第三話「正直、土壇場で変に気分が高揚していたと思う」
ジャンジャジャーン!
今明かされる衝撃の真実ゥゥゥ!
自分の名は、七都巳大竜……
「喰らえ必殺、セブンスヒーロー・エクスプロージョン!」
「ぐおうぅぅぅぅっ!?」
窮地を脱す為の策を弄す間もなく、
嘗て仕えた主君の手で引導を渡されし、
哀れな追放者に御座います。
(◎甘◎)<お話しせねばなりますまい、上記の場面に至る迄の経緯を……
切り札たる"邪悪魔神器シンズドライバー"の封印は、
自分にとって冤罪での死刑宣告に等しい絶望に御座いました。
なれど自分は尚も諦観せず、
あくまで生の可能性に縋り続けたので御座います。
(隙だ……奴らの平静を乱し、強制的に隙を作らせれば……)
一団の六人は何れも余裕綽々といった様子で勝ち誇っておりました。
実際自分より連中めが優勢たる事実は揺るぎません。
然し自分にしてみれば、そのような状況そのものが
ある種の好機でもあったので御座います。
「いやはや、流石は我等が江夏勇者。
世界救済の大英雄、対魔王軍の最高戦力といった所で……
恐れ入りました、自分めの完敗に御座いますなぁ」
「……なんだよいきなり、気持ち悪いヤツだな。
世辞言ったって無意味だぞ、俺はもう絶対にお前を許さないからな」
「赦しを乞おうなど、毛頭思うておりませぬ。
自分は只、率直な感想を述べた迄……」
「ふん、わけわからん真似しやがって……
おい何モタついてんだ、
早くこいつを殺しちま――
――「ところでぇ!」
刹那、自分は江夏の言葉を遮り声を張り上げます。
そして……
「隊長殿、今週分の郵便物には目を通されましたかな?
少数乍らも重要なお便りが含まれておりましたが……」
「な、なんだね突然っ?
郵便物のチェックなら済んださ、
今更態々君如きが心配することじゃないだろうっ」
読みは的中りました。
如何に殺そうとしている相手とはいえ、
つい先日までは小間使いであった相手……
加えて上辺では高潔な英雄を装う一団の連中は、
自分の振った話に耳を傾けざるを得ないであろうと踏んでおりましたが……
馬鹿正直に返答までしてくれるとは好都合っ。
それでこそ"乱し甲斐"も御座います。
「其れは其れは、好う御座いました。
ともすれば『バブちゃん♥愛らんど』
プレミアム会員限定イベントの招待状も確認済みと、
そう解釈して構いませんなぁ!?」
「な、っっっ……!」
声を張り上げてやりましたらば、
重装騎士アルス・ディランは板金鎧でも隠せぬ程に動揺……
他六名は彼を訝しみ、疑い、
何かを察しては軽蔑の視線を向け始めます。
「『バブちゃん♥愛らんど』? なんだそりゃ?
おいアルス、どういうことだ。説明してくれないか?」
「はッ!? な、何を仰有いますかサイゾウ殿ぉ!
わっ、私は知りませんそのような店などっ!」
「なるほど店なんだな。どういう店なんだ?」
「ですから知りませんと申しておりましょう!?
そのような、
"日々に疲れた大人赤ちゃん専用の保育園型風俗店"などっ!
私は微塵も知りませんからっ!
母乳のエルノアママも
玉温めのフレイアママも
菊座ほぐしのマリアナママも知りませんからぁ~っ!」
気が動転したのでしょう、
知らないと主張する割に店の詳細を明かし自滅していく重装騎士……
気高く勇敢な人格者にして"騎士道精神の化身"とも称される彼が
その実特殊な性癖に特化した夜の店の常連である事実は他の六名に衝撃を与え、
一団の面々は口々に重装騎士を批判しますが……
この程度で終わろう筈も御座いません。
「郵便物といえば……格闘士殿っ!」
「ぴッっ!?」
「貴殿宛にも大量の封筒が届いておりましたなぁ!
送り主は何れも世界各地の弁護士事務所や探偵社っ!」
「いやアその、それハッ!」
「何事かと思い封筒に記載の連絡先へ問い合わせましたが……
中身は何れも不倫不貞の証拠データや、慰謝料請求の内容証明であるそうで!?」
「いヤだかラその、それは何かの間ちが――
「これは一体何事なのか、
正直者で隠し事や不正を嫌う貴殿ならば
説 明 し て 頂 け ま す よ ね ェ ! ? 」
「おい! ロップ! お前どういうことだよ!?
故郷に残して来た旦那と娘が一番の宝物で、
旦那とは一蓮托生互いに操立てて浮気も不倫も絶対しない、
『魔王倒すまで人参はお預け』の誓いはどこ行ったぁ!?
俺その誓いあるからってお前に手ぇ出すの我慢してたんだけど!?」
「うぅ……」
さてさて、これにて二人……ですが当然、まだ終わりなどでは御座いません。
暴露は続くよ、次回迄も……