第四十一話「ところで疑問なのだが、何故民間英雄の皆様はこんな雑魚どもに惨敗したのだろうか」
~お詫び~
今回は昨日の大体22時ぐらいで百数十字も出来上がって無かったのを
今日どうにか三千字代まで慌てて書き上げたのでクオリティが何時にもまして低いかもしれません。
それでも可能な限り楽しめるようには書きました。
宜しくお願いします。すみません。
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き冒険者の財王龍こと七都巳大竜がお送り致します。
「んもぉ~! せぇぇ~っかくママがボクちゃんたちとばぶばぶしてる時にっ!
そんなワルい子はオシオ――」
「ふンッッ!」
「キブゲッ!?」
喜劇役者風のボケで堂々と啖呵を切り、更に洋画じみてゆっくり堂々と、十数歩ほど進んだ辺りで漸く此方に向かってきた"飼育担当"の女怪人……
その腹立たしい顔面に拳を叩き込んでやれば、奴の骨は尽く粉砕され吹き飛び乍ら絶命します。
「なぁっ……!?」
「そんな、みずほママが一撃でっ……!?」
「なんてことしてくれるのよこのガスマスク……!」
「絶対に許さないわっ!」
「お仕置きなんて生ぬるい……徹底的にねじ伏せて奴隷でもしてやろうかしらっ!」
「ボクちゃぁん、ちょっとまっててちょーだいね♥ ママいまからこわ~いワルモノをやっつけてくるからねっ♥」
(……今更殺意を向け始めたか)
戦闘者としては勿論、悪党としても三流以下と言わざるを得ぬ有り様に御座います。
果たして、これで実力が高ければまだ救いようもあったのでしょうが……
「えぇーいっ!」
「らァッ!」
「ぐぶげぇっ!?」
飼育担当の女怪人どもときたら、能力も"飼育"に特化しているが故か戦闘はからきし。
「きょ、きょうこママっ! このっ、男の癖にふざけた真似を――」
「おリアッ!」
「ぐぁがっ!?」
ろくな鍛錬も強化もない肉体は余りに脆く、動作が隙だらけなのもあり軒並み雑な打撃の一発でほぼ即死するなど、
その弱さたるやいっそ滑稽を通り越して憐れみすら覚える程……。
「くっ……! こいつ、さては意外と強い……!?」
「こうなったら、私達も本気を出すしかないようねっ!」
(本気を出す迄が遅い……というか、あの口ぶりでまだ本気でなかったのか……?)
片手で数えられるほどの怪人を駆除した辺りで、連中は各々武器を手にし始めたようでした。
スタンガンやテーザー銃といった実用的なものから、鞭や裁ち鋏のような辛うじて武器と言えなくもないもの、
果ては電動マッサージ機や巨大ラトルといった武器とは言い難いものまで、内訳は様々に御座います。
ただそれでも、使い手に相応の技量や練度が無くば如何なる武器も宝の持ち腐れに過ぎぬので御座いまして……
「これでも喰らって、シビれなさーいっ!」
「どこを狙っとるか間抜けがァ」
「ぉぐえっ!?」
「す、隙ありーっ!」
「貴様がなッ」
「なぎょっ!?」
テーザー銃の狙いは外し、スタンガンでの奇襲も隙だらけ。
「かよこママ! ゆりこママっ! このっ……これでも喰らいなさいっ!」
「遅い……」
「うげぁっ!?」
高い汎用性を誇る自動拳銃とて、距離も取らず構えるのも遅いとあってはただの飾り……
ともすれば、間合いを詰め乍ら仕留める程度造作もありません。
「てやぁーっ!」
「振りが大き過ぎる……」
冗談のように巨大なラトル……
鈍器の如く振り下ろされたそれは見た目の威圧感なら一級品でしたが、大振りなため回避は造作もなく。
「背後を取ってくれと言っているようなものだぞ」
「がっ!? なぁっ! このっ! 離しなさいよっ!」
背後を取り組み付くのも容易なのでして……
「ママに触っていいのはボクちゃんたちだけなんだか――」
「ヘイッ」
「ら゛あ゛っっ!?」
然程頑丈でもない頚椎などは、ただの肘打ち一発もあれば乾麺の如く叩き折れてしまうので御座います。
「……どれ、打撃も飽きた。次は関節技を使ってみるか……」
と言って、普通に関節技を使うのもそれはそれで味気無う御座います。
よって趣向を凝らしまして……
「残りは丁度十五人か……よし、決めた。
『王様戦隊』の主要レギュラーキャスト……
戦隊メンバーと敵勢力幹部怪人の演者の名前を挙げ乍ら、演者の名前一つにつき貴様らを一人ずつ駆除していくとしよう……」
我乍ら突発的で意味不明かつ極めて無意味な思い付きであるのは億も承知……
なれど、ただ淡々と不快な雑兵を虐殺するのも案外つまらないもので、こうして何かしら楽しみ乍らでもなければモチベーションの維持が困難なので御座います。
「ふん、何を意味不明なことを言っているのかしらね……!」
「ほんと、やっぱり多少腕っ節が強くたって、男なんてただの下等生物なのよ……!」
「わけわかんない作戦立てて強がって、つまりあんたもう限界が近いんでしょう!?」
「今までは好き放題やられっぱなしだったけど、ここからは逆転してやるんだから!」
「そもそも『王様戦隊』のヒーローと敵幹部の総数って十二人でしょ!?
数が足りてないじゃないの! やっぱ男ってバカなのね!」
何やら好き勝手口々に言っておりますがこの連中に何を言われようと最早自分にとってはゲンゴロウの屁のようなものでして……
「好きに言っておけ……」
軽く聞き流し、距離を詰めるべく踏み込むだけで御座います。
「何よあんたなんか! ただちょっと器用なだけの男の癖に――」
「煽る前には攻撃して来んかァ……」
「ガっっ!?」
「自称邪悪虫人王ィ!」
「カッヴァア!?」
手始めに一人。
「よくもさゆりママを……! 喰らいなさい、おしおきビュート――」
「鞭の英名はウィップだ……」
「グウッ!?」
「特攻技巧叡智王ッ!」
「グバガッ!?」
続いて二人。
「えみこママっ……! こんのぉ、男なら男らしく地面に這いつくばって――」
「貴様が死ね……」
「ギュっ!?」
「豪奢美麗医女王!」
「ドッボェ!?」
更に三人。さて、ここからは"巻き"で参ります。
「不動絶叫裁判長ァ!」
「ヴァヂ!?」
「性悪献身百姓殿下ッ!」
「ヂョッガア!?」
「長寿滑走行間混血王!」
「アビッズ!?」
「自己犠牲不器用兄貴王ォ!」
「ソレモアンノォ!?」
王様戦隊は七人組。これは特撮ファンにしてみればほぼ常識に御座いましょう。
さて、折り返し地点も近付いて参りました……
「卑劣虚飾外道椿象!」
「ツバキゾウッテナニィ!?」
「篭絡阿婆擦れ蛭!」
「ブイッチィ!?」
「胡乱非謝罪天牛虫!」
「ニンジャアッ!?」
「秘匿鈍重変幻鬼児!」
「ミノォ!?」
「静謐不死神吸虫!」
「ロイコクゥ!?」
いよいよラストスパートに御座います。
「くたばれ……極悪緩歩糞滓害悪ァァッ!」
「ゴガ!? ギッ!? グゲェッ!?」
この時始末したのは特に癪に障る女でしたもので、首の前に両腕をへし折ってやりました。
「次はお前だ……暴虐緋想奈落地虫王ァ!」
「ヅゴアッ!?」
さて、これにて十四人を始末し残るは一人なのですが……
「ひっ! ひいいっ! 嫌っ! いやあっ! 助けてっ!
なんでもする! なんでもしてあげるから命だけはっ!」
予てより小物臭い態度であったその女……先程迄の威勢は何処へやら。
次々殺される仲間の姿に恐怖心を覚えたか、下等生物相手に命乞いを始めたので御座います。
とは言え、その程度に態度を豹変させる女などは今まで何人も居たもので、今更何ら珍しくも御座いません。
然し乍ら、この女はそれまでの小物とは一味違いました。
「そ、そもそもっ! あんたさっき言ったじゃないのよ!
『王様戦隊』のレギュラーキャラ、ヒーローと敵幹部をやってる役者の名前を言いながら、役者の数だけ私らを殺すって!」
「如何にもその通り……故に貴様も――
「けど、だとしたらっ!」
自分の発言を遮り喚く女は、命惜しさから自分に反論してきたので御座います。
「だとしたら、おかしいでしょっ!?
確かに兄貴と蚯蚓のオッサンもレギュラーのヒーローと敵幹部なのはわかる!
それはわかる! けどその二人を入れても役者は十四人でしょ!?
それでこの場であんたが殺したのも十四人!
つまり十五人目の私は殺せないって計算になるじゃないのよ!」
……アクメージョスの女怪人にしては理に叶った主張に御座います。
というかそもそも、異世界エニカヴァーの住民が地球で放送されていたテレビドラマに関してここまで詳細かつ饒舌に語れている事態には聊か違和感を感じずには居れぬので御座いますが……
「成程確かに貴様の言う通り……該当する役者は十四人だ。だが自分は言った筈だぞ。
『名前一つにつき一人駆除す』とな……」
「なまえ、ひとつ……? なにそれっ……名前なんて、個人に一つしかないじゃないのよっ!」
どうやらこの女、地球のドラマに関する知識は持ち合わせている癖には、
自分めの発言の意図を見抜けていないようで……そこで自分は閃いたので御座います。
"そうだ。こいつを試してやろう"と……
次回、生き残った女怪人に運命の分かれ道が!