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55、ライム色のワンピース

「まあ、ライム色……そういえば、着てみたことないわ」


婦人は興味深そうにその服を眺める。


ライム色は、緑と黄色を合わせた中間色で、明るく春らしい爽やかなグリーンだ。


まさに、イエベ春のパーソナルカラーの彼女にはぴったりである。



「お客様の髪や瞳の色のブラウンに、ライム色は合います。くすんだ色よりも華やかな色が似合う肌質ですので、今着てらっしゃる白も良いですが、せっかくのお茶会でしたら明るい色味がおすすめです」


「そうね、確かに…無難だけど少し地味かも、と思ってはいたの」



今身につけているシンプルな白のワンピースを摘み、婦人が頷く。



「昔はピンクやオレンジとか着てたんだけど、若作りって言われたくなくてねぇ……」


「今でもその色は似合うと思います。ただ、そう悩まれる気持ちもわかるので、ライム色のような明るいけど媚びてない色合いがいいと思うんです!」



最初は驚いていたが、レベッカの熱弁に少しずつ心が揺れてきている婦人。


静かに二人の話を聞いていたクロードは、さっと婦人が手に持っている日傘と鞄を受け取り、素早く全身鏡を目の前に持ってきた。


さすがね、と内心レベッカは声をかける。


クールな彼に接客業は苦手かもしれないと思ったが、客の行動を先読みし、エスコートするのがうまく、心配いらなかったようだ。


鏡の前で婦人に合わせてもらい、さらに続ける。



「お客様、スラリとしていてスタイルがいいので、足の長さを活かすマーメイドラインのスカートが良いと思います」


「マーメイドライン?」


「前面はスカートの裾は膝丈なのですが、背面の裾はふくらはぎまであって少し長いんです。まるで人魚の尾びれのような優雅なシルエットなんですよ」


「あら、人魚、ね……」



頬に手を置き、人魚と言われ満更でもなさそうな婦人の様子を見て、レベッカは後もう一押しだ、と自分を鼓舞する。



「もしよろしければ、試着してみてはいかがですか。試着室に案内します!」



商品を置いてある部屋の隣には、カーテンで仕切りをつけ鏡を置いた試着室がある。実際に着て実感したほうが良いと伝えると、婦人は頷いたので案内する。


ライム色のマーメードワンピースを手渡し、試着室へ入った婦人へ何かありましたらお声がけください、と伝える。


その間に、クロードは服を広げた棚や鏡を整頓し、婦人の荷物を丁寧にテーブルの上へ置く。


数分後、少し恥ずかしそうにカーテンを開けた婦人。



「ど、どうかしら……?」


レベッカの見立て通り、黄色味がかったきめ細やかな肌には、明るいライム色がとても似合う。


年相応の明るい色合いで、春の新緑のようで爽やかである。



「まあ、とてもお似合いですよ!」


小さく拍手をしながらレベッカが言うと、お世辞でも嬉しいわ、と婦人は眉を下げる。



「このマーメイドラインていうのも面白いわね、確かにスタイルが良く見える気がする」


「スラリとしてますよね。お客様の素材のよさが際立ちます」


「うふふ、恥ずかしいわぁ。じゃあ、これをお借りしようかしら」


「はい、ありがとうございます!」



どうやらお気に召したようだ。



「そして、もしよろしければこちらの白い帽子もいかがですか?」



レベッカは、手に持っていた帽子を婦人へ渡す。


柔らかい白い布地で、つばが広いバケットハットだ。

天気の良い日にお茶会だというので、紫外線も防げて肌や目にも優しく、見た目も涼やかである。



「あら素敵。確かに、お庭でのお茶会で、日傘を差すわけにはいかないものね」



大きなつばの帽子をかぶると、婦人がますます小顔に見えてぴったりだ。


ではこちらもお借りするわ、了承され、トータルコーディネートが完成していく。

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