第三十九話「拉致された民間英雄たちの末路が生理的に無理だった」
アクメージョスの女怪人たちを次々倒しながら基地内を進む大竜……
「癒やしのヒーリングばぶばぶパワー、ホルスタインサラブレッド保育士ぃ~♪」
「安眠のスリーピングすやすやパワー、サフォークポニーナースぅ~♪」
「……退けっ、自分は本作の"主人公さん"だぞっ」
読者の皆様、毎度大変お世話になっております。
前回に引き続き冒険者の財王龍こと元Vtuberの七都巳大竜が……
「ダーメっ♥ どいてあ~げないっ♥」
「そもそも主人公くんならぁ~、おねーさん達みたいなドスケベ女怪人にやられちゃうのがフツーだよねぇ~♥」
(聞く耳持たず、馬の耳に念仏とはまさにこのことか……)
女人愚連隊アクメージョスの構成員らを相手取りつつお送り致します。
(外見と内面が反比例……というか、顔と身体つき以外の何もかもが残念なバカ女どもが増えて来たな……!
斯様な連中の所為で世の御婦人方は要らぬ風評被害に悩まされたりするのであろうよ……)
さて、現状自分めは前回登場した変人三人組を軽く捻って以後"女怪人"を名乗る構成員たちと立て続けに交戦、始末しつつ基地内を進んでおりました。
「そんなことより、ママといっしょにばぶばぶしよ~っ♥」
「眠たかったら、看護師のおねーさんといっしょにすやすやしよーねぇ~♥」
現在眼前に現れてましたのは、乳牛と競走馬の特徴を併せ持つ保育士風の女怪人と、羊と小型馬の特徴を併せ持つ看護師風の女怪人に御座います。
揃って美人で乳がでかいのは間違いありませんでしたが、とは言え我が愛しのパル殿にしてみれば木っ端の婢に過ぎぬのは言う迄もありますまい。
果たして此奴らの実力が如何程かは存じませぬが、一先ず自分のすべきことはただ一つ……
「……読者の期待に応えるべく、全力で"主人公さん"を遂行するっっ!」
一見してギャグのような字面ですが、これでも自分としましては大真面目に御座います。
「虫王空手絢爛奥義ノ肆、蟷螂瀉血拳!」
「ぐぎびゃっ!?」
手始めに蟷螂拳に似た動きで、保育士怪人の横っ腹を抉り……
「叡智奥義ノ伍、蜻蛉弾幕撃!」
「げぼばっ!? か、空手で銃は卑怯でしょっ!?」
立て続けに迫り来る看護士怪人を、隠し持っていた機銃にて牽制。
そして……
「邪悪奥義ノ肆拾伍、鍬形顎脚!」
「がぐげっ!?」「ぎべぁらっ!?」
左右の爪先と踵で二点を挟み込むように打つ蹴りにて二つの頭蓋を砕き、瞬時に絶命させるに至ったので御座います。
( ◎甘◎)<総じて"モブーニョ"なる雑兵より地位の高い"女怪人"でもさほど戦闘能力は高くないようで……
( ◎甘◎)<……ともすれば民間英雄連合傘下の英雄諸氏が次々惨敗し拉致されているのは何故なのか……
(=甘=;)<なんともはや、謎は深まるばかり……
「ふん、ナメてんじゃないわよ! あんたなんて、あたしの毒と糸で――」
「遅い」
「っぎゃああああっ!? っっ、てっ、手がああああっ!」
蜘蛛型女怪人ビュート・ウィドウ。
獰猛な捕食者らしく強豪の武闘派然とした彼女の苛烈にして強気な態度は、利き手を投げナイフが貫通した途端脆くも崩れ去りました。
「うっぐ、あがああ……! だ、だず、げでぇ……! てが、てがああぁぁぁ……!」
「どうしたビュート・ウィドウ。『自分に勝てる男などいない』のではなかったか?
『下等な男など餌か奴隷に過ぎぬ』と豪語していたのはどこの誰であったかな?
未だ利き手が壁へ磔にされた程度であろう。
もう片方の手と八本の節足は無傷、牙と糸イボが無事ならば毒も糸も問題なく使えよう。
にも拘らず何故満身創痍かの如く振る舞い、事も在ろうに己より下等な存在如きに助けを乞うとは……
それが秘密結社アクメージョスに属す女怪人の取るべき態度か?」
「あぅぅっ、む、無理っっ……! 無理ですっっ、もう戦えません! 再起不能ですぅ……!
お願いです、ナイフを抜いて下さいっ! 降参します! 降参しますからぁ!
なんでもしますから、どうかお助けをっ!」
なんともはや、滑稽の極み。
然し苦し紛れの『何でもする』発言……これを利用しない手はありますまい。
「そうか。何でもするのか。では貴様の知っている情報を洗い浚い吐いて貰おう。
拉致した民間英雄らはどこにいる?
この基地の中か外か、生かしてあるのか殺したのか、詳細に教えて貰おうか……?」
「は、いっ! 答えます答えます答えますぅぅぅっ!
拉致した民間英雄は生きてます生かしてます! 基地の地下施設に居ます!
まず拉致したてのは調教房って所で暫く調教してそれが終わったら飼育場に移されます!
それでたまに幹部の方がご入用になったら私室とかに連れ出されたりしてるみたいです!
あと調教房と飼育場の場所は基地内の案内板に書いてあります!
それぐらいしか知りませんこれで知ってる情報全部ですだから」
「了解。ご苦労だったな」
「はひっ――――ぶぐぇっ!?」
哀れな蜘蛛女に謝礼の鉛玉をくれてやった自分は、拉致された民間英雄の皆様方が囚われている調教房と飼育場を探すべく走り出しました。
(甘= )<命乞いが遅い……
(やれやれ……何とも酷たらしい有り様だな)
アクメージョス構成員を始末し乍ら基地内を進むこと暫し、自分めはいよいよ目的地である調教房と飼育場をカメラ越しに監視可能な管制室へ辿り着いたので御座いますが……
『よちよぉ〜ち♥ ボクちゃんイイコイイコぉ〜♥』
『おっぱいちゅっちゅじょおじゅでちゅねぇ〜♥』
『あっぅ♥ バブっ♥ ばぁぶぅ〜♥』
(他所様の性癖に文句など言いたくはないが、目を背けずにはいられんな……)
その場所で繰り広げられておりましたのは、筆舌に尽くし難き狂気の沙汰に御座いました。
(宛ら、同人ショップやレンタル屋の成人向けコーナーに足を踏み入れた時の感覚……)
俗に"乳幼児プレイ"と呼ばれる性行為の類でしょうか……
全裸同然の下品な女怪人どもが、幼児退行と乳幼児の格好を強いられた少年たちを相手に、
『自分はお前の母だ。母と交わるのがお前の役目だ』などと支離滅裂かつ理解し難い妄言狂言を吹き込みながら、土足で尊厳を踏み躙らんばかりに翫ぶ……
スラングを引用するならば『草も生えぬ』の一言に尽きる有り様に御座います。
(否……そもそも性癖とは総じて知覚の不具合。
医学的観点で言ってしまえば如何なる性癖にも貴賤はなく、
総じて法や倫理に反していたり、他者を害しておらぬならば大抵容認されて然るべきものだ)
実際自分も連中より特異な性癖の持ち主に御座います。
嘗てパル殿と"重ね契りの術"を施し合った際に興じた行為は、恐らく連中からしても狂気の沙汰と映るでしょう。
なれど我らは一応、その特異な性癖の故に法を犯すことも、倫理に背くことも、また他者を害しても居りませぬ。
(だが連中は違う……民間英雄の皆様方を拉致した挙げ句、性行為を強いて尊厳を蹂躙し、性的に搾取し使い潰している……
性癖関係なく、そのような蛮行が許される道理など在りはせぬ……!)
よって自分めは改めて決意したので御座います。
邪智暴虐の忌まわしき愚連隊アクメージョス、その構成員を一人残らず駆除し尽くし、囚われの民間英雄たちを必ずや救い出してみせると……!
「容赦はせぬぞアクメージョス……首を洗って待っておれィ!」
次回、アクメージョス女怪人を相手取るべく大竜が変身!