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第四十三話「海上都市の激闘。相手取るは鱶の王女」

大竜の変身形態お披露目程度に序盤でちょろっとやる程度だったのが一話丸ごと使っちゃったよ……

「ギシャアアアアアアアアッ!」

「なんたる生命力だプリンセス……あれだけ傷を負わせて尚引き下がらぬとは!

 すまんなァ、どうにも見縊っていたようだ。

 ……やはり貴様を相手取るにあたって、手抜きや油断は禁物らしいッ!」


 読者の皆様、毎度お世話になっております。

 前回より引き続き、冒険者の財王龍ツァイ・ワンロンこと七都巳大竜ナナツミダイリュウが案件を遂行し乍らお送り致します。


「ジャアアアアアアアッ!」

「まあそう焦るな、落ち着け。我々の関係はあくまで敵同士、命を奪い合う間柄に変わりはない。

 ただ、見通しが甘かったのだ。或いは躊躇っていたのかもしれん。どのみち適切な姿勢ではなかったワケだがな……」


 舞台は海上に建てられた人工都市"ウィナニス・シティ"。

 古くはエニカヴァー各地の海底都市開発計画に於ける拠点として名を馳せ、現在では海底都市と地上の文明圏を繋ぐ玄関口の一つとして名高いこの都市へ、自分めが降り立ちました理由……

 それは先程も述べました通り"案件クエスト"遂行の為でした。


 肝心の依頼内容は都市とその周辺海域を脅かす"壁抜鱶スルースイム・シャーク"

……即ち突然変異により"あらゆる空間を水中の如く泳ぎ回る異能"を身に着けた獰猛なイタチザメ風の怪物なのですが、

 その中でも悪名高き超大型個体、通称"王女プリンセスグーラ"の討伐に御座います。


 こちら、自分が嘗て受領させて頂いた初の案件である実験体どもの捕獲に比べれば"標的を殺してしまってよい"だけ難易度は低う御座います。

 よって自分も当初は『住民の方々に避難して頂いた上で討伐すればそう苦戦すまい』などと高を括っておりましたが……


(その見通しは余りにも甘かったと言わざるを得んなァ~)


 流石"王女"の名で呼ばれるだけありグーラは予想外の強敵に御座いました。

 巧みな策で翻弄しつつ決死の覚悟でかなりの重傷を負わせて尚、先程のようにこちらへ敵意を向け襲い掛かって来るだけの余裕があるわけですから……


「出来れば、あまり使いたくはなかったのだ。この見事な"ウィナニス・シティ"を傷付けるのは不本意であるからして――

「ガアアアアアアッ!」

「うおっとぉ! ……遮るなよ……!」


 容赦のない突進……跳躍があと一秒遅れていれば助からなかったでしょう。


「だが考えてみれば……貴様は今の今迄数多くの命を奪ってきた。

 都市の民はおろか、生態系を支える他の海洋生物をも必要以上に食い荒らし、挙句食いもしないあいてを戯れで殺すなど……まさに捕食者の域を逸した狼藉。

 天より授かりし頂点捕食者としての使命の放棄! それに手を染めた時点で貴様は死なねばならぬ……

 貴様の討伐とは即ち大義……大義を為す為ならば、多少の犠牲も止む無しであろうよ、なあ?」

「グアアアアアアアアッ!」

「てェいッッ!」

「グガアアッ!?」


 迫り来る王女グーラ……その動きを読み切った自分は、垂直に跳躍しながら奴の鼻先へ蹴りを叩き込みます。

 サメの鼻先……索敵に用いる"ロレンチーニ器官"の集中しているその部位が弱点であるのは怪物"壁抜鱶"も例外ではないようで、

 思わぬ刺激に奴は混乱、その余り異能で水中の如く潜行していた路面から飛び出してしまい、そのまま打ち上げられてしまう結果に……。


「"陸に上がった河童"ならぬ、"路上のサメ"か。哀れなものだな、王女グーラ……そのまま動くなよ」

[SIN'S DRIVER!!]


 腹に手を添え、ドライバーを展開……"大義を為す"為の変身に取り掛かります。


「いざ、顕現!」

[KEN-GEN!! INCARNATE STARVE DRAGON!!]


 足元より現れた機械的なワニ顎に挟み込まれ、それ諸共背後へ生じたブラックホールに吸い込まれ……

 続けて現れたホワイトホールを内側からこじ開けて現れる、外骨格に覆われた漆黒の巨躯……


『我が罪悪!』『我が貪婪どんらん!』『我が重圧!』

『『『即ち罪竜! 底無しの貪食ボトムレス・ラヴェノス!』』』

『ゴオオオガアアアアアアッ!』


 所々が狗や、或いはハエのような、三つ首で、尾の背面にさえ口の備わるワニの化け物……

 即ち、暴食の罪を宿す形態"底無しの貪食ボトムレス・ラヴェノス"に御座います。


『潜るなよ王女プリンセス!』

『豚角煮!』『鱈白子軍艦!』

『ヴゥゥゥゥマアアアアアア!』


 ……精神汚染としましては、以前迄は単なる凶暴化に過ぎなかったのですが、ここ最近はそれに加え一つの首が喋るごとに残る二つの首が自分めの好物の名を叫び、更に尾の口が吼える……

 といった具合でして、しかも汚染が進行すると周囲の物体が"その時に最も食べたいもの"に見えてしまい、眼前の"それ"を食わずにいられぬ衝動に苛まれてしまうようになっておりました。

 言う迄も無く"そうなってしまう"のはかなり厄介なものですから、必然この形態も極力短期決戦を心掛けねばならぬ形態なのは間違いありません。


「グゥゥ……ガアアアッッ……!」

『潜るなと言うとろうがァ!』

『鰤照り焼き!』『麻婆豆腐!』

『ヴゥゥゥゥマアアアアアア!』

「ゴガアッ!?」


 落ち着きを取り戻したらしい王女グーラは再び地面へ潜ろうとしましたが、当然それをされては厄介なためある程度空中に浮かせて逃げ道を塞ぎます。


「ガアアアアッ! シャガアアアアッ!?」

『断じて逃がすものかァ!』

『烏賊天!』『ローソンの月見トロロ蕎麦ァ!』

『ヴゥゥゥゥマアアアアアア!』


 本形態の固有能力は重力操作及びそれを応用してのブラックホール生成……

 主には敵への妨害や移動の際の補助へ用いる能力であり、敵を空中に留めたまま動きを封じるなど幅広い応用が可能に御座います。


「ゴガッ! ガッ! グガアアガッ!?」

王女プリンセス

 貴様には苦戦を強いられてきたが、それもいよいよ此処迄ここまでだぁ!』

『鮭塩焼きィ!』『焼き肉豚トロォ!』

『ヴゥゥゥゥマアアアアアア!』


 さて、動作を封じてしまえばあとはこちらのもの……

 重力操作の応用で引き寄せて、動けない所を食らいつき……


「グガアッ!? ゴガアアッ! シェギエエエエアアアアッ!」

『無駄だ無駄だ! 如何なる抵抗も意味を成さぬわ! せめて残さず喰らうてやる故、餌の気持ちを味わって逝けェ!』

『丸亀製麺に期間限定で置いてあったチーズ竹輪磯部天!』

『くら寿司のあぶりチーズサーモン握りィ!』

『ヴゥゥゥゥマアアアアアア!』


 あとは生きたまま細切れにして、食い殺すだけで御座います。

 結果、壁抜鱶の王女グーラはものの一分足らずで我が腹に収まり、その生涯と共に此度の案件も終わりを迎えたので御座います。



(=甘=)<対処が早かったお陰で存外被害は出ませんでしたなァ。



次回、尚も順風満帆にクエストをこなす大竜に忍び寄る怪しい影が!

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