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第二十一話「彼女曰く『金を払う役目は経済力のある奴が担うもの。性別は関係ない』とのこと」

パルティータと大竜の買い出しデート、開幕!

 読者の皆様方、日頃より大変お世話になっております。

 自分、七都巳大竜ナナツミダイリュウと申します。

 例によって、現状を踏まえて自己紹介をさせて頂くとしましたらば……


「ダイちゃんダイちゃん、これなんてどう? 折り畳み式だし下になんか落っこちた時とか便利そうじゃない?」

「確かに、滑車付きなので移動もある程度は楽そうですが、然し値が張るのがどうにも……」

「いや確かに高いは高いけど誤差じゃん。だったらいいもの買っといた方がいいじゃん。

 昔の格言にもさ『"高いから買わない"だけなら買え。”安いから買う"だけなら買うな』ってあるじゃんさ」

「それはそうですが……」

「よし、なら買おう。買って損ないよこれ。

 てかお金出すのあたしなんだからダイちゃんはそういうの気にしなくて良し!」


 大国ビットランスが主要都市ヴェーノ市の中心部に建つホームセンター"エラボ"の家具売り場にて、

 相方兼恋人の魔女パルティータ殿に連れられ自分用のベッドを品定め中の、本作で主人公を務める男に御座います。



「そういえば聞いてなかったんだけど、ダイちゃんって好物なんだっけ?」

「……今直ぐに思いつくものですと、餃子はかなり好物でしたな。

 会社員時代一緒に働かせて頂いた中に天才的な腕前を誇る料理人の方が居られまして、その方に教わって以後一時は皮から作っていたような時期も御座いますが」

「皮から!? 具から作るのはあたしの知り合いにも幾らかいるけど、皮はあんま聞かないよ……?」

「……ほんの一時ですがね。退院後は時折具から作る程度になってしまいましたが……

 昔のように皮から餃子を作ってみるのもアリかもしれぬと、思わなくもありません」


 嘗て元妻も自分の餃子を絶賛しておりましたもので、将来父親となった暁には我が子へ自作の餃子を振る舞うのを夢見ておりました……

 結局妻とは離別の後死別した挙句再婚もする気になれなかった為、それも今や叶わぬ夢となりましたが……。


「自慢する程ではありませんが、アンリミット時代は会社の皆に振る舞ったこともありましたな。

 初代社長が特に気に入って下さいまして……」

「そっかそっか。じゃあアレだね、ダイちゃん用の電磁調理器とフライパンとフライ返しと……

 どうせなら製粉機ミルも買っちゃおうか」

「いえ流石に小麦粉から自作というのは……そもそも製粉機は家庭用でもかなり値が張るワケですし」

「いや価格は気にしなくていいって言ってんじゃん?若人、それも大の男がさ~細かいこと気にしてちゃ駄目だって~。それにほら、今丁度製粉機フェアやってるし!」

「何ですかそのピンポイント過ぎるフェアは……って、本当にやってる……?」



「ダイちゃんってさ、配信者時代はどういう感じのパソコン使ってたの?」

「入院中の想定としては市販品を買い揃えるつもりだったのですが、機械屋上がりの同僚に相談した所、自作を勧められましてな」

「自作? 地球そっちで?そりゃエニカヴァー(このへん)なら魔術も発達してるし半導体とかそういう部品の段階から作れば格安で済むけど……」

「そこまでは致しません。市販の部品を買い集め組み上げるのですよ。

 地球むこうでは半導体からとなると手間も予算もかかりますからな。

 とは言え自分は門外、同僚に手取り足取り教わりながら必死で組み上げたものを使っておりました」

「へぇ~。……それでもじゅーぶん過ぎるくらい凄いことだよね。市販の板チョコ溶かして型に流し込んで固めるのとはワケが違うじゃん」

「その点に関しては諸説あると思いますが……自分も正直、多少高くとも市販品で楽をしようと思っていたのですが、同僚の熱気に気圧されましてな。

 どうにか完成したものを使ってみたところ、これが意外と侮れない性能でして。

 それもひとえに、組み上げの指導のみならず部品の仕入れにも手を貸してくれた同僚のお陰に御座いますよ」

「まあ確かに同僚さんのお陰ではあるんだろうけど、組み上げたのはダイちゃんなんでしょ? だったら誇るべきだと思うよ。同僚さんもそっちの方が喜ぶだろうしさ」

「それもそうですなァ。……戻ったら改めて礼を言わねばならん」

「――というわけでこっちで暮らすにあたっても自分用のパソコンとかあった方がいいでしょ?

 パソコンがあればこそできることってわりとあるだろうしさ」

「何が"というわけ"なのか今一よくわかりませんが、確かにあれば便利でしょうなァ。

 勇者一団時代は神聖王国くにから支給された携帯端末で事足りていましたが」

「じゃあ買おう今買おうすぐ買おう。デスクトップよりはノートのがいいよね?

 自己修復機能と独立形態に変形する機能のついてるヤツ」

「自己修復に、独立形態……?」

「あー、その辺もそっちじゃ一般的じゃないんだっけ。

 この辺の電子機器はね、多少の不具合とかなら全自動で修復しちゃうし、車とかロボなんかに変形して動き回るような機能がついてる機種があるんだよ。

 まぁ技術的な問題からあんまデカいのには搭載できないんだけどさ」

(……自己修復はともかく変形機能は要らんのだが……恐らく普通の機種で構わないと言っても押し切られそうだな……)



 その後も我々はディスカウントストアや家電量販店等複数の店を梯子し、

 新生活に必要なものを買い揃えていったので御座います。



(*∧甘∧)<因みにこの時パル殿が着ておられた御召し物は、

      デニム素材のマーメイドスカートにシンプルなデザインのトレーナーを併せたカジュアル路線のコーディネートなのですが、

      フード付きの外套や皮革レザーが中心の仕事着(戦闘服)とはまた違った良さがあり自分としましても色々トータルで大満足に御座いました♥



「家具寝具家家電、寝間着に肌着に普段着と、その他生活必需品にあたし名義の通信機器他電子機器……

 うんうん、大体揃ったかな~。

 あとはギルドに登録……する前に戸籍情報と身分証明書の偽造があったか。

 それから認識阻害も業者にしっかりしたの頼まなきゃね~」

「……本当に本日は有り難う御座います。

 何から何まで準備して頂いて、何とお礼を申し上げればよいやら……」

「いいってばもう、何度も言わせないでよ~。

 元々組む話の言い出しっぺはあたしだし、面倒見るって約束したんだからこのぐらいやって当たり前じゃん?

 彼女なんだし年上なんだからさー、このくらい面倒見たってバチ当たらんでしょ。

 もし恩に報いたいってんなら構わないけど、ぼちぼちできる範囲で構わないってーか、

 まぁ普通に仕事手伝ったりしながら遊んでくれたりヤらせてくれればそれでもうじゅーぶんみたいなとこもあるからねぇ~。

 ……とりあえず今から認識阻害魔術の専門業者んとこ行くけど、道順わりと複雑だし治安もさほど良くないとこ通るからそのへん気を付けてネ」

「畏まりました」


 時刻は夕方十六時半頃、季節柄もあり既に日は落ち込み辺りは暗く……

 ともすれば繁華街の裏路地……

 悪しき者、善からぬ物、正しからざるモノが一堂に会す社会の暗部は本腰を入れて動き出し、

 怪しく光る狭い街道は海の底より深き闇の支配下へ置かれるので御座います。


「――認識阻害系ってのは、数ある魔術の中でも特に厄介な代物でね。

 習得そのものは普通の魔術師でもできるし、何ならほぼ全ての魔術を教える教育機関で教わるような、そんなものだよ」


 夕闇深まる路地を進みながら、パル殿の魔術講座に耳を傾けます。


「けど法的な扱いが面倒でね、

 ある程度上位のヤツになると政府の許可を受けた魔術師にしか使えなかったり、何なら国によってはそもそも使えないなんてこともある。

 かく言うあたしが使える認識阻害魔術もその実、法的な規制が甘いタイプの、要するに性能面が若干心許ないヤツしかなくてさ……

 だから認識阻害でガッツリ身を隠そうと思うと、専門の業者にそれ系の魔術をかけてもらう必要が出て来るんだわ」

「業者にかけて頂く分には合法であると?」

「現行法の上ではね。

 といっても法制度の虚を突くような真似だから、いつかはできなくなるだろうって言われてるよ。

 ま、そうなったら何かまた別の方法が編み出されるんだろうけどネ」


 話し込みつつ進む内に辿り着きましたのは、裏路地の更に入り組んだ最奥部……

 一見すると何もない、薄汚れたコンクリートの壁に囲まれたる小さな空き地に御座いました。

次回、パルティータの知られざる(?)学生時代を知る人物が登場!

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