第三十六話「配信を切り忘れた者はバズるのが昨今のなろうの主流らしいが、自分もどうやらその同類だったようで」
Q.直近三日間の平均PV数が200行かなかったらクエスト編はやらないんじゃなかったの?
A.Misskeyでアンケ取ったら辛うじて一票だけ「もっとやれ」の方に入ってた。
大多数が無反応のゼロな中で、ただ一人でも望んでる奴がプラスを示すなら、
そいつの遺志を尊重するのは当たり前だろ。
お前らなろう読者の大多数はいつもPV数以上の反応を何も寄越さねえんだから。
てか逆に聞くけどお前らクエスト回これ以上やるの嫌なの?
じゃあそう言ってよ、対応するから。
――某日。内陸国ナナシーク南西部の都市ファニストーにて……。
「……つまりこういうことか?
貴様らは然したる決定的証拠がないにも関わらず、
無実かもしれない民間人の男性を、自称被害者らの証言のみに基づいて逮捕し……
その上取調べと称して男性を拘束、性的虐待を加えヒトとしての尊厳を踏み躙った挙句
判断力が鈍った所に付け込み、犯しもしていない罪を認めさせ投獄した……
これらの事柄は総じて紛れもない事実に相違ないな?」
「そ、それはっっ……!」
「なんというか、その……!」
「私たちはあくまで、公務を執行しただけでしt――」
「質問に答えろッ!
『貴様らはその辺の男を連れ込み性玩具にしたのか?』と、聞いておるのだろうがッ!
どうだ!? 男を連れ込んだのか!? 連れ込んでおらんのか!?
是か否で返答せんかァッ!」
「「「ひいいいいいっ!」」」
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き、七都巳大竜が案件を遂行しながらお送り致します。
「返答次第では拷問も厭わんでな……下手なことは言わぬが身の為ぞ?」
「「「ぅっぐぅぅぅ……!」」」
さて、冒頭よりいきなりお見苦しい場面を見せてしまい申し訳ございません。
然しどうかお許し頂きたい。
何せ自分めは今現在、先程既に述べました通り、ギルド丸致場亜主様経由で依頼して頂いた案件を遂行中なので御座います。
その案件とは……
驚くべきことに"不祥事を起こした警官らの捕縛・折檻"に御座いました。
……読者の皆様としましては、自分が何を言っているのやら理解できないかもしれません。
然し乍ら申し上げさせて頂きますと、自分自身も何を言っているのやら今一理解しきれぬ所があるので御座いまして……
「いえ、や、やってません! 断じてそんなことっ!」
「そ、そうです!そもそも私達はファニストー公安委員会直属の性犯罪対策課!
性犯罪の取り締まりにかけては英才教育を受けた女性警察官のエリートです!」
「私達は性犯罪に苦しむ女性たちを守り救うべく日夜業務に励んでいます! 男遊びなんてとんでもないです!」
「虚言を吐くなァァァァァァァッ!」
「「「ひいいいいいいっ!」」」
依頼主は事も在ろうに、ファニストー行政の頂点に君臨しておられる兎獣人のネルイ・ハナーヴァ知事。
彼女曰く、傘下の公安委員会より匿名の内部告発があったとの事で……
「その程度の言い逃れが通用すると思うてかァ! 案ぜずともよい、証拠は既に出揃うておる!
今迄貴様らが如何なる悪事に手を染めて来たかなど、態々吐かせる迄もなく全て把握済みだ!」
詳細な依頼内容としましては
『性犯罪対策の為に立ち上げた女性警官隊が裏で悪事を働いていると発覚した。
組織は解体、当該隊員らは免職処分が決定したが、
被害者らの心情等を諸々考慮するに、法の下に許される処分では制裁として不十分である。
その為、当該隊員らを可及的速やかに捕縛した後、二度と悪事ができぬよう徹底的に制裁して頂きたい』
との事で……。
「貴様らは既に免職処分となった身! 警察官としての地位や権能など当然有してはおらぬ!
本来であれば一連の悪事はマスメディアにより世間に晒され、それに伴い貴様らは社会的に抹殺され壮絶な生き地獄を味わう所であった!
だが慈悲深いハナーヴァ知事はそれを良しとせず、貴様らの不祥事を秘匿し、
処遇に関してはこの財王龍に一任されるとの決断を下されたのだっ!」
そう。
即ちこの阿婆擦れどもの生殺与奪権は、今まさしく自分めの手中にあるので御座います。
「はっ! で、でしたら是非―――
「但しッッッ!」
「ひっっ!」
すかさず"元"女警官の一人が口を挟んで来ましたが、自分は発言権など与えんとばかりに無理矢理遮ってやります。
「ハナーヴァ知事は仰有られた!
『断じて情に絆されたり色香に惑わされるな』と!
『生かした状態で徹底的に粛清せよ』と!
即ち、依頼主の意向を可能な限り尊重するのが冒険者の努めである以上、
自分が貴様らを甘やかすような展開など到底有り得んと心得いっ!」
「そ、そんなっっ……!」
「ひどいぃぃ……」
「あんまりじゃないですかぁ……」
「ほざけェッ!
国家に忠誠を誓い市井の民が為粉骨砕身すべき公務員の立場にあり乍ら、其の実与えられし権限を悪用し、
私利私欲のまま守るべき多くの民に対し狼藉を働き破滅へ追いやった貴様ら風情にかける慈悲など存在せんわァ!」
(=甘= )<その後、"元"女警官の阿婆擦れ三名はさる筋に引き取って頂きまして……
詳細は伏せますが、向こう数年は地獄を味わうものと思われますし、制裁としては十分に御座いましょう。
さて、場面は変わりまして別の日。
大国マルヴァレスが首都フジマットの『日輪菊之丞国立科学研究所』施設内のとある研究室……
「ぎいやあああああ! おたすけえええええ!」
「いぃぃぃやあぁぁぁっ! 服がっ! 服が溶けるぅぅぅぅ!」
「クソッ! こいつ、ふざけんなっ! 俺みてーなオッサン襲って何になるんだよっ!」
「どわぁぁぁ! 止せこの、やめろっ!」
「ええいっ! 冒険者は! 冒険者はまだかぁぁぁーっ!?」
天才的な学者の皆様方が日夜研究に励んでおられるその場所を混乱に陥れていたのは、施設内で研究が進められていたとある生命体に御座いました。
【ウッキュルキゥ! キュルキキゥッ!】
その見た目は鮮やかな蛍光グリーンの不定形な半個体であり、
部屋一つを埋め尽くさんばかりの体積にも関わらずやけに甲高い声を出すので御座います。
「研究所のみなさーん! ご無事ですk――うわああああ!?」
「ぎゃああああ! リーダーが捕まったぁぁぁ!」
「この鳥黐ヤローが! よくもうちのリーダーを!」
「チクショー、ふざけやがって! おいお前ら、リーダーを取り戻すぞ!」
「「おうっ!」」
「うおおおおお! ギルド"武威努琉相図"のエリートチーム"カラーパレッ党"をナメんなぁぁぁぁ!
づおらあああああ――――ああああああ!? しまったぁぁぁぁ! 俺も捕まったぁぁぁぁ!?」
「オレもだぁぁぁ!」
「あたしも右に同じくぅぅぅ!」
その正体はエニカヴァー各地の主に山林や湿地帯に生息する液状生命体の一種、
変形菌に近縁な"塊滴粘体"……なのですが、
既に劇中で見せた動きからお判りのように、この個体は通常の塊滴粘体とは一線を画す特異な存在……
有り体に言えば、研究所内で人為的に生み出された人造個体に御座いました。
「ぬわっ!? ぁあっ! おい、どこ触ってっっ! やっ、やめろぉぉっ!」
「おひい゛ッッ! そ、こはっはぁぁっ! シャレ、にぃぃいっ!?」
自然界では分解者としての地位を確立し、
土中水中の汚染物質を分解し魔力に変換するなど生態系に於いて重要な役割を担う塊滴粘体。
本研究室ではそんな同種の特性を応用し『人体や屋内の汚れを喰らい清掃する人造液状生命体』の研究が行われていたようなのですが……
「くっそー! 実験しようと外に出しただけだってのに、何でこんなことになってんだ!?」
「知らないわよ! てかそれを調査するのがあたし達学者の務めでしょ!?」
「どの道こんな暴走状態では文字通り手も足も出ないわ……!」
「ええいっ! 冒険者は! 冒険者はまだかぁぁぁーっ!?」
「冒険者ならもう来ましたよ室長! 入って来て五秒で実験体に捕まりましたけど!」
未だ発展途上であった人造液状生命体は唐突に暴走……
その体積は何百倍にも膨れ上がり、研究室を埋め尽くさんばかりの巨塊となって次々に職員たちを襲い始めたので御座います。
結果、施設と業務提携を結ぶ国内最大手の冒険者ギルド"武威努琉相図"より武闘派チーム"カラーパレッ党"が派遣されてきたので御座いますが、
見た目に反して機敏で隙の無い人造液状生命体にはさしもの武闘派冒険者集団もお手上げの状況であり……
「町民の皆様! 発見された個体はほぼ駆除し終えましたが、逃れたグランドヴォイドが地中にまだ残っているかもしれません!
調査が終わるまで避難場所を離れるのはお控え下さい!
……と、電話だ。発信元は……丸致場亜主……十中八九、源元ギルド長からだな」
丁度近隣で別の案件を遂行中であった自分の元へ緊急の出動要請が来るのも、ある意味必然だったので御座いましょう。
次回、大竜は如何にして人造スライムに立ち向かうのか!?