第十五話「折角増えてくれたのだ。鏖(みなごろし)こそが礼儀だろう」
なんだかんだで(多分)本年最後の更新になります。
当会を支えて下さった数多の皆様方、どうぞよいお年をお過ごしください。
(こんなサブタイで何言ってんだって話ですが)
親愛なるお優しい読者の皆様方、毎度お世話になっております。
前回より引き続き、七都巳大竜が変身しながらお送りいたします。
「いざ、顕現!」
[KEN-GEN!! INCARNATE NASTY DRAGON!!]
さて、邪悪魔神器を起動・操作した自分めは
手始めに黄色く光り輝く微粒子の渦にその身を包まれ、全身明るく鮮やかに黄色い狐の怪物へ姿を変えました。
『求めて、探して、叩きのめそう……!』
ただ狐と言っても体格は競走馬を一回り上回るほどに大きく、頭には耳に加えて小鬼の角が生え、目玉は大小八つ。
左前脚は小鬼の腕、右後ろ脚は小鬼の脚であり、背には翼の如く毛に覆われた蜘蛛の八本脚が生え、尾にしても一見狐の尾に見えてその実細長く延長されし蜘蛛の腹部……
といった具合に、狐本来の愛らしさや美しさ、神々しさなどは感じ取れぬ異形ぶりに御座いましたが、
まあ、蜘蛛と小鬼の要素が混じった時点でその辺りは如何しようも御座いませんので……
『寄越せや寄越せ、貴様の血潮に骨肉、生命、網に掛かるもの全てを寄越せぇ~』
「「「「ひぎゃああああ!?」」」」
尾に相当る部位の腹部先端より放たれるは、網状に編まれし黄金の蜘蛛糸……
強靭であるそれらの表面には粘液の代わりに細かな棘が生えており、触れたものを切り裂くよう設計されております。
「「「「「ぎゃあああ!」」」」」
「「「「「「いっだああ!? あだああああ!」」」」」」
「「「「「「だすげっ! だすげでえええ!」」」」」」
……洋画『プレデター』で主役を張る宇宙狩人族が用いる"獲物を切り裂く漁網弾"を思い浮かべて頂ければ、
との例えで果たしてどれほどの読者様に伝わりますでしょうかね……。
(多く掛かればよいがなあ……否、多く掛かるであろうよ我が網ならば!)
「「「「「「ぎょごがあがぎゃげええええっ!?」」」」」
さて、果たして網での成果はと言いますと……
『……思いの外少ないな。雑多に網を投げる前には下準備が必要か』
どうにも『思っていたのと違』ったので御座います。
『動き回られては厄介だのぅ。クフォオオオオオオオオオ……!』
そこで自分めは口から黄金色の煙幕とも土煙ともつかぬブレスを放射……
「「「「「ぐぎええええええ!?」」」」」
「「「「なにっ、これえええええ!?」」」」
「「「「「「から、だが……ああああ!」」」」」
「「「金メッキで、固め、られてっっ……!?
うご、かなっ――」」」
「「「「「「「――……――……」」」」」」」
一見只の煙幕にしか見えない此方のブレスですが、果たしてその正体は本形態が持つ"鉱物を操る力"の一部であり、
触れた物体を我が意の儘に金属の被膜で覆い尽くし支配権を奪う効果が御座います。
それ故、ブレスに少しでも触れてしまったゴブリンどもの表面は黄金の分厚いメッキで固められ、
生き乍らにして物言わぬ金細工と化してしまうので御座います。
『よしよし、上手く行ったな。ざっと九千弱か』
そこからは単純明快。
それらを蜘蛛糸の網にて一網打尽にしましたらば、エントランスの床へ打ち付けるだけで細切れになり、哀れ連中は無言のまま絶命してしまうので御座います。
『さて次だ……顕現!』
[KEN-GEN!! INCARNATE INSOLENT DRAGON!!]
続いての変身
――東映に例えるなら"フォームチェンジ"、
円谷ならば"タイプチェンジ"といった所でしょうか――
にて、青白い稲妻を伴う藍色の竜巻に包まれし自分が変じたるは、西洋の幻獣グリフォンが如き怪物に御座います。
『天空に仰ぎ見て、平伏し拝み崇めるがいい……』
全体的な羽毛体毛は空の如く青く、猛禽の翼に続く形で蝙蝠の両腕が備わっております。
そして獅子の尾に代わりに煌びやかな雄孔雀の尾羽根が生えたその姿は一見ある程度美しいと解釈出来なくも御座いませんが……
『意味も無く数ばかり増えた量産型の愚物ども……誰の許可を得て我が前に立つかァッ!』
「「「「「「「どわあああああ!?」」」」」」」
シンズドライバーの力に由来する"悍ましく罪深き怪物"なだけあり、まさしくその戦いぶりはド派手な迄に残虐非道かつ凶悪そのもの。
猛禽と蝙蝠、四枚の翼にて巻き起こされる突風はそれだけで数多のゴブリンを吹き飛ばし、その悉くを死に至らしめましたが……
『頭が高いわァ、消え失せいッ!』
「「「「「ぎょっばらべええええええ!?」」」」」
真なる狙いは吹き飛ばして一箇所へ集めることに御座います。
広げた尾羽根より放つ青白い電撃は、一纏めにされしゴブリンどもを尽く射抜いては炭の礫に変えました。
『威力は絶大なれど、範囲に少々難ありか……』
さて、今回は所謂我が"チート能力"のお披露目回につき、
キリのいい所で次の変身と参りましょう。
『では次だ、顕現!』
[KEN-GEN!! INCARNATE JEALOUS DRAGON!!]
美しき緑色の水飛沫と激流に包まれ変身したのは、蜻蛉と大蛇を掛け合わせつつ、背の翅を魚の胸鰭が如く変異させ、
背鰭、腹鰭、尾鰭も生やし、また鱗に覆われた水掻きのある腕をも備えし、禍々しくも鮮やかな緑色をした細長の怪物に御座います。
『何より嫌悪すべきは……己自身の劣性也!』
さてその攻撃法としましては……
『我が身を焦がす劣等感……魂苛む自己嫌悪……
我が苦悩と苦痛、その身に刻み込めェェ!
シャアアアアアアアアッ!』
「「「「「「刻み込むってか刻まれえええ!?」」」」」」
口から放ち薙ぎ払う一直線の流水ブレスに御座います。
「ぎゃわあああああ!?」
「ぐげええええええ!?」
「ごぎょばげべぇーっ!?」
その純然たる勢いたるや凄まじく、更にそこへ腹に残った小骨や貝殻の破片でも混ざろうものなら
水流は断てぬもの無き刃と化して、当然ゴブリンらを次々切り刻み絶命させたので御座います。
『駄目だ……駄目だ駄目だ駄目だっっ!』
とは言え、この時の自分めは
―ドライバーの齎す"ある副作用"により―
既に十分すぎる程の成果を出して尚、己の戦いぶりに納得できておりませんでした。
即ち……次の変身に御座います。
明日、新年一発目の更新はある意味干支に因んだオチになる予定です。
それを言い出したら本作はそもそも主人公の名前からして来年の干支に因んだ作品なんですが……