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45/72

45.デートコースは俺が

「でも5回目の今回は、何か違う感じがするんだ」



クロードは夜風に銀髪を揺らしながら、手すりに寄りかかり話を続ける。



「今までのレベッカは、転んだリリアに新しい靴を渡すこともなかったし、俺やリリアに服を作ることはなかった」



レベッカは内心、まずい! と声をあげてしまった。


大好きなゲームに転生して、美男美女に囲まれ、自分の好きな中世ヨーロッパ風のドレスを作れることに感激したとはいえ、やはり元の悪役令嬢のキャラを壊しすぎたか。


冷や汗をかくレベッカに、クロードは続ける。



「……そのおかげで、すごく良い方向に進んでいる」


「え?」



てっきりがっかりされたり、怒られたりするのかと思ったら、クロードはふっと微笑んだ。



「だって、君と舞踏会で踊れた」



優しく微笑むクロードは、巷で噂されている冷徹公爵とは違う。


温かさのこもった、穏やかな青年だ。


レベッカは再び心拍数が上がり、どこを見ていいか分からず視線を泳がせる。



(私が5回目から転生してきたんだということは、なんとなく言わない方がいい気がするわね……)



プライドが高く気の強い悪役令嬢、レベッカ・エイブラムと、アパレルメーカー勤務社畜アラサーの性格は、全く違うはずだ。


きっと彼は元々のレベッカが好きだったはずだから、言わないでおこうと心に決める。


なぜなら、もう自分も彼に惹かれている。


余計なことを言って、嫌われたくないと思ったのだ。



「では、もうループを繰り返さないように一緒に考えましょう!」



レベッカはそう提案して、拳を握る。



「きっと何か方法があるはずですわよ」



お嬢様言葉の語尾を使い力強く頷くと、クロードはその発言に呆気に取られていた。



「……信じてくれるのか」


「もちろん。クロード様がそんなおかしな嘘を言うとは思えませんわ」



そんな嘘をついたとしても、変な奴だと思われるリスクのみで、なんの得もないだろう。


共に力を合わせて打開策を探そうと提案するレベッカに、クロードは小さく頷いた。


すると広間の中から拍手が聞こえ、舞踏会の終わりの音楽が鳴っていた。


どうやら二人でテラスで話しているうちに、お開きの時間になってしまったようだ。



「遅くなってしまったな。……寮の部屋まで送るよ」



ネイビーのタキシードを着た彼が優しくエスコートしてくれる。


ブルベ冬の彼には、レベッカが作ったその服はとてもよく似合っている。


何度もループしている彼は、どうかそのループから抜け出し、自分と結ばれたいらしい。


黒いレースのマーメイドドレスを着たレベッカは、階段をおりながら隣に並ぶクロードに伝える。



「もしよかったら、今度のお休みの日にデートしませんこと?

 プロポーズは嬉しいですが、まずはお互いもっと知り合わないと」



好感を持ってはいるが、一生の相手を早急に選ぶことはお互いできまい。


そう提案すると、クロードは、急な誘いにぽかんと口を開けたが、そうきたか、と笑った。



「勿論だ。……デートコースは俺に選ばせてくれ」



冷徹公爵は、最近はよく笑うようだった。

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