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第三十話「正直、彼女が金持ちでなかったら危なかった」

サブタイどういうこと? って思ったかもしれませんが、

マジでパルティータが金持ちじゃなかったら結構ヤバかったかもしれない出来事があったんです。

いやまあ、仮に金持ちでなくてもなんとかしようのある案件ではあったんですけど。

 読者の皆様、毎度お世話になっております。

 前回に引き続き七都巳大竜がお送り致します。


「ええい、致し方無し! やはりシンズドライバーに頼るのが最適解であろうよなぁ!」

「グウアッ! ガアアアアアッ!」

「罪業背負う七竜に乞う! その悪しき力振るう権能を、今一度我に貸与されたし!

 顕現要請、邪悪魔神器シンズドライバー!」

[SIN'S DRIVER!!]

「いざ、顕現!」

[KEN-GEN!! INCARNATE IRASCIBLE DRAGON!!]

『我が罪悪! 我が赫怒! 我が獄炎!

 即ち罪竜、バーニング・ラース!』


 現在の状況としましては御覧の通り、冒険者としての初仕事を遂行中……

 聞き分けのない我が儘家出娘を指導すべく、シンズドライバーにて怪物に変身した所で御座いました。


『グウウガアアアアアア! 今日はどうにも機嫌が悪い……!

 我が憂さ晴らしに付き合って貰うぞ、小娘ぇ!』


 荒々しい啖呵は咆哮の如く。

 なれどその一方、自分目は内心思い悩んでおりました。

 というのも……


(さて、そうは言ったものの幾らかは丁寧に扱わねばなるまい。

 何せこの娘っ子は所長曰く研究の鍵を握る貴重な個体……『なるべく生け捕りにして欲しい』と頼まれておる。

 或いは最悪命を奪ってしまえば報酬減額や、最悪は損害賠償や訴訟さえ有り得んとは言い切れん。

 なればこそ慎重に立ち回らねば……)


 変身に伴う副作用……即ち"憤怒の罪に対応する精神浸蝕"の影響から些細な切っ掛けでも凶暴化しやすい欠点を抱える姿なんぞに変身しておいて、幾らなんでも無茶が過ぎるぞと内心自嘲せずにおれませんが……

 といってこのバーニング・ラース、実は七つある姿の中でも比較的汎用性が高い代物に御座いますからして……

 自嘲の一方『案外簡単に事が進むのでは?』と、この状況を楽観視する考えも浮かんで来てしまっておりました。


『……まあ、別段どうでもいかァ。

 丁度、あの救い様がなく下劣な男色生塵なんしょくナマゴミの不細工で薄汚いツラを思い出して腹が立っておった所よ……

 どれ小娘、暴れたいなら相手になろうぞ。簡単に壊れてくれるなよ……?』

「ゴアアアアアアアアッ!」


 牙の間から炎を迸らせつつ挑発してみれば、酩酊より復帰したエリザベートは怒り狂ったように吼え猛り……

 巨獣二頭の大乱闘が幕開けとなるので御座います。


『精々気張れよ我儘娘ェ! 勝手に死んだら許さんぞオ!』


 ……さて唐突に話題は変わりますが、ここまで読み進められた読者の皆様としましては何かしら気になる点などおありではないでしょうか。


 思い当たるフシのある方もない方も、

 どうぞここから先の回想パートをお読み頂けますと、自分としましては幸いに御座います。



 (◎甘◎ )<どうか今こそ語らせて下さいませ……

 (▽甘▽ )<実に腹立たしかった、あの出来事について……



「なんてこった……」


 それは自分が冒険者になって二日後の朝方の出来事に御座いました。


「いやはや、どうしたもんかねこりゃ……」


 玄関先から聞こえますのは、困り果てたパル殿のボヤキ。

 如何にも只ならぬ雰囲気に御座いますが、果たして何が起こったのかと声のする方へ向かってみれば……


(なんだこれは……無数の、箱?)


 目に映る光景に、思わず目を疑わずにはいられませんでした。

 それなりに広い筈の玄関先に所狭しと積み重ねられた無数の段ボール箱……

 大小様々なそれには色鮮やかなロゴが印刷されており、表面の質感からして新品と思われました。


「パル殿、これは一体っっ……?」

「ああ、ダイちゃん。起きてたんだねおはよう」

「はい、お早う御座います。

 それでその、こちらに積まれた無数の箱は一体何なのですか?」


 自分は迷わず質問を投げかけますが、対するパル殿の返答はというと……


「いやまあ、何というか……見ての通りの状況なんだけどさ」

「そう仰られましても、何が起こったのやら今一理解しきれぬのですが……」

「ああー……まあ、そりゃそうだよね。

 どこから説明したらいいか……とりあえずこの段ボールは一旦置いといて、ご飯にしよっか」

「……わかりました」



 (=甘=;)<積み上げられた箱の正体とは……



「それで、あの箱の正体だけど……要するに宅配物でね」

「……やはりですか。

 貼付け票らしきものが見えましたもので、概ね宅配物であろうと察しはついておりましたが……

 やはりそうでしたか」

「うん。宅配物なんだよ。ダイちゃんは地球人だから初めてだと思うけど、

 エニカヴァーにはああやって宅配物を魔術で家の敷地内に転送したりってことがよくあってね。

 まあ、それ自体は珍しくもないんだけど……問題はその送り主なんだよねぇ」

「送り主、に御座いますか」


 辟易とした様子のパル殿。

 果たして彼女をそこまで悩ませる送り主とは……


「うん。態々勿体付けるような話でもないしハッキリ言っちゃうとさ、あれ送って来たの。四宝傑のバーゲストさんとエヴァンスさんなんだよね……」


 四宝傑のバーゲスト・美代子殿とゾーイ・エヴァンス殿……読者の皆様方は覚えておいででしょぅか。

 嘗て丸致場亜主総本山の執務室にて自分めに欲情し迫って来た挙句、重ね契りの術により返り討ちに遭われた哀れなお二方に御座います。


「……なんと」

「ご丁寧に手紙が入ってたから間違いないよ」


 荷物に同封されていた手紙によれば、お二人は先日の執務室での一件を悔いておられるそうで……

 自分への非礼を詫びずに居られぬと、熟考の末副業で経営に携わる企業の様々な商品を贈ろうとの発想に至られ、善は急げとばかりにパル殿のマンションへ郵送された、との事でした。


 こう聞くと如何にもお二方が素直に反省しておられるかのようですが……

 然しパル殿に曰く『素直に反省したなんてことはないだろう』との事でした。


「根拠は主に二つ……

 まずあの二人、結構プライド高くて強情な上に自信家だから自分の過ちや非を認めるなんてことはそうそうないんだよ。

 大良さんや時任さんどころか、場合によっちゃ源元ギルド長にだって口答えするぐらいだからね」

「……仮にもご自身の雇い主、それも元魔王にですか?」

「関係ないよ。あの人たちは基本、自分の主観が絶対正しいって前提で生きてるから」


 そんなスタンスで尚冒険者ギルドの要職に就けている辺り、あのお二方は余程高い能力を有しておられるのでしょう。


「それともう一つの根拠なんだけど……あの段ボール、全部着払いで届いてたんだ」

「……着、払い?」

「うん。なんかややこしいんだけど、要するにまあ

 『会社の商品を予め買い上げた状態で送るから、商品代金は全額そっちで負担してね。

  因みに返品とか受け取り拒否はできないからヨロシク~』

 ってコト、らしいよ?」

「……」


 思わず絶句せずに居れませんでしたが、同時にあのお二方の"お詫び"が実質的な"報復"である事実は一先ず理解できました。


「逆恨みされていても不思議ではないとは思っておりましたが、よもやそこまでするとは……」

「まあ要するに、あの二人なんてそんなもんってことだよ」


 "そんなもの"の一言では到底割り切れないと思いますが……

 然し幾らパル殿が高給取りの富裕層とは言えこのような報復を黙って見過ごす気にはなれません。


「パル殿、一つ提案なのですが……」

「……『法的手段に打って出よう』って? まあ、あたしも一瞬それ考えたんだけどさ……

 やめといた方がいいんじゃないかな。

 明らかに自業自得なのに逆恨みでこんなことしてくるような連中だよ? ここで下手に刺激したら何仕出かすかわかったもんじゃないじゃん」

「確かに、そうですが……」

「そりゃあたしだって、貯蓄全体から見ればはした金でもこんなふざけた真似に金なんて使いたかないよ。

 けどそのはした金惜しんだ結果面倒な騒ぎに巻き込まれるのは御免だからね。

 まあ、最低限ギルド長にチクっとけば何とかしてくれるでしょ。もしかしたら払った分の金も戻って来る、かも」

「……わかりました。ではそのように……」


 因みに段ボールの中身そのものは、各企業が販売している日用品や冒険者向けの武器・生活用品の他衣類などであり、

 何れも概ね上質で使い勝手のよいものが大多数を占めていたのがせめてもの救いでしょうか。


 ……といって、中には件の棍棒のような不良品も少なくなかったので御座いますが。



次回、シンズドライバーの思いがけない副作用が明らかに!

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