第三十三話「愚連隊討伐案件。その実態は殆ど暗殺業務である」
今回から
大竜が具体的にどういうクエストをどういった形でこなしてたのか、
みたいな話を三話くらいやります。
正直即興で考えたんであんま面白くないかもしれませんが、
好評だったら追加でやるかもしれませんので宜しくお願いします。
(具体的には今日から三日間の平均PV数が200超えたらクエスト系の話を追加で書けるだけ書きます)
(「こういうクエストの話が見たい」とか要望あったら感想欄、活動報告コメント、メッセージ、害獣会メンバーSNSでのリプにて受け付けております)
読者の皆様、毎度お世話になっております。
前回に引き続き、七都巳大竜がお送り致します。
さて、実験体エリザベートとの死闘を制した自分めは、その後も丸致場亜主を経由して様々な案件を遂行し続けました。
例えば怪物の駆除であったり、秘境へ立ち入っての貴重な資源の確保であったり……
或いは今回のエピソードで描かれますような、冒険者ギルドの暗部を象徴するような案件も少なくはなく……
「ブッ、ぶっヒィィィぃっ!? てっ、てんめぇぇぇぇ~っ!
よくもオレ様の可愛い子分たちをっ!」
「……なんだ、此れ等は貴様の子分だったのか?
すまんな。余りに穢いものだから、牛の糞が混ざった土塊かと思ってしまった……」
場面はとある辺境の廃工場……
体格や種族、服装などはそれぞれ異なるものの、総じてガラの悪さだけは共通の悪漢どもの亡骸がそこら中に散らかり放題となった薄暗い空間。
そこで相対するは愚連隊組織『母衣孔雲』を率いる下劣な豚獣人の沼田に御座います。
「為れど此れも致し方無きこと故にな……自分程度ではこうする他に無かったのだ、許せ」
先に申し上げてしまいますと、此度自分がこの廃工場にて愚連隊相手に虐殺を繰り広げ、
またその首魁たる醜悪な豚獣人と対峙しておりましたのは、ギルドより請けたとある案件の為に御座いました。
「ふっざっけんなぁっ!
オレ様の子分たちを殺しやがった挙げ句クソ入りの土呼ばわりしやがって!
オレ様たちはただビジネスをしてただけじゃねぇか!
顧客の需要に応えようと商売頑張ってただけのオレ様たちが、こんな目に遭わされるなんておかしいんじゃねーのかよ!?」
喚き散らす沼田……奴の主張は字面だけなら至極真っ当な主張にも聞こえますが……
「何も可怪しくはあるまい。
その商売とやらが合法であれば兎も角、貴様らのそれは人道を外れ法にも背いた鬼畜の所業。
ともすれば貴様ら自身も相応の報いを受けて然るべきであろう……」
「うるせぇーっ! 頭ユルんだバカ女の百人程度に仕事を斡旋してやっただけじゃねーか!」
とは言うものの……
実際連中が手を染めた商売とは、
街中やネット上で見繕った御婦人方を言葉巧みに騙したり攫っては娼婦やポルノ女優といった"仕事"を強制、
金儲けや性欲処理の道具として使い潰すといった、まさに人道を外れ法にも背く鬼畜の所業なので御座います。
また被害者数に関して沼田は百人程と宣いますが、後の捜査にて判明した所に拠れば少なく見積もっても三百人前後が被害に遭っているようでした。
加えて、これは当然といえばそうなので御座いますが……
「どうせあんな奴ら、叶いもしねぇ幻想に縋り付きながら凡俗として死んでくだけじゃねーか!
だからオレ様たちは奴らの人生に彩りを添えてやったんだ!
どいつもこいつも刺激が足りねぇスリルが欲しいつってたからよ、くれてやったのさ、奴らの求める刺激とスリルをなあ!」
どうやら沼田には毛程の罪悪感もないようでした。
「成る程主張は理解した。
お陰で自分の行動と、依頼主様の判断は間違っておらなんだと確信できた。
その点に関しては一応、感謝してやらんでもない……」
「あぁん!? 何をワケのわからねえことを言ってやがる!?」
「……理解できんか? ならもっとわかり易く説明してやろう。
先ず名乗っておくと、自分は冒険者だ。
ギルド経由で受領した案件遂行の為この場に馳せ参じた所存。
依頼主はビットランス政府……より厳密には現大統領の隈府ヨメミ女史。
依頼内容は貴様ら『母衣孔雲』全構成員並びその悪行に関与した者全員の駆除……」
大国の首脳が民間の冒険者ギルドに殺しの依頼など、地球ではまず考え難い出来事でしょう。
然しこれこそが異世界エニカヴァーの現実に御座います……。
「くっ、駆除だぁ!?
ふざけやがって、オレ様たちはシロアリやゴキブリじゃねーっての!
選挙で選ばれて税金で飯食ってる立場の癖に、罪のない国民を冒険者使って殺しに来るたぁどういう神経してんだあのクソ貧乳が!
胸が平べったいから脳ミソも平べったくてペラッペラってか!?
あんなバカが大統領やってるようじゃこの国も終わりだな!」
「……未だ暴言を吐き散らかせるとは、随分と余裕なようだな」
「なんだぁ!? このオレ様がてめー如き木端冒険者風情にビビるとでも思ってんのかぁ!? 愚連隊ナメてんじゃねーぞコスプレ野郎っ!」
言うが早いか、沼田は湧き出す光に包まれその姿を変えたので御座います。
例えるならば"RPGで主役を張る最強装備の勇者"を2000年代の特撮ヒーロー風にアレンジしたような……
『ブッヒィハハハハハ!
どうだコスプレ野郎っ! これがオレ様の切り札よぉ!』
その風貌たるや醜く肥え太った沼田とは輪郭や骨格からして別人のようでしたが、響く声や態度などはあの醜悪な豚獣人のそれに他ならず……
何でしたら『コスプレ野郎は貴様ではないか?』といった所で御座いまして……
「……随分と豪華な装備だな。親戚からの帰省土産か?
商戦期からして年末年始か、さもなくば夏頃の……」
『ブヒシシシッ、何とでも言いやがれぇ。
どの道この姿を見たが最後、てめーは死ぬしかねぇんだからなぁ!』
「大層な自信だな。そんなに強いのか? その武具……」
『おう、そりゃ強えさ! 間違いなく最強だぜ!
何せこいつぁ、勇者の装備だからなぁ!』
勇者の装備と聞いた自分は『よもやこの豚獣人が、嘗て地球から召喚され魔王討伐に代表される救世任務を命じられた勇者なのか?』と驚愕せずに居られませんでした。
確かに江夏才蔵もロクな男ではありませんし、地球への帰還を拒みエニカヴァーへ定着した後堕落した勇者がこんなものに成り果てたとして不思議ではないので御座いますが……
(豚獣人への変異過程がよくわからんが、ファンタジーとSFが混在する異世界なら何があっても可怪しくはない……)
ただ直後、沼田自身の口から語られたのはより悍ましい事実に御座いました。
次回、豚獣人沼田が勇者の力を獲得した吐き気を催すような経緯とは……