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第十四話「雑兵風情がただ無作為に増えた所で、彼女の才能と努力を超えられるわけがない」

新真玉グループの残党が出現!

果たして二人はどう戦うのか!?


 読者の皆様、毎度お世話になっております。

 自分めは七都巳大竜ナナツミダイリュウと申します。

 現在の状況を踏まえ、簡単に自己紹介させて頂くとすれば……


「あんッ、たらァ……! よくもお姉様たちを……!」

「大丈夫だよ小鬼ちゃ~ん、あんたの大好きな"お姉様たち"にはすぐに会わせてあげるから~」

「尤も何処へ落ちるか迄は我らも決められぬ故、直ぐに再会が叶うとの確証も無いがな……!」


 組ませて頂く運びとなった美しき魔女パルティータ・ピローペイン殿のお力添えもあり、

 無事奪われた装備一式を取り戻した直後"新真玉しんしんぎょくグループ"が残党のゴブリンと遭遇せし、本作の主人公に御座います。


「ッッざぁけんじゃないわよォ!

 なんでアタイが死ぬ前提でモノ言ってんのよあんたらァ!

 たかだかアンデッドの魔女にコスプレ男如きがぁ!

 この新真玉グループ期待の新星、道群井美みちむれいみに勝てるワケねーでしょうがぁ!

 究極奥義、五分身っ!」


 早口で捲し立てたゴブリンの道群は、

 恐らく魔術か何かでしょうか、分身を四体増やして我々を取り囲みます。

 全員の手には自動拳銃。

 その銃口は当然我々の側を向いておりましたが……


「手ぇ出さないでね、ダイちゃん。こんなんすぐ終わらせるから」

「畏まりました」

「はぁ!? ちょっとあんた聞き捨てならないわね!?」

「誰が何を、どうするですってぇ!?」

「男の前だからってカッコつけよーとしてんじゃないわよ!」

「これだから彼氏持ったぐらいでイキってるバカは!」

「今に見てなさい、その男共々あんたらなんて蜂の巣にしてやるんだから!」

「――蜂群ビー・スウォーム


 パル殿は口々に煽るゴブリンどもに目も暮れず……

 手元のメモ用紙に何かを書き記すと、その一枚を取って宙へ放り投げました。


「ハッ、何よ!? そんな紙切れでどうしようって――

「見ててダイちゃん、これぞあたしが開発中の魔術……」


 すると、宙を舞う紙

  ――エニカヴァーの文字で"蜂群"と書かれております――

 は、刹那の内に閃光を放ち、ゴブリンどもの視界を奪い乍ら無数の蜂へ姿を変え、

 忽ち一斉に連中へ襲い掛かったので御座います。


「っぎゃあああああ!?」

「いやあああああ!?」

「はっ、蜂っ!? 蜂いいい!?」

「なんでっっ! なんで今の時期に蜂がっっ!?」

「刺される! 誰かっ! 殺虫剤ーっ!」


 古来より蜂は知性体を恐怖させる動物であり、

 ともすれば当然ゴブリンどもは恐怖によりパニック状態に陥りました。


「――狙己サイト・マイセルフ引銃爪プル・トリガー

「ごぶっ!?」

 「ずべ!?」

  「じぎっ!?」

   「ぼげ!?」

    「でぼっ!?」


 立て続けに投げられやはり光を放つ二枚の紙……

 と同時に、ゴブリンどもは手にした拳銃を各々の眉間へ突きつけ、蜂に集られたまま自害してしまったので御座います。


「成程、書かれた文字が魔術の形で実体化しておられる……確かに浴槽内にて聞かせて頂いた通りに御座いますなァ」

「詠唱呪文の短縮と省略と、魔力消費の軽減、

 あとは術式設定の簡略化なんかになればいいなってんで、三十年くらい前に開発し始めたんだ。

 実際慣れれば便利だし開発したのに悔いはないけど、まだまだ制約とか欠点も多くて課題は山積なんだよねぇ。

 名称もまともに決まってないし。

 いや~、やっぱ黎明期の魔術師って誇張抜きに現人神だったんだなって改めて実感させられるよね~」

「何を仰います、パル殿の技術も魔術に秀でぬ自分からすれば大概神業に御座いますよ。

 謙遜を悪とは言いませんが、それにしてもご自身の行いを誇られた方が――


「「「「「よぉぉぉくもやってくれたわねぇぇぇ!」」」」」


「……なんだと」

「おっと、これはまた……」


 我々が話し込んでいる所へ、先程死んだゴブリンどもの声が響きます。

 しかもその声は五体どころではなく、どうにも無数に聞こえるわけでして……実際、奴等は無数に増えておりました。


 一体これは何事か。張本人たるゴブリンどもに曰く……


「「「アタイの究極奥義"五分身"を秒で破るとはやるじゃない!」」」

「「ただの雑魚ってわけじゃなさそうねぇ!」」

「「「「けど残念だったわね!」」」」

「「「五分身はただ分身するだけの技じゃなくってよ!」」」

「「五分身の発動中にアタイが全員死ぬと、"倍加と累加の術"が発動するの!」」

「「「「これは死んだ術者の個体数を増やして復活させる大魔術!」」」」

「「「「そして増える数は、

    短時間で死ぬほど、

    敵に殺されるほど、

    同じタイミングで死ぬほどに大きくなるわ!」」」」

「「「「「そんでアンデッドの雑魚魔女!

     あんたはアタイを一瞬で、

     あんた自身の手で、

     五人全員同時に殺した!」」」」」

「「「「「「「よって限界数増殖の条件が満たされ、

       アタイの数は五の七乗……

       つまり、七万八千百二十五人ってことよ!!!!!!!

       さあ、あんたにこの数を捌き切れるかしらぁ!?」」」」」」」



 広大なエントランスを埋め尽くし、通路まで鮨詰め状態で叫ぶ無数のゴブリン……

 確かにこれはパル殿程の敏腕魔術師であろうと処理に困る量に御座いましょう。

 そこで……


「パル殿、ここは自分めにお任せ頂いて宜しゅう御座いますかな?」

「ん? やってくれんの?なら助かるけど、この数だよ?

 めんどくさくなんない?」

「ご心配には及びませぬが……万一の事態は想定して頂けますと有り難く」

「ん、勿論ヤバそうだったら助けるよ。何せあたしの大切な彼氏クンだからねぇ~♥」


 無邪気なパル殿の笑顔こそは、

 自分めの魂を奮い立たせるに最高最適の起爆剤に御座いました。

 然し()()()()()の恋がこんなにも素晴らしいとは誰が想像し得たでしょうか……

 『彼女こそは大切にせねば。過ちを繰り返してなるものか』と決意した自分めは、

 シンズドライバーを出現させ起動、罪深きドラゴン風味の輪郭を持つ怪物へ姿を変えるので御座います。


次回、邪悪魔神器シンズドライバーの更なる力が明らかに!

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