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第三十一話「力には責任や代償が伴う。それは自分の場合も例外ではない」

一見それほど欠点が無さそうに思えるシンズドライバーに隠された、

ヴァルスメイト神議会すら把握できなかった恐るべき副作用とは!?

 読者の皆様方、毎度お世話になっております。

 前回に引き続き、七都巳大竜がお送りいたします。



 さて、場面は件の荒野……


「ヴォガアアアアアッ!」

『ヌゥウウウグガアアアアッ!』


 じゃじゃ馬でお転婆な吸血カルノタウルス"エリザベートお嬢様"と、燃え盛る異形の猛獣竜バーニング・ラースへ変じた自分めの激闘は、苛烈を極めつつ尚も続いておりました。


『好い加減に諦めろエリザベート! 貴様はあくまで実験体!

 アシュリー所長の庇護と補助無くしては生きられぬ運命!

 恐竜も実質鳥であるならば、貴様も所詮は籠の鳥に過ぎぬ!

 その宿命を大人しく受け入れッ! せめてマシな死に方ができるよう祈り乍らッ! 我が手で捕縛されるがいわァ!』

「グォゴガギャアアアアアッ!」


 背から生えた豪腕で連打を繰り出す自分めの口から飛び出しますのは、我乍ら敵相手とは言え流石に倫理的にどうなのかと思わずにおれぬ暴言の数々……

 間違いなく自分自身の言葉であると自覚できていながら、内心どこかで『誰かに言わされているのでは?』との疑念をも抱いてしまいます。


(ああ、また"これ"だっっ……!

 少し変身する分にはいいが、長引くとどうにも気が狂うような、精神をかき乱されるような感覚に陥ってしまう……!)


 不快感は苛立ちに変わり、八つ当たりの如く攻撃は激しさを増していきます……


 ああ、控えねばならぬのに! こいつは殺してはならぬ相手なのに! どうしてこうなる!?


 ……その理由、憶測乍ら凡そ察しはついております。

 と言いますのも自分の身に着けたるシンズドライバーは、装着者の肉体と融合・同化し圧倒的な力を有す"罪深き七種の竜型怪物"への変身能力を授けると共に、

 その体組織を浸蝕し、より"自身を扱うのに最適な形"へと作り変えていく作用をも併せ持つ恐るべき装備品……


(ドライバーの管理を担っておられた神議会のシャーロック・サッカラム神様率いる研究チームに曰く

 『検証実験の結果も踏まえれば浸食作用は肉体にのみ影響を及ぼすのであり、精神には原則影響がないと断言できる』

 との事であったが……恐らく自分はその"原則"に当て嵌まらぬ"例外"であり、脳を通じて精神までもドライバーに浸食されておるのであろう……)


 所謂"精神汚染"に御座いましょう。

 シンズドライバーにより変ずる七種の怪物はそれぞれ七大罪の悪徳に対応する……

 なれば、変身に際し精神を侵食され、内なる悪徳に心を支配されてしまったとて不思議では御座いません。


(ええい、冷静になれ……落ち着くのだ七都巳大竜、

 またの名を冒険者・財大龍ツァイワンロンッ!)


 暴れ乍らに自分めは必死で悪徳に抗い、心を落ち着かせるべく己自身に言い聞かせます……。


(最悪奴を殺してしまえば、報酬の大幅減額は不可避……

 天瑞獣てんずいじゅうの元へ向かう為の旅費、ひいてはオメガの儀による地球への帰還にも少なからず影響する!

 否、それ以前に依頼者クライアントの要求に応えるのが冒険者の務めであろう!

 利益より地位より何よりもまず、仕事クエストを依頼して下さったお客様の気持ちを第一に考えねばならんのだっ!)


 或いは何でしたら、あのお転婆じゃじゃ馬娘(エリザベート)に対しても哀れみや慈悲を抱かぬわけでは御座いません。

 如何に敵対関係にあろうと奴とて心を持つ生命の一個体……

 自由を謳歌したいとの願望は持ち得て当然であり、必要不可欠とは言え施設で自由の無い暮らしを強いられていた境遇はある程度の同情にも値するでしょう。


 或いは現に、奴めを生み出し管理しておられるアシュリー所長もまた、その点に関しては多大に反省しておられるそうで……

 此度の反逆は必然。

 かつ非は施設側にもあり、よって実験体の待遇改善に努めるべきとの認識であらせられるとの事。


(なれば……なればこそ、在っては為らぬ……

 苛立ちと怒りに任せ、あの小娘の命を奪ってしまうといった、最悪の結末などはっっ!)


 激情に意識を飲み込まれそうになる極限の精神状態……そろそろ危ないかと感じた自分めは、ここで決断します。


(色々とリスクは高まるが、致し方無し……斯くなる上は変身形態を切り替えねばっ!)



次回、大竜が選び取ったのは……

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