第四話「舌戦で相手を論破し言い負かす上でのリスクを考慮すべきであった……」
次々明かされる衝撃の真実……!
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き、七都巳大竜がお送りいたします。
「あとは確か……導師殿ォ~?
服装はあくまで個人の自由でありましょうが、
それにしても最低限の良識や公序良俗に配慮するのが
相応の立場にある者の努めかと愚行致しますがァ」
「な、なによぉ~?
まさかこの魔女装束が際どいからアウトだっていうのぉ?
言っとくけどコレっ、
魔女界隈で古くから伝統として受け継がれてきた由緒正しいデザインで、
布地が薄くて露出高いのもちゃんとした理由が――
「ああいえ、魔女装束ではなく……
貴殿が通販やフリーマーケットアプリで買い漁っている下着や水着、
コスプレ衣装といったお召し物の話なのですがねェ!?」
「うぐっっ……!」
「別段、
貴殿が如何なお召し物を身に纏われようが、自分は構いませぬ……
それが飽く迄も個人的趣味の域を逸脱しないのであれば!
然ァし?
夜な夜な際どい衣装で屋外を出歩いたり、
或いはネットワーク上に於いて
特定個人にご自身の卑猥な写真を無理矢理送り付けるといった行為は
刑事罰も下りかねませぬ故控えるのが御身の為と愚考致しますればッ!」
「ぅっぎぎぎぎ……!」
「ふざけんなコラァ! フツーに犯罪じゃねーか!
てかそういう恰好したきゃ俺の前でしろよ!
あと写真はネット上の相手じゃなくて俺に送れ!」
江夏勇者が何やら吼え散らかしていますが……
折り返し地点も過ぎましたので、残りも一気に乱してしまうとしましょう。
「族長殿、
可愛い縫い包みをお買い求めになられるのは結構ですが……
一団の共有預金に無断で手を出すのは頂けませんなァ!?
せめて許可を取るか、
より積極的に報酬のよいクエストをこなされた方がよろしいのでは?」
「ぬぉあっ!? テメェ、どこでそのネタ掴んだァッ!?
やめろォッ!
そもそもあれは武族のガキ共への土産つーか、
ウチの新しい特産品として手芸を取り入れるための勉強としてだなッッッ!?」
「看護士殿!
売春や詐欺で稼いだ悪銭で密輸業者より買い取られた希少動物を
性玩具なんぞにするのはおやめなさいよ!
どれだけ罪を重ねる気ですか。
そも貴殿は曲がりなりにも医療従事者、
命を冒涜するような真似など以ての外で御座いましょうに!」
「うぅぅ……正論、やめて……
言い返、せなぃ……。
……だって、しょう、がない……
あの子たち、じゃなきゃ、
イけ、なくてっっ……!」
「博士殿!
膀胱や大腸が弱いばかりにお手洗いが間に合わないのであれば
紙オムツの着用より前に病院を受診されては如何です?
それと使用済みの紙オムツを水洗便器に流したり
公共のゴミ箱に捨てるのも
到底褒められた所業では御座いますまい」
「~~~~~っっっっ!?」
このように各々の泣き所を突いて差し上げますれば、
最早誰もが取り乱し戦闘どころではなくなってしまうので御座います。
さて、残るは勇者一人。
どこを突くべきかと迷っておりますと……
「でぇぇ~いっ、黙れ黙れっ! 落ち着けお前らっ!
あんな雑魚の安い挑発なんかに乗るなって!
クッソ、七都巳ィ……!
お前よっぽど死にたいらしいなぁ!?」
何がそんなに腹立たしいやら、
勇者は凄まじく怒り狂い、剥き身の剣が発光し始めたのです。
(拙いっっ……!)
自分は己のしくじりを悟り、安易な判断を悔いました。
七人全員の心を乱すよう仕向け、
仲間割れのドサクサに紛れて逃げ出すつもりが、
結果一団で最も面倒な江夏に狙われてしまったのでは本末転倒……
如何なる攻撃も意味を為さず、
当然交渉の余地もなく、
できることと言えば恐らくここから放たれるであろう
奴の必殺技を可能な限り防ぐ程度。
「お前さえいなければ……お前さえいなければ、俺はぁぁっ!」
(あの技を受ければ無事で済もう筈はない。
なれども生きねばならぬなら、
力の限り障壁と結界を張り防ぐのみ!)
「使えねーボンクラ穀潰しが、地獄に落ちろ!
喰らえ必殺、
セブンスヒーロー・エクスプロージョン!」
「ぐおうぅぅぅぅっ!?」
振り抜かれた剣より解き放たれるは、
勇者等の選ばれし者のみが扱いうる"神聖属性"の斬撃エネルギー波……
勇者単独での発動につき幾らか出力は減退しておりますが、
それでも驚異的な破壊力を有す事実は断じて揺るがず……
(結界全面消失、障壁損壊率九十一.三パーセント!?
やはり無理か……
こんな熱量の塊、防ぎきれんっっ!)
専門の術師でもない自分の障壁や結界は
いともたやすく神聖なるエネルギーに打ち破られ、
「ぐおわぁぁぁぁぁぁっ!?」
そのまま呆気なく吹き飛ばされ、
夜のエルセ洋へ消えていったので御座います。
大竜、早速絶体絶命!
果たして彼は大丈夫なのか!?