第四十話「首魁との対面は叶わずとも、目的達成には近付きつつある」
前回後書きで最初「ボスと対面!」とか書いてましたけどどう考えてもできなかったんで次回か次々回辺りに持ち越しになりました。
「いざ……顕現ッ!」
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き、冒険者の財王龍こと元Vtuberの七都巳大竜が……
[KEN-GEN!! INCARNATE NASTY DRAGON!!]
『我が罪悪……我が欲求……我が鉱脈……
即ち罪竜。鋳固める強欲……!』
愚連隊アクメージョス基地内にて、罪深き化け物に変身しながらお送り致します。
『求めるは勝利……即ち、敵勢力の死滅也……!』
宙を舞う黄金色の微粒子に包まれ乍ら変身しましたのは、
頭に小鬼の角、背に蜘蛛の節足を生やし、片手片足は小鬼、眼玉は蜘蛛で尾も引き伸ばされた蜘蛛の腹部である狐風の異形こと、
強欲の罪を宿す"鋳固める強欲"に御座います。
「ひっ!? へ、変身したっ!?」
「しかも今まで見たこともないパターンなんだけどっ!?」
「ええい、怯むな! どのような変身をしようとも所詮奴は男!」
「そうね……。そうよね! 下等生物の男風情が何をしよーが、アクメージョスの女怪人に勝てるわきゃねーのよ!」
『解析……昇進の好機を検知……戦闘モードに移行します……』
「フハハハ! 今こそ女王の威厳を示す時なり! 皆のもの、往くぞぉぉぉ!」
「「「「「ハイ、女王陛下!」」」」」
迫り来るのは典型的な"女人型の敵キャラクター"然とした安っぽく珍奇な見た目の連中。
動植物型や幻獣型の個体、特定の職業を想起させるコスプレをした個体から、ロボットやヒト型液状生命体など風貌からして明らかに人外じみた個体迄様々で御座います。
『相変わらずの数の多さ! 辟易せずにはいられぬが、なればこそ殺し甲斐があるというもの!』
真っ直ぐな通路の両端から迫り来る女怪人の群れ……先ずはその双方へ向け、背に翼の如く生えた毛むくじゃらの八本足を振るいます。
『さあ撒かれて散れよ黄金の粒! 眩く煌めき幻惑わすように!』
するとどこからともなくキメ細かな金色の微粒子が現れては宙を舞い……通路の証明に照らされたそれは聊か幻想的な雰囲気を醸し出しました。
「ふんっ! いきなり何をしたかと思えば!」
「こんなものが目くらましになるワケないでしょうがっ!」
「行くわよみんな! こんなヤツとっととぶっ潰してやりましょう!」
『断定……標的戦闘レベル、極低……昇進の為、一気に動きます……』
闘争心に取りつかれ慢心しきった女怪人どもは構わず向かって来ますが……
当然乍らこの微粒子、只の目くらましなどでは御座いません。
『流るる川底へ積もる砂泥! 其の下より湧き出る砂金の輝き!
其れこそは富の証! 民を惑わし狂わせて、遂に血の雨を降らせよう!』
芝居がかった口調で唱えれば、宙を舞う微粒子は五寸釘程の鋭い針へ姿を変え……
「ひっ!? な、何これっっ――ぎぃやああああああああ!?」
「はぎゃあああああああ!」
「ぎょえええええええ!」
「なんづごぉぁぁあああああっ!?」
……弾丸の如き速度で女怪人どもを四方八方から刺し貫くので御座います。
然しそうして概ね全滅させたとて、連中は雨後の筍か風呂場のカビの如く次々湧き出て来るものですから……
「ぬううああああっ! 男の癖に生意気なっ!」
「よくわかんない技使ってんじゃないわよぉぉぉ!」
尚も向かって来る以上、迎撃するのが道理に御座います。
『光るは電飾! 響くは音楽! 欲望渦巻く孔の内!
釘にぶつかり弾ける小玉! 滑る博徒は地獄行き!』
あちこちに突き刺さった棘は直径一.一センチの球体へ姿を変え、通路の床一面を覆い尽くすので御座います。
「突撃ぃ――いいいいいっ!? ぎっっ!」
「のわあああああっ!? ぐあっ!」
「なんでぇっ!? ぶべぁっ!」
それに気づかず踏み付けようものなら、当然転倒せずには居れぬわけで御座いまして……
『哀れなる博徒らよ! 一時の勝ちに酔いし貴様らは滑稽なり!
ならば総て尽きる迄賭け尽くし塵と還るがよい!』
転倒したのを皮切りに、球体は薄平たい硬貨かチップの如き円盤へと姿を変え、
様々な方向へ高速回転しながら女怪人どもへ襲い掛かります。
「ぐぎゃああああっ!?」
「ぎぃっ!? に、肉があああっ!」
「ぎゃべづええええええ!」
「づぁずげでえええええええ!」
ある円盤は肉を切り裂き、またある円盤は肉を抉り……
その場の女怪人は瞬く間に全滅しました。
『さて、概ねこんなものだろうが……それにしても!
新たな技を使い乍ら些か手間取ってしもうたわ!
いかんのう! もっと効率的に!
かつ!
読者の皆様へご満足頂けるよう!
豪華に! 派手に! 読み応えのあるように!
仕上げねばならんというのにからなぁ!』
強欲の罪を司る本形態の能力は"生成した特殊合金の操作"に御座います。
即ち、あらゆる金属の性質を再現可能な特殊合金"冥府絹"を体組織より生成し意のままに操るといった代物でして、
冥府絹の微粒子を自ら散布せねばならぬ手間はあるものの、文字通りかなり柔軟な動きが可能なのでした。
[GOOD JOB.THAT'S A FEAT]
「―――さて。精神汚染防止の為にも変身は小まめに解除せねばな」
斯くして変身を解除した自分は、民間英雄たちの囚われている地下の調教房と飼育場へ急ぐので御座います。
( ◎甘◎ )<因みに精神汚染は『欲深さから己の戦果を過小評価し、高望みの故に焦ったり無理をしがちになる』といったような所でして……
「御免下さいませ!
――『何方様でしょうか?』ッ!
自分、冒険者ギルド『丸致場亜主』所属の財王龍と申します!
――『本日は如何なご用件で?』ッ!
こちらに囚われの民間英雄の皆様方を救出させて頂きに参りました!
――『それはそれは遠路遥々ご苦労様です! どうぞお入り下さい!』
では失礼致します!」
手始めに飼育場へ足を踏み入れれば、監視カメラ越しに見た以上の不快感に満ちておりました。
大物喜劇役者様風にボケ散らかし乍らでなければ、恐らく精神的に参ってしまっていたかもしれません。
「あらぁ? なにかしら〜?」
「ぅっうう……まんまぁ……」
「おぉ〜よちよち♥ こわくな〜いこわくな〜い♥
だいじょーぶでちゅよ〜ボクちゃぁ〜ん♥
ママがまもってあげまちゅからねぇ〜♥」
拉致した民間英雄の飼育を担当しているであろう複数名の女怪人……
それらの胸囲は推定一メートル半をゆうに越え、多くは片方の乳房だけでも頭より大ぶりかもしれませんでした。
そんな女怪人どもが、此方など眼中にないかのように、無理矢理に洗脳され幼児退行を強いられた挙げ句『赤子姿の生きた性玩具』と成り果てた少年たちを相手に母親の真似事などしているのですから、
不愉快に思わず肯定的に見よというのが土台無理な話に御座いましょう。
(見せ付けているつもりか……己に殺意を向ける敵の眼前でっっ!)
加えて自分めは嘗て子もなさず妻と離別した身の上に御座いますので、桁違いに強烈な殺意と憎悪に苛まれておりました。
要するに自分にとって連中は、存在そのものからして"特大級の嫌味"だったので御座います。
「良かろう……徹底的に駆除してくれる……!」
銃器は使いません。
誤射しても何ですし、何より弾薬が勿体無いのでね……。
次回、殺戮劇の開幕!