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第三十二話「案件達成。但し、完遂とはならず」

まあ~キヨヒメは殺さざるを得なかったので確かに完遂ではないのかもしれません。

 皆様、ご無沙汰しております。

 毎度お馴染み七都巳大竜に御座います。


「いざ、顕現!」

[KEN-GEN!! INCARNATE INSOLENT DRAGON!!]


 場面は前回より引き続き、戦闘中の荒野よりお送りしております。

 さて、状況としましては……


『我が罪悪!

 我が驕傲きょうごう

 我が荒天こうてん

 即ち罪竜、レイジング・プライド!』

「グゴオオオオガアアアアアッ!」


 恐竜吸血姫エリザベートとの激闘は、尚も続いておりました。


「ガアアアアアッ!」

『フンっ!

 ハァん!

 そのような単調な攻撃、当たるものかよっ!』

「ヴギィグゴオオオグアッ!」

『ヒョおっ!

 フリあっ!

 ヅエェあァ!』

「ヴグァ!?」

『何をやっとるかァ!』


 あれから熟考を重ねし自分めが変じたるは、蝙蝠の翼と孔雀の尾羽根を持つ青いグリフォンめいた竜型怪物の姿……名付けて"吹き荒れる傲慢(レイジング・プライド)"に御座います。


 燃え盛る憤怒(バーニング・ラース)の"属性"を火炎とするならば、吹き荒れる傲慢(レイジング・プライド)のそれは突風と雷電……

 単純な膂力りょりょくこそ劣るものの、攻撃範囲の広さや機動力など、また違った強みがあるのも事実なのでした。

 よって……


「ヴォギアアアアアアアッ!」

「ギャギィ!」

「ギュギギッ!」

「ギィーッ!」

「ギギャッ!」

「ギュギョイッ!」

『ぬんっ、蝙蝠に化けて逃げる気かっ!』


 異能により無数の巨大吸血蝙蝠へ姿を変え、散り散りになって此方を撹乱するエリザベートへの対処も、


『ならば吹き飛ばし消し炭にしてくれるわァ!』


 前形態バーニング・ラースに比べある程度容易なので御座いまして……


『そうら、竜巻と稲妻の合わせ技ぞ!

 如何に増えようと広範囲の無差別攻撃には流石の貴様も為す術あるまい!』

「ギャギ!」

 「ギギャ!?」

  「ギィーッ!」

   「ギュギャ――ブガアアアアアッ!?」


 竜巻で動作を封じた所へ満遍なく稲妻を放てば、巨大吸血蝙蝠の群れは力を失い忽ち変身は強制解除……

 元のエリザベートへ逆戻りと相成りました。


「ガアアアアアッ!?

 ――――グガッ! ゴッ!

 グゴオオオッ!」


 然し奴の心は尚も折れず……あちこち焦げ付き傷だらけになった巨体で無理矢理立ち上がったかと思えば、骨の軋む右後ろ脚をドンッ、と地面に打ち付け咆哮……

 闘争心と殺意を剥き出しに、あくまで抗い戦う意思を見せたので御座います。

 なんともはや"敵乍ら天晴あっぱれ"とはまさにこういった相手にこそ贈るべき言葉なのでしょうが……


『もう諦めいエリザベート、貴様に勝ち目など万に一つもありはせん。

 実験体の中でも取り分け賢かった貴様であればその事実とて理解できていよう?』


 然し自分めの目的はこの小娘の討伐ではなく捕獲に御座います。

 よって極力なるべく傷付けまいと、あくまで交渉さとしにかかります。


『そも、此度の謀反からして無謀なことは明らか……

 喋りこそできないもののヒトの言語を理解し、意思疎通もこなす程賢い貴様がその点を理解しておらぬとは考え難い。

 即ちエリザベート、貴様が此度起こした謀反とは、あくまでも施設側への実験体に対する待遇改善を訴え掛ける意図による行動であり、

 本心としては施設でのより好い暮らしを望んでいるのではないか?』

「グルルウウゥ……!」

『そもアシュリー所長はじめ施設側の面々もそこは以前より理解しておられ、貴様ら実験体の待遇を改善すべきとの判断を下しつつあるのが現実だ。

 故に、ここで大人しく戻りさえすればほぼ万事解決、互いに和解も成立するのではと自分は愚考するが……』

「ゴガァァァァァ!

 ヴォギアアアアアアッ!」

『……あくまで自分と戦うつもりか。

 ならば致し方なし、引き摺ってでも施設に連れ帰る迄!』


 その後、凡そ二時間足らずの激闘を経てエリザベートは鎮静化、その身柄は無事施設側へ引き渡されたので御座います。



 (=甘=)<なまじシンズドライバーの変身形態は軒並み火力腕力殺傷力が高すぎるもので、

       こうした器用さの求められる案件は不得手なのだと思い知らされた一件に御座いました……。



「いやぁ~ツァイくん、今回はお手柄やったなぁ!

 アシュリー所長も君のことべた褒めやったし、雇い主として誇りに思うでホンマ!」

「身に余る有り難きお言葉感謝致します、源元ギルド長。

 ……ただ、アシュリー所長のご意向とは言え、逃げ出した内の一体を殺害し(あやめ)てしまった件は悔いても悔いきれぬ過ち、

 此度の案件遂行に於いて数多ある猛省点の一つとして肝に銘じねばなりませんが……」

「何を気ィ落としとんねん。

 そらァオレは君と知り合うて日が浅いよって、君がここ来る前何しとったかは知らんし敢えて聞かんけどよ、少なくとも君は冒険者としてはまだまだ駆け出しの新人やろ?」

「仰る通りに御座います。一応、前職も冒険者のようなものではありましたが……」

「ほんなら失敗すんのが当たり前や。何なら冒険者に失敗はつきもんやで。

 ええかツァイくん、この世に徹頭徹尾全く微塵も何も失敗せぇへん奴なんておれへんねや。

 どこの世界でもそうやが、デキる一流は必ずどっかで失敗して学んどるもんや。

 大切なんは失敗から何を学び、今後にどう生かしていくかや。

 極論言うたら、価値ある学びさえ得られたらどんな被害損害も必要経費として割り切れんねん。

 もっとも、頭ええ奴ァ学びの積み重ねで物事の本質やらを理解して前もって失敗する確率を限りなく皆無ゼロにまで下げるよって、

 そないとんでもない失敗かます奴なんぞそうおれへんのやけどな。

 ……ま、色々ゴチャゴチャ言うてもうたけど、

 二の轍踏まんように次頑張ったらええ、そない気ィ落とさず明るく生きとけちゅうこっちゃ」

「……はい。有難う御座います、ギルド長」


次回、カクヨム版になかったオリジナルのエピソードが暫く続きます。

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