレイヤアはなぁ財王龍ッッ!

 お主の案件遂行(仕事)と称した数多の悪事により不幸な目に遭わされた、被害者たちの集まりなのだっ!」

「……はあ?」


 嘗てアクメージョス首領の護衛であった竜人の女剣士から告げられた真実……巷を騒がす愚連隊の正体は、どうにもしっくり来ないもので御座いました。


(……何を言っとるんだ、こいつは?)



 読者の皆様方、毎度お世話になっております。

 前回に引き続き、冒険者の財王龍こと七都巳大竜がお送り致します。



 自分めを追い回す謎の愚連隊怒羅厳棲麗屋亜(ドラゴンスレイヤア)……

 構成員である女剣士曰くその正体は指し詰め『財王龍被害者の会』といった集団のようですが、先ず以て自分にはその単語の意味がどうにも理解できませんでした。


 或いは眼前の女剣士ならば、確かにある意味自分の"被害者"であると言えなくもありませんが、とは言えそれも本を糺せば奴の自業自得。

 自分が奴はじめアクメージョスの連中を駆除したのは敵対したからであり、敵対の理由は冒険者ギルドにエンツアム民間英雄連盟様より案件クエストの依頼が舞い込んだ為……

 更に言えば連盟様がギルドを頼ったのは連中アクメージョスの狼藉が余りにも度し難く、市井に実害が出ていた為で御座います。

 つまり連中がそもそも悪事をやめて改心さえさていれば、自分の被害に遭うこともなかったわけでして……


(その上罪を悔い改める機会も与えてやったのだ……悪党相手には破格の対応であろうよ)


 無論、それを眼前の竜人剣士に伝えたとて馬の耳に念仏なのは言うまでもありません。

 というか何でしたら、元よりこの連中と無理に分かり合うつもりなど毛頭御座いませんので……


(とは言え、他の"被害者"の言い分も聞くだけ聞いておいてやらねばな)


 そう思い、比較的謙虚な態度で他の"被害者"らにも話を聞いてみました。

 察するにこの連中はあの竜人剣士の同類……即ち"財王龍(自分)案件クエストで相手取り壊滅させた犯罪集団"の生き残り辺りであろうとの推測からでした。


(例えばビットランスの鉄道路線を走る各列車で頻発していた痴漢や盗撮の元締め『十五夜連合』……

 或いはマルヴァレスの温泉街ファナウタを地獄に変えた元凶である覗き魔・窃盗犯・混浴鰐等のコミュニティ『ナイトスカイ』……

 はたまた実際に役者が性犯罪に手を染める様子を撮影し"リアルAV"の品名で商品化していた悪徳業者『ALOEM』……

 盗賊や愚連隊は名簿まで作って取り逃がさんように徹底している以上、こういった軽犯罪や迷惑行為を行う連中の残党勢力と考えるのが妥当だが……)


 然し実際"被害者"らの口から語られた自分めの"罪状"はというと……



「財王龍! お前って奴は……よくも俺のかよこママを殺してくれたなぁ!?」

「……は?」


 "被害者"の一人であるエルフの口から出た、思いがけない言葉。

 一瞬何を言われたのか理解できず……困惑せずにいられませんでした。

 然しそんな自分の困惑を他所に、"被害者"らは次々声を荒げます。


「そうだ! オレのさゆりママもお前に殺されたんだ! 彼女はまさしくオレのママになってくれた運命の女性ひとだったのに……!」

「みずほママもこの男が殺したんだ! 彼女とばぶばぶしながら男性構成員(腰ヘコ奴隷)としてアクメージョスに尽くすのが、僕に残された唯一の生き様だったのにぃ……!」

「きょうこママもですよぉ~! この男は事も在ろうにっ! 彼女のバブちゃんである私の目の前で!

 あの美しく優しくてエッチだったきょうこママを殴り殺したんですっ!」

(……此奴ら、もしや……)


 そこで自分は漸く察知したので御座います。


(……民間英雄(ヒーロー)かっ!? エンツアム共和国のっ!)


 そう、何と事もあろうに"怒羅厳棲麗屋亜ドラゴンスレイヤア"に所属する"被害者"ども。

 その内一定数の正体とは、嘗て愚連隊アクメージョスに拉致され、女怪人による"調教"を受けた後基地内にて"飼育"されていた少年或いは青年ら……

 即ち、エンツアム民間英雄連盟に所属していた"嘗ての民間英雄たち"だったので御座います。

 過去形なのは件の騒動にて救助された後、連盟を離反したからに他なりません。

 その経緯と理由としては奴ら曰く……


「オレらは連盟に騙されていたんだ! 奴らはオレらを誑かして不当にこき使っていた!

 だがアクメージョスが……ママたちがオレらを救ってくれた! オレらはママたちの元で暮らすのが何よりの幸せだったんだ!

 ママはオレらを常に肯定ほめてくれたし、オレらが望めばなんだってしてくれた!

 所詮この世はディストピア、あそこはオレらに残された最後の理想郷ユートピアだったんだ!

 それを財王龍、お前ってヤツはぁぁぁ〜っ!」

(やれやれ、何が『冒険者よりも健全で公正な正義の戦士』だ。全員が全員でないにせよこんな連中に縋らざるを得なかったとは……連盟はどれだけ人手不足だったのか)


 是程迄に堕落しきり、連盟の掲げる"民間英雄の理念"に掠りもしていないとは、滑稽である以前に驚愕と言わざるを得ません。


(……まあい。これでもまだ、他の連中は幾らかマシな可能性も残っておる。

 と言うか、そうでないと困る……!)


 とまあ、一縷の望みを託して(?)居たのですが……



「ルフレイヌ城のサキュバス殺した件忘れてねぇからな!? 折角いい感じに追い詰められてあと少しでエロぉ〜く頂かれるトコだったのにぃぃぃ!」

「そうだよ!

 僕らサキュバスに逆レイプで吸い殺される為に冒険者になったのに、お前のせいで何もかも台無しじゃないか!」


「ワレなにさらしてくれとんねん!

 十五夜連合はんの痴漢・盗撮動画は編集丁寧なお値段以上のクオリティでめっちゃ重宝しとったのにから潰してくれてよぉ!?」

「ALOEMもオドレが潰してくれたらしいな!?

 ワテらあそこのリアルAVでしかヌけへん身体んなってもうてんねんぞ!?」


「オーウ!

 ユーがボウケンシャのワンロン・ツァイデスかバカヤロコノヤロー!?

 イキツケのアンダーグラウンド・フーゾク、ユーがパニッシュメントシてくれヤガりましてかコノヤロクソヤロー!?」

「ユーのセイィーでミィィーらビットラァァーンスのメスブータをファーックデキなクナータデェェース!

 ドナイオトシマエツケてクレーマスカァァー!?」


「この外道がっっ! よくも俺とマチ子さんの仲を引き裂いて生活を破滅させやがったな!?

 俺と彼女はただ愛し合っていただけじゃないか!

 確かに俺も彼女も既婚者で、俺達は義理の親子の関係ではあった! つまり世間一般的に俺達の関係は不倫なのかもしれない!

 だとしても俺達は愛し合っていたんだ! 愛さえあれば、他は些細なことじゃないか!

 なんでそんな当たり前のことがわからないんだよ!?」


「つぁつぁ、つぁっ、財王龍ツァイ・ワンロンンンン~!

 きさっ、きっさまっはぁっなんということをしてくれたのですかなぁ~!?

 せっ、拙っ、拙者たちのアイドルであるびっ、

 美少女ギャル怪盗プリティミッケタソをよくもっ!

 あんな、んな、あんな無残なころ、殺し方しなく、ってもっっ!」

「――そっ、そそそそっ、そもそもミッケたんの怪盗活動での被害総額がしめて百二十万ツボージ換算して約一億四千万ココスキだそうだが逆に言えば彼女は奇跡の美少女ギャル怪盗なのであって怪盗活動と美貌や健康の維持の為には莫大な金が必要なのであってミッケたんの絶対的な美貌と彼女の活躍を拝めるのであればその程度は安いわけであってなんなら怪盗は民衆にとって最後の希望というか政府の連中の方が仕事もせず変な陰謀ばかり考えてる癖して高い給料取り過ぎなわけであるからして――」


 その他、"自称・被害者"らの主張は何れも支離滅裂で筋の通らない、逆恨み由来の暴言や不当な言い掛かりばかり……

 第三者目線で見ても"正当な"主張などただの一つも無かったので御座います。




(……駄目だ此奴ら。早く処分どうにかしなくては……)



次回、救いようのないブーメラン投擲集団を大竜はどうするのか!?

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