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第三十八話「雰囲気はまさに悪の組織だが、所詮はただの愚連隊である」

大竜の挑む次なるクエスト……

その相手は"悪の組織"!?

 読者の皆様、毎度お世話になっております。

 前回に引き続き財王龍こと七都巳大竜がお送り致します。


「よ、漸く着いた……長かった……

 全く、アクセス最悪の辺鄙へんぴな土地に基地なんぞ建ておってからに。

 土地代も払えんなら悪党なんぞせずマトモに働け……!」


 舞台はとある辺境地の採石場跡地……眼前に建つは如何にも"秘密基地"然とした巨大建造物。

 即ち此度受領させて頂いた案件クエストの目的地である、自称・悪の秘密結社"アクメージョス"の総本山に御座いました。


「かといってあんな派手な建物を地上に建てている辺り隠れ潜む気もないのであろうな……。

 無駄に高いプライドの故に見栄を張りたいが、さりとて金をかけたくはない……小物じみた発想の規範ではないかっ」


 アクメージョスとは、ここ最近になって活動し始めた変わり種の愚連隊に御座います。

 その特徴は数多ありますが……

 最も異彩を放つのは、世界征服を目論む悪の秘密結社を自称する点と、構成員が下品な身なりで奇抜な肩書きを持つ見目麗しい女人のみである点でしょうか。

 まあ、如何なる特徴があろうと自分にとっては単なる駆除対象に過ぎんので御座いますが……


「……一応、交渉の余地が無くもないことを伝えておくか」


 持参していた拡声器を起動した自分は、基地に向けて警告します。


\『愚連隊アクメージョスの諸君!

  自分は冒険者ギルド"丸致場亜主マルチバアス"在籍の財王龍ツァイ・ワンロンである!

  此度、この場に馳せ参じた目的は他でもない!

  諸君らとの交渉の為である! そもそも諸君らは――』/


 本案件(クエスト)の依頼内容としましては

 『愚連隊アクメージョス構成員の討伐による組織壊滅』に御座いますが、依頼主クライアントであらせられる"エンツアム民間英雄(ヒーロー)連盟"は『アクメージョスに更生の意思があるならば手荒な真似は避けたい』との意向を示されました。

 よって、平素であれば有無を言わさず拠点へ突入した後構成員を軒並み駆除させて頂く所、敢えて交渉を持ちかける羽目になっていたので御座います。


\『――繰り返すが、連盟は飽く迄諸君の投降並びに更生と、

  拉致された民間英雄ヒーロー諸氏の開放及び返還を所望しておられる!』/


 因みに民間英雄(ヒーロー)とは、エンツアム共和国の民営組織『エンツアム民間英雄(ヒーロー)連盟』に所属する戦闘員の総称であり、連盟の代表曰く"義と善の下に市井へ尽くす戦士"だとかで……。

 


\『連盟の咸森みなもり代表は仰有られた!

  「悪に相応しき末路とは死ではなく、己が罪を悔い改め更生し、

   かえってその力を義と善の為に用いる贖罪のみちである」と!

  即ち、暴力的手段による解決は此方とて本望ではない!

  咸森代表の慈悲を無碍にせぬ為にも、諸君の平和的かつ賢明な判断に期待する!』/


 猶予は三十分……

 その間に何かしらの返答があればその旨を連盟に伝達し、明確な返答がない場合は

  ――これまた、連盟の許可を得た上でになりますが――

 『投降及び更生の意思なし』と判断し実力を行使する手筈となっております。


 果たしてアクメージョスの反応はというと……



(……無反応、か)



 三十分どころか倍の一時間待っても、何の反応もありませんでした。

 ともすれば、選択肢はほぼ一つに御座います。


「……代表、ツァイです。

 愚連隊アクメージョスの件なのですが……はい。ええ。

 どうにも連中に更生の意思はないものかと……

 畏まりました。完了次第ご報告申し上げます」


 依頼主クライアントからの許可も下りましたので、これより殲滅作戦開始に御座います。



 (へ甘へ )<やっと面白くなってきたな……!



「失礼。道を訪ねたいのですがね」

「なんだ貴様っ、怪しいヤツ!」

「さては先程騒いでいたのは貴様かっ!」

「下劣で下等なオス風情が!」

「とっ捕まえて調教してくれる!」

「「覚悟し――

  ぼげっ!?」ぶばらっ!?」

「礼儀がなっとらんぞ。……如何に気取ろうと所詮は愚連隊、か。

 さて、この門はどこをどうすれば開くんだ……まあ、吹き飛ばしてしまえばいかァ」


 ビキニアーマー姿の衛兵を軽く射殺した自分めは、勢いに任せて重厚そうなデザインの門を砲撃で破壊。そのまま基地内へ足を踏み入れます。


「どうも、お邪魔致します! 丸致場亜主マルチバアスの財王龍です!」

「イッ!?」

「イクッ!?」

「イクゥー!」

「イクイクゥー!」


 そんな自分めを出迎えるのは、覆面に全身タイツで『イク』としか声を発さぬ女たち……集団で動く辺り、恐らく所謂"戦闘員"めいた雑兵かと思われました。


「宜しければ名前だけでも覚えて、死んで頂けますと幸いに御座いますればッ!」

「イイイイイッ!?」

「イグウウウウッ!?」

「イ゛ッ!?」

「イッグウウウウッ!?」


 折角なので(?)自動小銃で迎撃して差し上げますと、これがまた面白いように吹き飛ばされてしまわれるので御座います。

 さて、そんなこんなで覆面全身タイツの雑兵どもを蹴散らすこと暫し……


「なんだい全く、だらしがないねぇ」

「近頃のモブーニョは侵入者の相手も満足にできないの?」

「即ち、此処より先は我々怪人の舞台ステージ……!」


 何やら風変わりな見た目の女が三人ほど現れました。


「やいやい、そこのお前さん! 白昼堂々殴り込みとはいい度胸してるじゃないか!」


 向かって右側。時代劇などでお馴染み(?)博徒風の身なりをした白黒の半獣人……


「男のクセにやるじゃない……けど私たちが来たからには容赦しないわよぉ?」


 その隣には、頭にバラの花を咲かせトゲだらけの鞭を手にしたボンテージ姿の女……


「悪の秘密結社アクメージョスに戦いを挑んだこと、心底後悔するがいい……!」


 更にまたその隣には、触覚の生えたヘルメットを被り両腕は甲殻類のハサミ風……

 加えて下半身が小型の戦車そのものにも関わらず上半身はSF風のビキニアーマーのみというチグハグな姿の人物……


 口ぶりからして恐らく、それなりの地位と思しき女人三人組。


「おっと、お次は何だぁ……?」


 余りの異様さ・珍妙さに、思わず声が漏れるのも致し方なく……


 さて実のところ、連中の名と正体は……



「悪夢の尻を持つ女ァ、スカンク博徒っ!」

「マゾ男しばきの専門家、薔薇女王ローズクィーン!」

「全ての万物を砕く無敵の鉄拳、大将軍戦車(センシャ)コ軍曹!」

「「「三人揃って、

  『悪の秘密結社アクメージョス期待の新星怪人トリオ』!!!

   推して参る!」」」


(なんだこいつら……)



 色々と突っ込み所しかありませんが、どうやら何れもアクメージョスの構成員なのに間違いはないようで御座いました……。


(……一先ず適当に始末してみるかァ)

次回、拉致されたヒーローたちの辿った衝撃の処遇が明らかに!

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