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41、服を着た俺の隣には

ギシ、と足音がしたので顔を上げると、本棚の隙間にレベッカが立ち、こちらを見つめていた。


心臓が跳ね上がる。



「レベッカか、どうしたんだ」



今まさに考えていた人物がそこにいるとは思わなかった俺は、冷静さを取り繕いながら、さっと書いていたノートを閉じた。



「ご機嫌ようクロード様、お勉強の邪魔をしたかしら?」



レベッカの言葉に首を横に振りながら、隣の席を促す。


勉強ではない、この無限ループから抜け出す算段をつけていただけだ、とは言えない。


レベッカはそっと俺の隣の席に座る。


夕焼けのオレンジの光が差し込む、二人だけの図書室。


放課後教室で話していた、一度目と四度目を思い出す。



「俺がいることがよくわかったな」


「先ほどユリウス王子にお聞きしたのですわ」


「ああ……」



じわり、と嫉妬心が胸に滲み出る。


彼女の口から、ユリウスのことを聞きたくはない。レベッカとユリウスが挙げた結婚式の情景を思い出してしまう。


二言三言、試験の話などをしていたら、レベッカが手に持っていたものを俺に差し出してきた。



「これ、この前約束した服を作りました。クロード様に合うパーソナルカラーです」



濃紺のシルク生地のタキシードだ。よく磨かれた金ボタンが光っている。


この前、園庭で採寸していたが本当に作ってくれるとは思わなかった。



「そうか、俺はブルベ冬だからな」



あの時初めて聞いた単語を繰り返すと、レベッカはそうなんです! と嬉しそうに小さく拍手をしていた。


本当に服を作るのが好きなようで、裁縫の難しかった部分などを教えてくれる。



「…ふふ、女性から贈り物をされるなんて、初めてだ」



俺のために時間をかけて作ってくれたというそのタキシードを撫でながら、笑みが漏れる。


服をもらえたことよりも、これを作りながら、俺のことを考えてくれていたのがとても嬉しい。


しかし、同時に思う。


以前レベッカがハンカチにつけてくれた刺繍は、ループをしたら消え、ただの真っ白な無地になってしまった。

やり直せば全てが白紙に戻る。きっとこの服も消えて無くなってしまう。


シルクの袖を撫でながら、もうそんなことにはさせないと奥歯を噛み締める。


今は、思いつく限りの一番良い展開なんだ。



「そのタキシードを着れば、きっとクロード様が舞踏会で一番注目されますよ!」


「……そうかな」



願わくば、この服を着た俺の横には、君がいて欲しい。


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